プロのスイングをよく「腰の回転が速い」「腰のキレがすごい」など表現しますが、モーションキャプチャー動作計測によるビッグデータでは一般ゴルファーの方がプロより「腰の回転量だけは大きい」ことが分かっています。ではなぜ「もっと腰を回せ」のアドバイスが行われるのでしょうか?

回転は「速いほどよい」ワケじゃない

 日本では昔から「もっと腰を回せ」というアドバイスがよく行われています。しかし、海外では“スピンアウト”というネガティブな意味に近い言葉が存在しています。こんなことが起きてしまう背景には、英語のターン(turn)を「回転」と訳したことで「コマのようにもっと速く」につながってしまったのではないかと想像します。

腰の回転を意識しすぎてスイングのバランスを崩すのが“スピンアウト”というエラー動作
腰の回転を意識しすぎてスイングのバランスを崩すのが“スピンアウト”というエラー動作

 “スピンアウト”とは、トップからダウンスイングにかけて体をターンさせるタイミングが早すぎた結果、体ばかりが先行しすぎてしまうエラー動作。

 フェースが開いた状態でボールに当たり右へのミスになったり、ヘッドが遅れたままでスピードが出ず、飛距離をロスする「振り遅れ」の原因にもつながります。

 では一体、どうすれば“スピンアウト”にならず、なおかつ「腰の切れがよい」スイングになるのでしょうか?

腰の回転過多で起こる“スピンアウト”は、フェースが開き過ぎや振り遅れ&ダフリの原因に
腰の回転過多で起こる“スピンアウト”は、フェースが開き過ぎや振り遅れ&ダフリの原因に

 誤解を恐れずにいうなら、プロのような「腰のキレがよい」スイングには、非常に早い体の入れ替え動作(ローテーション)が存在しています。しかし、トップで90度以上ねじれた肩の向きがダウンスイングに入った途端ゼロになってしまうような事は起こりません。腰から下の動きが速くても、肩が一緒に回ってしまうことはありません。

腰ってそんなに速く回せるの?

 みなさんが思う「腰が速く回転しているように見える」スイングには、必ず左足で踏ん張るような動作が存在しています。

 昔、「左一軸」と言われたり「体重移動」といわれたり、最近では「地面反力」といわれたりしていますが、“スピンアウト”では左右と上下の動作がなく、回転のみ過多な状態になってしまっています。何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」ですが、要はタイミングとバランスの問題。ゴルフスイングの難しさともいえるのですが、「コツ」はあります。

腕&フェースターンと同時に体重移動した流れで、骨盤の向きと腰の回転が行われる
腕&フェースターンと同時に体重移動した流れで、骨盤の向きと腰の回転が行われる

 まったくできないことなら、「大袈裟にやってみて」感覚をつかむ方法はオススメします。しかし、タイミングやバランスなどを整えるためには「少しずつ」または「意識しない」方法も必要になります。

 特にゴルフスイングにおいて、腰の回転を全くしないことはできません。つまり、適切なタイミングと量をコントロールする繊細な部分になるので安易に「もっと早く」「もっと大きく」回すものではないことが分かると思います。

 また、腰が単独で回転することはできないので、現実には左右の足やヒザの曲げ伸ばしによって、骨盤の向きが変わり(ターン)ます。

スタンスを「少しだけ」広げる

 腕前に関係なく、個性が現れるのがスイング。一人ひとりの体が異なる以上、全く同じスイングにはならないのは当たり前です。ですが、自分の体のクセに合っている「合理的理由」があると納得できるのではないでしょうか?

フィニッシュでターゲットに「正対」できるバランスならOK
フィニッシュでターゲットに「正対」できるバランスならOK

 例えば、“スピンアウト”を軽減するために少しだけスタンスを広くしてみるのもオススメ。しかし、今度はやり過ぎて動きが窮屈になるのも「エラー」と言われてしまいますよね? 要はフィニッシュまでしっかり振り切れて、真っすぐショットしていれば「腰のキレがある」と周りの人はほめてくれるでしょう。

 プロのスイングに限らず、動きを部分的に取り入れる場合は注意が必要です。「過去の自分」をライバルに長くじっくり取り組めると、年齢性別関係なく楽しくレベルアップできますよ。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール