携帯電波の人口カバー率が、今よりまだまだ少なかった時代。多くのゴルフ場では「圏外」が当たり前でした。逆に中途半端に携帯電話が使えてしまうと、ゴルフ場にクレームを入れるゴルファーもいたそうです。

久しぶりにゴルフ場で携帯電話がつながらない経験をした

 渋野日向子選手が5カ月ぶりに日本の試合に出場した樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメントの初日を、試合会場の武蔵丘ゴルフコース(埼玉県)で観戦してきました。

 2021年は1日3000人の入場制限を設けた有観客開催でしたが、2022年は政府・地元自治体のイベント開催のガイドラインなどを遵守しながら入場制限を明記せずにチケット販売を行ないました。

 その結果、初日は平日にもかかわらず5587人ものギャラリーが会場に足を運びました。無料ギャラリーバスが運行する西武池袋線飯能駅前には長蛇の列ができていました。その行列を見てバスに乗ることを諦め、徒歩で会場に向かうギャラリーも多く見られました。筆者もその1人でした。

トーナメントのようなビッグイベントでは電波障害により一時的に使えなくなることがある携帯電話 写真:AC
トーナメントのようなビッグイベントでは電波障害により一時的に使えなくなることがある携帯電話 写真:AC

 大会主催者は1番スタートの最終組(10:00スタート)に渋野選手、山下美夢有選手、川崎春花選手の3人をペアリングしました。そして1組前(9:50スタート)に畑岡奈紗選手、西郷真央選手、渡邉彩香選手の3人、2組前(9:40スタート)に西村優菜選手、吉田優利選手、稲見萌寧選手の3人を並べました。

 まるで大会初日から実力者たちが優勝争いを演じているかのようなペアリングを組んだため、ギャラリーの注目も1番スタートの最終組周辺に集中しました。

 すると1番ホール周辺でスマートフォンを使用するギャラリーが多かったせいか、通信回線が一時的につながりにくくなりました。

 入場時にもらった大会パンフレットに、埼玉県LINEコロナお知らせシステムやデジタルパンフレットにアクセスするQRコードが記載されていましたが、筆者のスマートフォンではQRコードを読み込んでも電波状況が悪くてアクセスできませんでした。

 その周辺ではインターネット検索をスムーズにしているギャラリーもいましたから、もしかしたら特定のキャリアのみ通信が混雑していたのかもしれません。

 そんな状況に遭遇したのはいつ以来だろうと振り返ってみたところ、ガラケー(フィーチャーフォン)時代はゴルフ場で携帯電話の電波が「圏外」になることが多く、「電波が入るとお客様から怒られる」とゴルフ場関係者が話していたのを思い出しました。

ゴルフ場では日常の喧噪を忘れたい人が多かった

 なぜ電波が入ると客が怒るかと言いますと、仕事のことを忘れるためにゴルフ場に来ているのに、携帯電話が鳴ると仕事に引きずり戻されるからです。携帯電話の電波が「圏外」になっていれば、安心してゴルフが楽しめるというわけです。

 それなら電源を切った状態でロッカーに置いておけばいいと思うのですが、それだと電源を入れた途端に「着信履歴○件」という表示が出てきて現実に引き戻されます。コース内もクラブハウス内も「圏外」が理想のコンディションとされていました。

ゴルフ場は「日常の喧噪から解放される場所」と感じていたゴルファーが昔は多かった? 写真:unsplash
ゴルフ場は「日常の喧噪から解放される場所」と感じていたゴルファーが昔は多かった? 写真:unsplash

 当時は携帯電話の基地局が今ほど整備されていなかったため、ゴルフ場のように50組200人程度の人数しか集まらない場所は後回しにされていました。かくしてゴルフ場は日常的な喧噪から逃れて静かな時間が過ごせる社交場となっていました。

 それが2008年にiPhoneが日本でも発売されると、快適なインターネット接続へのニーズが急速に高まり、携帯電話がつながらないゴルフ場がどんどん減っていきました。

 今や携帯電話は日常生活に欠かせないインフラとなり、ゴルフ場でも携帯電話がつながるのが当たり前の時代になりました。プレー中に何かトラブルがあったときも、乗用カートの無線で連絡を取るのではなく、携帯電話で直接ゴルフ場に電話をかけてくるそうです。

 スコアの記録もスコアカードに記入するのではなくスコア管理アプリに入力するゴルファーが増えており、ゴルファーにとってスマートフォンは手放せない存在になっています。

保井友秀