ゴルフ会員権の購入時に、必ずクリアしなければならない「入会条件」なるものを設けているゴルフ場があります。条件の種類はさまざまですが、「入会審査で落とされ、メンバーになれなかった……」なんていうことは、実際にあるのでしょうか? 専門家に聞いてみました。

ゴルフ会員権購入時の「入会条件」にはどんなものがある?

 憧れのメンバーライフ。入会したいコースが決まって予算のめどもつき、いざ購入へ……と進めていく過程で、いろいろとそろえなくてはならない入会書類のほかに、「入会条件」なるものを、ほとんどのゴルフ場が設けています。

絶対数こそ少ないが、「入会拒否」は多くのゴルフ場で存在している 写真:AC

 ゴルフ場が定める「入会条件」には、実にさまざまなものがあります。例えば“満30歳以上で日本国籍を有する人”というような「年齢制限」や「外国籍制限」のたぐい、「他クラブに〇年以上在籍していること」や「推薦保証人(正会員2名)がいること」、「反社と関わりのないこと」などが、それに当たります。またこれらに加え、入会時に「面接」や「同伴プレー」などの対面審査を行うコースもあります。

 “名門”と呼ばれるゴルフ場や格式の高いゴルフ場のなかには、さらに厳しい条件を掲げているコースもあります。

「推薦保証人(正会員で在籍10年以上)がいること」や「理事からの紹介」、法人入会の場合は「一部上場会社であること」といった、かなりハードルの高い条件を設けている場合もあるようです。

「でもね、びっくりするほど厳しい入会条件を設けているゴルフ場なんて、そんなに多くはありませんよ」と語るのは、ゴルフ会員権を専門に扱う加賀屋ゴルフ代表の前田信吾さん。

「会員権価格の総額が500万円を超えるような名門コースには、確かに今でも厳しい入会条件および審査がある場合もあります。でも、それ以外のコースなら、よっぽど一般常識から外れた風変りな人でないかぎりは、そんなに心配する必要はありません」

 一昔前にみられたような「女性の入会制限」や「外国籍による制限」、「年齢制限」などは「時代の流れとともに緩和傾向にあります」と、前田さん。特に「年齢制限」に関しては、入会可能な年齢を下げることで、若いゴルファーでもメンバーになれるチャンスがグッと増えてきているそうです。

「拒絶通知書」が届くケースもアリ!「条件」を満たしていなければ“入会NG”

 時の流れとともに緩和されつつある「入会条件」。仮に条件をクリアしていたとしても、“入会NG!”なんていうことは、あるのでしょうか?

「落ちることは、正直あります。僕が過去5年で扱わせていただいた例を挙げると、我孫子ゴルフ倶楽部が2件、武蔵カントリークラブが1件、狭山ゴルフ・クラブが2件。いずれも名門ばかりですが、入会が叶わないケースは確実にあります」と前田さん。

「ある名門コースでは『拒絶通知書』というものが届くそうです。これはねぇ、貰った人は本当にショックのようですよ。“拒絶”っていう、強い言葉がかなり堪えるでしょうから。拒絶理由の詳細はわかりません。ですが、コース側がきちんと理事会にかけて出した結論でしょうから、ゴルフ場にもそれなりの事情があるわけです。残念ですが、従わざるを得ません」

 では、いったいどのタイミングで“NG”が出されるのでしょうか? 前田さんによると、入会できない原因の約9割が書類審査および掲示期間の段階だそうです。

「ゴルフ場によっては入会条件のほかに、入会希望者の職種や学歴、会社の規模(資本金)などを審査するところも、どうやらあるようです。また、その後の入会同伴プレーにおいて、ゴルファーとしての振る舞いが明らかに『当クラブ会員として、相応しくない』と判断されると落ちてしまうようですね」

「掲示」で思わぬ横槍も!? 正式入会までは“とにかく静かに!”が得策

「繰り返しになりますが、『入会できない』なんてことがあるのは、総額が500万円を超えるような名門コースの場合だけです。普通のコースなら書類審査以外に面接や同伴プレーのような対面審査があったとしても、それが原因で落とされることは滅多にありません。そんなに緊張しなくても大丈夫です」と前田さん。

入会審査を通過すれば、晴れてメンバーボードに自分の名前を刻むことができる

 名門コースにご縁がなかったとしても、落とされる原因がやはり気になります。

「ゴルフ場に入会書類を提出すると、クラブハウス内で入会希望者の名前や経歴等が掲示されます。PGM運営のゴルフ場など、この『張り出し』がないコースもありますが、『張り出し』を行うゴルフ場で、ごく稀ではありますが『思いもよらない横槍が入ったのではないか?』と思われるケースがありました。メンバーさんは掲示を見ますからね。入会前に悪い意味で有名だと、『この人! ウチのクラブには合わないんじゃないの?』という指摘が入ることも実際には起きるでしょうから」

 この場合の“悪い意味での有名人”とは、例えば入会前の「張り出し」中に、前の組のメンバーさんに打ち込んでしまったり……、といった由々しき事態から、プレー中の違反場所での喫煙や携帯電話といったマナー違反まで、メンバーさんたちが眉をひそめるような行為をしてしまうゴルファーを指します。

 こういったトラブルを避けるためにも「入会するまでは“大人しく”が一番。特に『張り出し』があるコースは、入会まではむしろ“行かないでおく”というのも、ひとつかと。入会するためには、ずばぬけて素晴らしい人である必要はなくて「この人はちょっと……」と思われないことが大事だと、僕は思っているんです」と、前田さんはアドバイス。

 会員権価格と比例するかのように、入会審査のハードルが上がるゴルフ会員権。でも、メンバーライフに憧れ、入会の意思があるのなら、名門であろうと一般的なゴルフ場であろうと思いは同じはず。

 入会後にゴルフを介してより多くの人と知り合い、有意義なゴルフライフを過ごしたいと願うのなら、“入会までは波風立てず、お静かに!”が得策といえそうです。

【監修】加賀屋ゴルフ代表 前田信吾さん

ゴルフ会員権取引を行う加賀屋ゴルフ代表取締役。ここ10年は、2日に1回の割合でラウンドを楽しむゴルフの達人(昨年は年間229回!)。独自の視点を生かしたゴルフ場の比較&検討に定評アリ。

月夜野いおり