2022年日本ツアーの賞金王&年間女王が確定しました。メルセデスランキングトップを獲得した山下美夢有選手の身長は150センチ、男子賞金王の比嘉一貴選手は158センチと男女とも「小さな巨人」が誕生しました。ゴルフの腕前と身長の関係性はあるのでしょうか? 筒康博コーチに話を聞きました。

リーチは長いほど飛距離は有利。しかし欠点もある

 日本ツアーの年間女王&賞金王は「小さな巨人」、山下美夢有選手と比嘉一貴選手が獲得しました。ゴルフと身長の関係性について「身長が低い方がいいのか?」との疑問に答えますが、飛距離という点では長身の方がいいことは間違いありません。

 両手を広げたリーチの長さは、基本的に身長に比例します。身長が10センチ違えば腕の長さは5センチぐらい、クラブの長さで言えば「約2インチ」違うので、現在のクラブ長規制の中では有利といえます。

 また、アイアンを打つ時など上からインパクトしやすい面もあります。かつて日本ツアーで高身長の飛ばし屋プロが登場するたびに、メディアが「大型プレーヤー」と呼ぶ風習があったのも根拠があるといえばあるのでしょう。

年間女王の山下美夢有(左)と賞金王の比嘉一貴(右)。低身長の2人が大活躍してツアーを盛り上げた 写真:Getty Images、JGTOimages
年間女王の山下美夢有(左)と賞金王の比嘉一貴(右)。低身長の2人が大活躍してツアーを盛り上げた 写真:Getty Images、JGTOimages

 しかし、ゴルフはバスケットボールやバレーボール、陸上や水泳ほど身長が直接ハンディにならないと考えています。それは、今年のツアーに限らず歴史やゴルフスイングのフェアな難しさも関係していると思います。

「強いスイング作り」は体に合わせた“バランス”と“クラブ”が重要

 長いツアーの歴史の中で、「小さな巨人」は国内外問わず過去に何人もいます。男子では4大メジャーを獲得したグランドスラマーであるゲーリー・プレーヤー、マスターズチャンピオンのイアン・ウーズナム、「ポパイ」の愛称で現在もシニアツアーで活躍している倉本昌弘選手、女子では国内でも海外でも活躍した宮里藍選手、兄の宮里優作選手、宮里聖志選手も決して身長は高くありません。

 彼らに共通していることは「身長が低いハンディ」を、余りある才能と努力で“それ以上”に高めているという点です。

 特に飛距離のハンディは、巧みなショットメークとショートゲームを身につけることで補うことができるのです。彼らの活躍は、生まれつきの体が大きくなくても戦えると勇気と希望をファンに与えてくれます。

 体格に恵まれたゴルファーもスイングバランスを維持する、という点で実は難しさもあります。ゴルフクラブの構造上、身長185センチ以上になるとパターやアプローチのタッチや、前傾姿勢で行う際の腰などへの負担も大きくなると言われています。

 PGAツアーのトップ選手には何人も190センチ以上のプレーヤーがいますが、クラブの調整やショートゲームなど「高身長ゆえの努力」もしているのです。

ゴルフは「上がってナンボ」だから面白い

 山下美夢有選手や比嘉一貴選手を見ると、二人とも身長のハンディなど全く気にならないほど「流れるようなリズム」で「大きく見える」スイングだと思いませんか? また、全身を余すことなく使い切るので、むしろ安定感さえ生み出しているのです。

「大きく見える」スイングを目指して練習することが、ハンディを乗り越えて上達する秘訣 写真:AC
「大きく見える」スイングを目指して練習することが、ハンディを乗り越えて上達する秘訣 写真:AC

 機会があれば直接話を聞きたいですが、二人の頭の中には常に「どうすればもっとゴルフがうまくなるか?」を考えている気がします。「プロなら当たり前」と思うかもしれませんが、プロゴルファーの中でもトップクラスの努力家&探求者と言えるほど今年の二人のスイング&プレーは素晴らしかったです。

 ついつい「もう年だから」「才能がないから」「飛ばないから」と、ゴルフがうまくいかない言い訳は簡単にできます。しかし、多少のハンディがあってもやり方次第で「十分楽しめる」のもゴルフの魅力ではないでしょうか。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール