21年に日本人としては史上初の全米女子オープンを制した笹生優花。国内女子ツアーで活躍していた当時からポテンシャルの高さを印象づけるゴルフを展開していたが、それがワールドクラスであることをアピールした形となった。飛躍が期待された22年は未勝利に終わったものの、今季は再び世界を驚かせるゴルフをするために、日々努力を重ねている。
23年はフェアウェイキープ率が課題になる!?
21年の全米女子オープンを制した笹生優花。一躍世界のトッププロに仲間入りしたかと思いきや、22年は未勝利に終わり、CMEグローブランキングも28位に終わった。21年が13試合に出場ながら16位に入っていただけに、笹生自身にも悔しさが残るシーズンとなった。
当然23年は捲土重来を期したいところだが、スタッツを見ると、その可能性が十分あると予想できる。例えば、ドライビングディスタンスだ。21年も271.95ヤードで12位に入っていたが、22年は275.61ヤードで3位に入った。
「ドライバーを新しく替えたからだと思います。その意味では他の選手も飛距離は伸びているんじゃないでしょうか」と笹生自身は語るが、伸び率は他の選手を大きく上回っている。

しかも、出場試合数が13試合から26試合に増えていることを考えれば、年間を通して飛距離を稼いでいたと言えるだろう。
飛距離が伸びれば、それだけ有利になるのがパー5ホールだ。2打目を他の選手より短いクラブで打てれば、2オンの成功率も高くなる。それを証明したのがイーグル数だろう。22年はイーグルを17個奪い、見事イーグル女王に輝いた。
ただ、その一方でフェアウェイキープ率では数字を落としてしまった。21年の75.16%(53位)から67.80%(132位)と大きく下げたが、やはり長くて粘り気の強い米国のラフからグリーンをとらえるのは難しいのだろう。パーオン率も71.55%(51位)から68.58%(86位)と下がった。
「23年はパーオン率だけでなく、全体的に数字を上げていきたいです」と語る笹生だが、フェアウェイキープ率が上がれば、自動的にパーオン率も上がることが予想されるだけに、このオフはフェアウェイキープ率の数字を少しでも上げることが課題となるだろう。
拠点が米国だとジャンボ邸に通えないのが悩み
実質、22年が笹生にとっては米ツアーにフル参戦した最初のシーズンとなったが、最も戸惑ったのは移動だという。
「日本は新幹線や飛行機など、それほど移動に時間がかかりませんが、米国はほぼ飛行機、それも長時間の移動となるので大変でしたね」と振り返る。もっとも、飛行機に乗っている間は睡眠に当てているので、言うほど苦ではないかもしれない。
むしろ、笹生にとって大変なのは、スイングコーチをつけていないため、自分でスイングをチェックしなければいけないことだろう。

「日本にいるときは、ジャンボ(尾崎)さんのところへ結構通っていました」というように、千葉にあるジャンボ邸でボールを打つ機会が多かった。当然、その際にジャンボからもアドバイスを受けていたが、米国を拠点にした場合、それができない。
調子が悪くなれば、スイングの動画を自分で撮影し、どこが悪いのかをチェックするしかないという。ただ、笹生の場合、ゴルフを始めた8歳の頃から父親である正和氏と二人三脚でスイングを作り上げてきたし、調子が悪くなってきたときの修正法も熟知している。もちろん、アマチュアと勝手は違うが、正和氏がサポートする限り大きな不調に陥る確率は低いだろう。
幸い、米国の練習環境は日本よりも充実しているという。
「やっぱり土地が広いせいか、練習できる所まで行くのに、日本の半分ぐらいの時間で行けますからね」と笹生。
しかも、トーナメント会場以外でも芝の上から直接ボールを打てる。「一日中ゴルフ場にいるだけで楽しい」という笹生にとっては天国のような環境だろう。
「23年シーズンはいつもどおりゴルフを楽しみたいです」と抱負を語った笹生。そのためにも、このオフは課題克服へ向けて、自分の技術を今まで以上に磨いていくつもりだ。
笹生 優花(さそう・ゆうか)
2001年6月20日生まれ、20歳。フィリピンで生まれ、8歳からゴルフを始めた。2018年のアジア競技大会や2019年の女子ジュニアPGA選手権で注目を集め、同年11月にプロ転向。2021年からLPGAツアーに参戦し、6月の全米女子オープンで優勝、メジャー制覇とともにLPGAツアー初優勝を飾った。また、同年の東京オリンピックではフィリピン代表として出場し、11月に日本国籍を取得。
山西英希