SNSの発達で選手とファンの距離が格段に近くなっている昨今。これまでの「選手とメディアの関係」にはどのような変化が起きているのでしょうか?

試合は面白いけど表彰式と優勝インタビューがつまらない

 2022年から女子ツアーをDAZN(ダゾーン)で視聴するようになりました。初日から最終日までリアルタイムで視聴できるので楽しませてもらっています。

 ただし、リアルタイムで視聴するようになってから気になっていることがあります。それは優勝者が決定してから表彰式が始まるまでの時間が長いこと、表彰式のオジサンたちのあいさつが長いこと、そして選手の優勝インタビューがつまらないことです。

JLPGA公式インスタグラム(@jlpga_official)より
JLPGA公式インスタグラム(@jlpga_official)より

 優勝者が決定してから表彰式が始まるまでの時間が長いのは、アテスト(スコア確認作業)がありますから仕方がない部分もあります。ただ、PGAツアーや海外メジャーは表彰式が始まってから選手インタビューまでの流れがもっとスピーディーな印象があります。また、優勝インタビューも選手の思いが素直に表現されています。

 一方、女子ツアーの優勝インタビューは最初に必ず大会主催者、開催コース、協賛企業、後援企業、協力自治体、ボランティアスタッフ、ギャラリーに感謝の言葉を述べてからスピーチが始まります。選手は何かのメモを見ながらしゃべっていますから、お礼を言う順番もメモに記されているのでしょう。

 野球やサッカーはそういった場面で、企業や自治体のロゴが並んだインタビュー用のバックボードの前で取材を受けます。プロゴルフもそれと同じシステムを採用すれば選手の負担が減らせるのではないかと感じます。

 優勝者は表彰式が終わった後、クラブハウスのテラスなどで中継局の優勝インタビューを受けます。さらにクラブハウス内でメディア向けの共同記者会見が行なわれます。中継局インタビューと共同記者会見では同じような質問が繰り返されます。

 そこでしゃべった内容が試合当日のスポーツ紙のウェブサイト、翌朝のスポーツ紙に同じような記事が何本も掲載されます。ネタ元が同じですから当然ながら似たような記事になります。その記事を作成するための記者会見で1時間ほど拘束されます。

 初優勝から2勝目くらいまでは、そういった一連の流れもワクワクしながら楽しめるのでしょうが、優勝に慣れてきた選手たちは「また同じ質問を何度もされるのかよ。早く帰らせてくれよ」と内心では思っているのではないかと推測します。

古江彩佳が自らの言葉で発信した記事が印象的だった

 今年の全米女子オープンで予選落ちを喫した古江彩佳がメディアの取材対応をせずにコースを立ち去ったことがありました。これを現地で取材していたメディアは「古江はメディアの取材を受ける義務を拒否した。けしからんことだ」という論調で批判しました。

 このときの古江選手の心境を自らの言葉で発した記事を先日見かけました。The Players’ Tribune(ザ・・プレーヤーズ・トリビューン)という初めて見るウェブサイトだったので詳しく調べたところ、元ニューヨーク・ヤンキースで松井秀喜とチームメイトだったデレク・ジーターによって設立されたスポーツメディアでした。

 このメディアは第三者のフィルターを介することなく、世界中のアスリート自らが言葉を発信して、大切なストーリーをファンと共有することを特長としているそうです。

 その記事の中で古江は全米女子オープンで試合後取材をお断りさせてもらった理由を次のように語っていました。

「悔しさとふがいなさで落ち込むなか、その瞬間に頭をよぎったのは、マスコミの方々から『予選落ちしてどうですか?』と聞かれる自分の姿だった。『うまく答えられるだろうか――。自信がなかった』」

「注目してもらっていることがどれだけありがたいことか、頭では理解している。それでも、『他に予選通過している日本選手が5人もいるんだから、そっちにフォーカスしてあげてよ』という思いもあった」

 アスリートにとって、メディアはかつてファンとの架け橋を作ってくれる存在でした。でも今は、メディアの存在によってアスリートのメッセージがダイレクトにファンに届かなくなっています。

 ゴルフの世界も既存のメディアと選手の関係が非常に難しくなっていると感じます。選手たちはツイッターやフェイスブック、インスタグラムやユーチューブなどで独自に情報を発信しているので、メディア取材に長時間拘束されることは負担になっています。

 そのあたりのバランスをJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)も含めて考え直すタイミングかもしれません。

保井友秀