乗用カートでのプレーがスタンダードである日本のゴルフ場。中には「このカート大丈夫か?」と感じるほど、年季の入ったものもあります。ゴルフ場のカートには車検のような定期的な点検はあるのでしょうか? ゴルフ場関係者に話を聞いてみました。
車検はないがゴルフ場が日々の点検を行なっている
ゴルフ場に何度か訪れるようになると、立地条件やプレー料金の価格帯によって実にさまざまな営業形態の施設があることが分かります。
クラブハウスが豪華な施設もあれば、質素な施設もあります。練習場が充実している施設もあれば、練習グリーンしか存在しない施設もあります。キャディーつきプレー主体の施設もあれば、セルフプレー主体の施設もあります。カートの種類も手引きカート、自走式乗用カート、電磁誘導式乗用カートなどがあります。
近年は「乗用カートあり」を予約検索の条件に設定しているゴルファーが圧倒的に多いようです。ひと昔前は「健康維持のためにゴルフをしているのだから乗用カートに乗るなんてもったいない」という風潮もありましたが、日本のゴルフ場の多くは山の中にある丘陵コースですから、かなりのアップダウンがあります。

フラットな林間コースや河川敷コースであれば18ホールを歩いてプレーしてもそれほど苦になりませんが、丘陵コースの上り傾斜を歩き続けるとやはり疲れます。傾斜がキツイときはいつでも乗用カートに乗れるという選択肢を確保したうえで、自分の体調やコースの状況を見ながら歩くというプレースタイルが主流になっているようです。
今や多くのゴルフ場にとって必需品となった乗用カートですが、かなり年季の入ったタイプをいまだに使い続けている施設もあります。自走式でアクセルを踏んだ途端に爆発音のような音が鳴り、ビクンとすることがあります。電磁誘導式で本来のスピードよりも明らかに遅いのではないかと思うほどのんびり動くカートもあります。
自家用乗用車は新車登録から3年間で初回の車検を受け、以降は車齢にかかわらず2年ごとに車検を受ける必要があります。ゴルフ場の乗用カートに車検のようなシステムはあるのでしょうか。ゴルフ場関係者に聞いてみました。
「乗用カートに車検はありません。ゴルフ場自身が日々の点検を行なっています。何か不具合があったときにはメーカーに修理を依頼することもあります」
「乗用カートは新車で購入すると1台約120万円、中古でも約60万円しますから、できるだけ長く使いたい設備です」
「18ホール営業のゴルフ場ですと、アウトイン25組ずつ、合計50組のプレー枠がありますから、少なくとも50台の乗用カートが必要です。何か不具合があったときに備えて60台保有すると、中古でも約3600万円、新車だと約7200万円の設備投資になります」
「その金額の設備投資はなかなかできませんから、古くなってきたら段階的に入れ替えを行なっていくというのが多くのゴルフ場のスタンスだと思います」
点検は入念に行なっているが、悪条件が重なると思わぬ事故が発生する
ゴルフ場にとって乗用カートはできるだけ長く使いたい設備なので、日々の点検・整備は入念に行なっているそうです。ただ、使用年数が長くなればなるほど、思わぬ不具合が発生するケースもあるようです。
「電磁誘導式は一般的に自走式よりも安全と言われていますが、カートが古くなると雨の日に坂道でブレーキが利かなくなり、タイヤがロックして滑ったりすると電磁誘導線から外れてしまう脱輪事故がたまにあります」

「普段はそんなこと起こらないのですが、悪条件が重なると思わぬ事故が発生することもありますから、お客様には万が一に備えて手すりやつり革につかまってのご移動をお願いしたいです」
乗用カートの不具合や設備の不具合で事故が発生した場合、ゴルフ場が加入している保険で対応してくれるとは思いますが、事故が起こってもカートが破損するだけで乗客の体が無事であることが何よりも大事です。
乗用カートが古いからといって心配する必要はありませんが、乗用カートが原因の事故は意外と多いということは念頭に置きながらプレーしたほうがいいかもしれません。
保井友秀