アイアンの宣伝文句としてよく聞く「軟鉄鍛造」。これって一体何なのだろうか? 特徴は? メリットは? ゴルフフィールズユニオンゴルフ店の小倉勇人店長に説明してもらいました。

中・上級者が求める機能を満たしやすい素材と製法

「軟鉄鍛造」とは、アイアンヘッドの素材と製法を指すもので、その名の通り、素材に「軟鉄」と呼ばれる種類の鉄を使い、「鍛造」という方法で作られているアイアンに使われる名称です。これはどういった意味を持つのでしょうか。ゴルフフィールズユニオンゴルフ店の小倉勇人店長に説明してもらいました。

「軟鉄とは、炭素やニッケルなどの異物の含有量が少ない鉄の総称で、アイアンで多く使われるステンレスをはじめとしたほかの鉄素材よりもやわらかいのが特徴です。そして、ステンレスなどの場合は鋳型に金属を流し込んで作る鋳造が一般的なのに対して、軟鉄の場合は金属の塊を叩いて成型する鍛造で作られることがほとんどです」

上級者向けなイメージが強い軟鉄鍛造アイアン 写真:AC

 ではアイアンヘッドを軟鉄鍛造で作るメリットは何なのでしょうか?

「大きな理由は2つあります。1つは、素材自体がやわらかいため、ネックを曲げることができる点。ステンレスなどのアイアンは素材が硬いため、無理に曲げようとすると折れてしまう可能性がありますが、軟鉄鍛造のアイアンは、ライ角やロフト角などを買ったあとで曲げて調節することができるんです」

 ロフトやライ角などを自分に合わせて微調整して使うプロや上級者にとっては、これは実は重要なポイントです。

 もう1つの理由は、打ったときのフィーリングにあると小倉店長は言います。

「軟鉄の素材自体がやわらかいことに加え、鍛造することによって金属の密度が上がり異物が取り除かれるので、インパクト時にヘッドが余計な振動を生じにくく、重くやわらかい打感を得られるんです。芯で打てば気持ちよく、芯を外せばそれがはっきりわかる。中・上級者にはこの打感を求める人も多いんです」

やさしさを求めるならステンレス鋳造がいい

 軟鉄鍛造にはメリットだらけのように思えるが、欠点もあると言います。それは、鍛造製法が複雑で精密な構造のヘッドを作りにくい点です。

 やさしく飛ばせる最近の高機能アイアンは、複雑な形をした複数のパーツを組み合わせてヘッドを構成しているものが多いですが、軟鉄鍛造ではそういった加工をしにくいのです。

「軟鉄鍛造では、ステンレスなどの鋳造で精密に作られたアイアンのようなミスヒットへの寛容性や高い飛距離性能を得にくいので、初心者向けのやさしいアイアンや超飛び系のアイアンなどには向かないんです。前述の打感なども上級者が求める機能ということもあり、傾向としては軟鉄鍛造=中・上級者向けになりがちではあります」

 一方で、「軟鉄鍛造」を謳っていたり、鍛造を意味する「フォージド」という名を冠したアイアンであっても、必ずしも上記の条件には当てはまらないものもあると言います。

「ヘッドの一部に軟鉄鍛造のパーツを使っていれば、『フォージド』『鍛造』などと名乗ることはできます。そのため、ヘッドのフレーム部分だけを軟鉄鍛造にしてフェースに反発性能の高い素材を使ったり、大きなウエートを内蔵して複雑なキャビティ構造にしたモデルなどもあります。こういったモデルは、打感は鍛鉄だけで作られたものには及びませんし、ライ角・ロフト角の調整ができない場合もありますから、確認が必要です」

 逆に言えば、軟鉄鍛造ボディーながら初心者でも扱えるやさしいモデルもあるということ。軟鉄鍛造かどうかはひとつの目安にはなりますが、そこにとらわれすぎず、用途や目的に合わせてモデルを選ぶことが大事と言えそうです。

鈴木康介