ゴルフ中継をインターネットやテレビで観戦していると「ナイスショット!」や「ナイスバーディー」といったギャラリーからの声援が聞こえてきます。Jリーグでは問題になった「声出し応援」がゴルフトーナメントでは許されている理由があるのでしょうか?

注意する立場の人が誰もいないから

 2022年の女子ツアーをインターネット配信で視聴していて、ずっと気になっていたのが「なぜゴルフトーナメントは声出し応援ができるのか」です。

 プロ野球やJリーグは2022年シーズン開幕当初から声出し応援禁止でした。この禁止行為をサポーターが何度も繰り返した浦和レッズに対してJリーグは2000万円の罰金を科す処分を下しました。

 一方、女子ツアーのインターネット配信を視聴していると、ギャラリーの「ナイスショット!」「ナイスオン!」といった声出し応援がけっこう頻繁に耳に入ってきます。

ゴルフ中継を見ていると聞こえてくる「ナイスショット!」といった声出し応援 写真:AC
ゴルフ中継を見ていると聞こえてくる「ナイスショット!」といった声出し応援 写真:AC

 トーナメント会場ではどのような観戦マナーが推奨されているのでしょうか。気になったのでゴルフ5レディスの試合会場に足を運んでみました。

 前売券を購入して現地に行くと、入場口で氏名と電話番号を記入して前売券と一緒に提示することを求められました。これは試合会場内で新型コロナウイルスに感染したと思われる案件が発生した際、情報を追跡するために収集しているようです。

 入場時に渡された観戦ガイドには、新型コロナウイルス感染症対策として次のことが記されていました。

・マスクの着用にご協力ください・手指の消毒にご協力ください・距離を保ってお並びください<入場制限>各日最大5000名・選手にサインや握手・ハイタッチを求める行為NG・応援は拍手で! 大声での声援はNG

「大声での声援はNG」とはっきり書いてあります。でも実際に選手たちのプレーがスタートすると、試合会場のあちこちで「ナイスショット!」や「ナイスオン!」といった大声の声援が発せられます。

 これが許されているというか、黙認されているのは、注意する立場の人が試合会場のどこにもいないのです。

 警備員は試合会場のあちこちにいるのですが、彼らは選手以外立ち入り禁止の区域や、関係者以外立ち入り禁止の区域にギャラリーが入ってくるのを防ぐために配置されています。大声での声援を注意するために配置されているわけではありません。

 日本女子プロゴルフ協会のスタッフもコースのあちこちで見かけましたが、彼女たちはルーリング(競技委員が規則に基づいて判定したり、裁定したりすること)のために配置されています。こちらも大声での声援を注意するために配置されているわけではありません。

 各ショットの着地地点を見守るボランティアスタッフもギャラリーを注意する立場ではありませんから、大声で声援しているギャラリーは放任されている状態でした。

大声の声援は自分の楽しみではなく選手に情報を伝えるため

 ただし、インターネット配信で大声の声援を耳にしていたときの違和感は、試合会場ではそれほど感じませんでした。なぜかと言いますと、大声で声援を送っているギャラリーは、自分の楽しみのためではなく、選手に情報を伝えるために大声を出していることが分かったからです。

 選手がティーイングエリアでドライバーを狙いどおりに打てなかったようなリアクション(たとえばクラブから片手を離す)をしたとき、前方のギャラリーが「ナイスショット!」と大声を出せば、ボールがフェアウェイに残っていることが選手に伝わります。

 同様に、打ち上げのホールでグリーンを狙ったショットが思いどおりに打てなかったとき、グリーン面が見えるギャラリーが「ナイスオン!」と大声を出せば、ボールがグリーン上に止まったことが選手に伝わります。

 だからといって、大声での声援はほめられた行為ではありません。しかし、他のスポーツと比べて観客の密集度合がそれほど高くないので黙認されているのだろうという印象を受けました。

 Jリーグでは「声出し応援運営検証」の結果、感染対策を適切に行なうことで声出し応援エリアと声出し応援をしないエリアの併存運営が可能という見解が得られたので、ガイドラインに沿った専用の応援席を設けることで声出し応援を再開しています。

 ゴルフトーナメントは「声出し応援運営検証」をしたのかどうか分かりませんが、各日最大5000名という入場制限を行なっていれば、声出し応援は黙認しても構わないだろうというオペレーションになっているようです。

保井友秀