今季国内メジャー初戦、「BMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」は最終18番ホールでバーディーを奪った比嘉一貴が通算12アンダーで優勝。今季ツアー2勝目、通算4勝目を飾る。国内ツアー5年シードを獲得すると同時に、全英オープンの出場権も得た。

このまま打ったらボールに当たらない

 88年日本オープンでのジャンボ尾崎を思い返した人もいたのではないだろうか。1メートルにも満たないウイニングパットを打つ際、2度の仕切り直しをしたあのシーンだ。

 大会こそ違うものの、日本タイトルの重みを感じる比嘉一貴にとって、「BMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」でのウイニングパットはジャンボに匹敵するほどのプレッシャーを感じていた。

全身が震えていた、というウィニングパットを決め、優勝を決めた比嘉一貴 写真:JGTOimages

「手が震えるどころか、全身が震えていました。このまま打ったらボールに当たらないと思い、一度冷静になろうと仕切り直したんです」と比嘉。

 最終18番パー4、ピンまで残り159ヤード地点から7番アイアンで放った第2打をピン右2メートルにつける。「このパットを沈めれば優勝だ」という強い気持ちが比嘉の心を支配すると同時に、体が自分のものではなくなっていた。

 今年の「関西オープン」でツアー3勝目を挙げた際、次の目標は国内メジャーと宣言していた。しかも今大会の名前を挙げて照準を合わせると。過去に2度出場し、2度とも予選落ちを喫していた。あえて苦手な大会を目標にすることでモチベーションを上げようとしたのだ。

「まずは予選通過をクリアしてから優勝を目指します」と語っていたが、その青写真どおり、予選を18位タイで通過すると、3日目に65をマークして一気に3位まで浮上する。

 最終日は猛追をしてきた大槻智春に4打差まで離されたが、自分のペースを崩すことはなかった。15番パー5では15メートルのイーグルパットを沈める。その少し前に大槻が17番パー4でダブルボギーを叩いていたため、一気に首位タイに並ぶ。同組の岩崎亜久竜が16番パー3でバーディーを奪ったことで、通算11アンダーに3人が並んだ状態で最終ホールを迎えた。

「プレーオフは考えていなかった」。比嘉にとって、このホールはバーディーを取ることしか頭になかった。いろんな思いが交錯する中、迎えたのが18番のパットだったのだ。

「仕切り直しをしても、まだ震えていました」と比嘉。しかし、フェースの芯でヒットしたボールは吸い込まれるようにカップの中へと沈んでいった。

158センチの小兵でもヘッドスピードは50メートル/秒越え!?

 ツアー通算4勝目でついに国内メジャーを制覇。優勝賞金3000万円に加え、今までの優勝にはなかった副賞の車も獲得できた。しかし、それ以上に嬉しかったのは、「全英オープン」の出場権だ。今年の開幕戦から今大会までの獲得賞金が最も高かった選手に与えられる出場権を手にすることができた。

 さらにDPワールドツアー(欧州ツアー)の「BMWインターナショナルオープン」、PGAツアーの「ZOZOチャンピオンシップ」の出場権も獲得。国内ツアーの5年シードも得た。

「全英オープンは昔から憧れていた大会ですし、欧州ツアーにも興味はありました。5年シードを得たことで、1〜2年は日本から離れてもいいのかもしれませんし、そういう選択肢ができたのは大きいですね」。本来は海外志向で、将来的には海外ツアーを主戦場にするつもりだった。

 大学の先輩でもある松山英樹からも「いつになったらこっちにくるんだ」と言われ続けていたが、最近はその声が掛からなくなってきたという。「自分が海外の試合に行ってなかったからでしょうね」と笑う。しかし、今回の優勝で海外挑戦への道がようやく開けたのは間違いない。

 昨年からはスピードを高めるために、自重を利用したトレーニングを取り入れた結果、体幹が強くなり、体調がよければヘッドスピードは50メートル/秒を超えるという。身長158センチと小柄だが、海外でも戦えるだけの飛距離を得たのは楽しみでもある。まずは、今年の「全英オープン」でぜひとも世界を驚かせてほしいものだ。

e!Golf編集部