スコアメイクに最も重要なクラブの一つと分かっていても、フィッティングして選ぶという人は少ないウェッジ。天然芝から打てるウェッジフィッティングを体験してみると、アプローチで大事なことが見えてきました。

マットから打ってもウェッジの合う合わないは分からない

 スコアを左右するショートゲーム。本来はウェッジを購入する際にも自分に合ったものを厳選したいところですが、実際に試打して買うという人は意外と少ないのではないでしょうか。それはやはり、人工芝のマットから打ってもバンスの効き方、ヘッドの抜け方などが分かりにくいから。天然芝のアプローチ練習場を使用したウェッジのフィッティングを体験してみると、ソール形状や重さの重要性がよく分かりました。

「ボーケイ」や「クリーブランド」といった有名ブランドから「ロマロ」「マスダゴルフ」といった地クラブの雄までそろえる
「ボーケイ」や「クリーブランド」といった有名ブランドから「ロマロ」「マスダゴルフ」といった地クラブの雄までそろえる

 ウェッジのフィッティングが行われているのは、ショートコースと大型練習場を備える東宝調布スポーツパーク。練習施設として大人気のスポットですが、10月以降は週に1回のペースで天然芝から打てる本格的なウェッジフィッティングが開催されています。

 同施設の一角にある天然芝のアプローチ練習場は、ただの天然芝ではなくコーライ、野芝、ティフトン(主に沖縄などで使われている南方系の芝種)など、さまざまなコースの芝を想定しており、ラフの長さもセミラフから一般的なラフ、そして日本オープンクラスの“豪ラフ”エリアまで用意されています。

 順目もあれば逆目もあります。バンカーにもしっかりと砂が入っており、グリーンも本コースと同じコンディションに管理されていました。たいていのコースのグリーン周りの状況は再現できそうです。

 このプログラムを主宰するのは、株式会社orveの代表取締役である吉川仁氏。研修生として27歳までプロを目指し、その後は三浦技研でフィッターの修行をして、プロフィッターとなった人物です。

 USGTFティーチングプロの資格を取り、シャフトメーカーでも腕利きのフィッターとして活躍して昨年独立。東京・市ヶ谷に「4plusフィッティングラボ&ゴルフサロン」をオープンさせました。ここはゴルフ好きにとっては大人の秘密基地のようなサロンで、トラックマンやギアーズを使ったフィッティングを受けることもできれば、本格料理を楽しむこともできるプライベート空間になっています。

 吉川氏はウェッジフィッティングを始めた理由をこう説明します。

「長年フィッターをやっていて、ウェッジに悩んでいる人がすごく多いと思っていました。でも、練習場のマットや室内の環境だとウェッジのフィッティングは難しい。だから、今回は東宝調布スポーツパークさんと一緒にこういうフィッティングを始めてみました。でも正直、まったく儲からないですよ(笑)。でも、お客さんが自分に合ったウェッジが見つかって、楽しそうに芝の上からアプローチしているのを見ているだけで満足感があります」

 特定のメーカーに偏らず、幅広い選択肢から自分に合ったものを選べるのが、このプログラムの魅力。ヘッドやシャフトの数はどのくらいあるのでしょうか。

「ヘッドはボーケイ、ピン、クリーブランドなどの大手メーカーから、ロマロやマスダゴルフまで約150個、シャフトも軽量スチール、重量スチールからカーボンシャフトまで約150本あります。ちなみにボールもタイトリストだけで3タイプあって、ブリヂストンやスリクソンも揃えているので、今使っているボールでフィッティングしてもらっています」

 筆者も早速フィッティングを申し込みましたが、お試し試打の30分は2200円から、フィッティングの90分が1万5000円という料金体系です。

バンスがあるほうがやさしいとは限らない

ボールが沈んだライからもチェックできる
ボールが沈んだライからもチェックできる

 筆者のフィッティングを担当してくれたのは28歳の澤田さん。澤田さんも長年、大手ゴルフショップに勤務し、アマチュアゴルファーの多様なアプローチ軌道や癖からその人に合ったウェッジを提案してきたウェッジマニアでした。

 フィッティングはヒアリングシートに自分のプロフィール、ゴルフ歴、アプローチの悩みを記入するところからスタート。それが終わると芝の上からウェッジを打ちながら、澤田さんがトラックマンを使ってアプローチのデータを分析。距離はピンまで30ヤードです。ビデオでスイング動画を撮影しながら、筆者のボール位置やヘッド軌道を分析してくれました。

「ヘッドの入射角はかなり浅めです。だからバンスが大きいウェッジだと芝に引っかかりやすい。ソールの形状としてはソール幅が広いタイプよりも、少しヒール側などを落としているほうが芝から抜けやすいと思います」(澤田さん)

 その後、澤田さんが提案してくれた「ボーケイSM9」「ミズノ S23」「キャロウェイ ジョーズフォージド」「クリーブランドRTX」などを試させてもらいましたが、明らかに打ちやすかったのは「ボーケイSM9 Dグラインド」と「ロマロ アルコバッサストリーム」。筆者はアプローチでのダフリ癖に悩んでいましたが、この2モデルだと、面白いくらいにヘッドがスムーズに抜けてくれて距離感もバッチリでした。

 次はシャフトのフィッティング。最初は今使っているウェッジのシャフトに近い重量から試していきましたが、ナイスショットとミスショットの差が激しい。それを見た澤田さんが提案してくれたのが「KBSツアー120」でした。

「90とか100グラム前後のシャフトだと、どうしても手で打ちにいく感じが強くなってしまうので、うまく当たったときはいいのですが、ミスしたときのリスクが大きかったです。それよりも120グラムくらいのシャフトのほうがスイング軌道が安定していたので、芝から10球打ったときの安定感で言えば『KBSツアー120』が一番良かったです」

 その後は2つのヘッドと1つのシャフトに絞った状態でセミラフ、ラフ、バンカーやティフトン芝、そしてバンカーからのショットもチェック。最後は練習場の打席でフルスイングしたときのデータもトラックマンで撮影しながら、理想のロフトピッチなどを調べてくれました。

 筆者は過去にも大手メーカーがやっている室内練習場のウェッジフィッティングを受けたことはありますが、天然芝の上からいろんなメーカーのウェッジが打てるフィッティングは初めてでした。

 驚いたのは本当にコースを回っているときと同じショットや同じミスが出ること。そしてメーカーの垣根を超えて自分に合ったウェッジのヘッドやシャフトを選ぶことができます。トラックマンと天然芝を兼ね備えた施設はツアープロにも負けない環境とも言えます。

 フィッティング料を含めても、ドライバーやアイアンよりも少ない金額で済むウェッジ。スコアをお金で買うという意味では一番効率のいい投資かもしれません。

野中真一