多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」で優勝した川崎春花です。

ラフにあまり抵抗を受けないスイング

「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」の戦いの舞台になったのは、京都府の城陽カントリー倶楽部でした。昨年は、中島啓太選手が史上5人目のアマチュア優勝を達成した「パナソニックオープン」やJLPGAの最終プロテストが開催されたコースです。

記録ずくめの初優勝を成し遂げた川崎春花 写真:Getty Images
記録ずくめの初優勝を成し遂げた川崎春花 写真:Getty Images

 アップダウンがあり、戦略性の高いコースレイアウトはもちろん、公式戦にふさわしいタフなコースセッティングだったこともあり、試合前から「スコアを伸ばすのは厳しいのでは?」と予想されていました。しかし、予選通過ラインはイーブンパー。優勝スコアは16アンダー。最近の女子ツアーのレベルを改めて感じる結果になりました。

 優勝したのは、最終日に1イーグル・6バーディーの64でプレーした川崎春花選手です。予選会を突破しての出場、大会史上最年少19歳での優勝、初出場で優勝、地元(京都府)での優勝など、記録ずくめの勝利となりました。

 彼女のスイングを分析すると、バックスイングでややアップライトにクラブを上げるタイプ。切り返しでクラブに負荷をかけてインサイドからヘッドを下ろすと、インパクトゾーンではストレート・インサイド軌道でクラブを左下に振り抜いていきます。このスイングは、最下点がボールの左側になるため、ボールに対して上からコンタクトできる特徴があります。

 川崎選手はアマ時代に「全国高等学校ゴルフ選手権春季大会」(2020年)での優勝や「日本女子オープン」で11位フィニッシュするなど、もともと実力のあるプレーヤー。ルーキーイヤーの今年も、ステップ・アップ・ツアー「山陰ご縁むす美レディース」で優勝を挙げるなど成績を残していましたが、“左下に振り抜く”スイングがアップダウンのある城陽CCやラフの長い公式戦のセッティングと相性が良かったのも勝因のひとつと考えられます。

 例えば、バーディーを奪った最終日の17番。360ヤードのパー4は、30ヤード以上打ち下ろしていくホールです。ティーショットでフェアウェイをキープした川崎選手は、左足下がりのライから残り72ヤードの2打目をピンの真横にピタリとつけます。左足下がりのライは、左下に振り抜くスイングとフィットしやすく、スムーズに振り抜きやすいわけです。

 また、同じく最終日の18番は、400ヤードのパー4。難易度1位のホールです。川崎選手のティーショットは、フェアウェイ右サイドに着弾しましたが、右に跳ねてラフに入りました。幸い、それほど深いラフではありませんでしたが、この地点からは10ヤード以上打ち上げており、グリーン上で球を止めるのは難しいシチュエーションです。しかも、ピンは左手前に切ってあり、グリーン左手前にはバンカーが配置されていました。

 この状況にも、川崎選手のスイングはマッチしました。上からボールにコンタクトできる彼女のスイングは、ラフからの抵抗をあまり受けずにインパクトを迎えることができます。フィニッシュでクラブから手を放すシーンがあり、一瞬ヒヤッとしましたが、グリーン手前のマウンドにクッションしたボールは前に転がり、ピン奥8メートルにオン。このバーディーパットを沈めて勝利を確定させました。

最終ホールの2打目は地元の声援が後押し?

 もう一つ、川崎選手のプラスになったのは地元開催だったことでしょう。現地には、両親や親戚をはじめ、学生時代の先生など、たくさんの方が応援に駆けつけていたそうです。また、彼女にとって、城陽CCは昨年のプロテストに合格した思い出の地でもあります。

 最終ホールの2打目は、着弾する場所が数センチ違えばバンカーにつかまった可能性もありました。マウンドに当たったボールが前に転がったのは、地元の声援が後押ししたからかもしれませんね。

川崎 春花(かわさき・はるか)

2003年生まれ、京都府出身。昨年11月のプロテストに合格。ルーキーイヤーの今年は、8月に開催されたステップ・アップ・ツアー「山陰ご縁むす美レディース」でプロ入り初勝利。9月は予選会を勝ち上がって出場した公式戦「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」でツアー初優勝を大会史上最年少の19歳で飾った。ツアー通算1勝。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

小澤裕介