YouTubeやネットで最近見かける「二重振り子」スイングレッスン。物理用語である「二重振り子」は、動きの予想が不可能なカオス現象を説明するために使われている言葉。インドアゴルフレンジKz亀戸店・筒康博ヘッドコーチに「二重振り子」スイングを取り入れるメリット&デメリットを聞きました。
「カオス現象」をゴルフスイングにどう応用するの?
「二重振り子」スイングを取り入れた方がいいか? と質問されても、「二重振り子」自体が「カオス現象」つまり予測不可能な動きを説明するためのものです。

確かに、ゴルフスイングを正面からみた「2D」として考えれば、手首を支点にした「振り子」と考えることもできるかもしれません。しかし、もう一つの支点はどこでしょう? 無理やり首のツケ根あたりを支点にした一本の腕、と考えてもムリがあるように感じます。
スイングを後方から見れば、とても「二重振り子」とはいえないほど“たくさんの支点”があることが分かるはずです。

ではなぜ「二重振り子スイング」といった、難しいネーミングが流行しているのでしょうか? 教える側として伝えたいことがあるので、いろいろな文献も交えてメリットとデメリットをお話ししたいと思います。
二重振り子の“元ネタ”は、レッスン奇書「ゴルフィングマシーン」?
おそらく、「二重振り子スイング」の元ネタは、50年以上前に海外で出版されたレッスン奇書「ゴルフィングマシーン」だと思われます。その中の記述をざっくりお話しすると、
「から竿(大昔の農具)は、角度がついた状態から一直線になるまで下の振り子が遠心性による加速が発生し、一直線の状態を過ぎると角運動による減速が発生しパワーロスを起こす」とあります。

つまり、写真のようにダウンスイングの途中まで「タメ」を作っておければ、ヘッドの加速を生かしたまま左腕とシャフトが真っすぐの状態を過ぎる前にインパクトできる、と言うことです。
「当たり前じゃん!」という声が聞こえてきそうですが、そのとおりです。キャッチコピーや言い方が違うだけで、スイングに興味のあるゴルファーなら誰もが「大体知っていること」です。
ただ現実には、ついついリキみ過ぎて手首の力だけでヘッドを走らせてしまい「グリップとヘッドの同時加速」しているゴルファーは多いです。「グリップ→ヘッドの順番で加速しましょう」、「ハンドファースト気味でインパクトしないと当たり負けしますよ」の代わりに使っているのではないかと推測します。
流行りのキャッチコピーにご注意
長いゴルフの歴史の中では、世界中で様々なスイング方法がありました。しかし細かいスペックは変化しても、クラブの形状や人間の体の構造は大きく変わっていません。
また、ゴルファーの飛距離が2倍になったりスコアが半分以下になったり「魔法のスイング理論」は僕の知る限り確認していません。

ついつい流行り言葉やキャッチーなタイトルに飛びついてしまうのが「ゴルファーの性」ですし、それもそれで楽しいのも事実です。
しかし、中身も知らずに何でも飛びついてしまうと「やらなきゃよかった」と頭の中が「カオス」になってしまいます。せめて、そうなる前に「そもそも言葉の意味は?」に興味を持って欲しいです。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。
猿場トール