昨今のドライバーには、いわゆるノーマルモデルよりもボールをつかまえやすい「ドローモデル」をラインアップしているものが多数、見受けられます。しかも「初心者のスライサー用」というイメージは、もはや過去のものといえるでしょう。
スライサー用というだけではない? 昨今の「ドローモデル」を試す
ドライバーはシャフトが長く、ロフト角も立っていますから、ボールを真っすぐ打ち出すのが最も難しいクラブです。上手くボールをつかまえられず、右に曲がるスライスが出てしまうのは、ゴルファーなら誰もが通る道ではないでしょうか。

そんなスライスに悩むゴルファーにとって大きな武器となるのが、「ドローモデル」のドライバーです。ヘッドの内部構造を工夫することで、インパクト時にフェースが閉じやすくなるよう調整されていて、通常ならスライスになるスイングをしても、ボールを真っすぐ打ち出すことができます。
最新ドライバーの中には、同じシリーズで複数の機種をラインナップしているケースが多く、その中には「ノーマルモデル」よりもつかまりを高めた「ドローモデル」が含まれているものもよく見られます。今回はタイトリスト「TSR」、PING「G430」、PRGR「RS」という3つの人気シリーズの「ドローモデル」を試打、比較しました。
テスターは、メーカー向けのPRコンサルタントを行うIRONSHELL代表の甲斐哲平氏です。

シングルハンデの腕前と大手シャフトメーカー勤務で培った確かなクラブ知識を基に、最新「ドローモデル」の傾向やモデルごとの性能を解説してもらいます。
安定してフェースが閉じて当たる「G430 SFT」
今回はPINGの「G430 SFT」からテストしました。PINGといえば、慣性モーメントを高めることでヘッドの真っすぐ動く力を強調したモデルを作るのが得意なメーカーですが、「G430 SFT」にもその特徴が見られるようです。

「どんな振り方をしても、インパクトでフェースが閉じて当たるのが『G430 SFT』の特徴です。手の感覚でフェースを返そうとしなくても、ダウンブローで自然にフェースが閉じてくれます。ヘッドのヒール寄りに重量を持ってくることで、慣性モーメントを高めたまま、フェースが閉じて下りやすく調整しているのでしょう。フェースが閉じた状態をキープして、ヘッドが真っすぐ動くという新しいタイプのドローモデルだといえそうです」(甲斐氏)
つかまりが良いヘッドは、上級者が打つと左への引っかけになることも少なくありません。その点「G430 SFT」はほど良いつかまり具合に調整されていて、引っかけも出にくくなっているようです。
「ヘッドの直進性が高いおかげだと思いますが、スライサーが打って真っすぐな球になるのはもちろん、ある程度、自分でボールをつかまえられる人が打っても軽いドローになるのではないでしょうか。過去のドローモデルとは明らかに違いが出ていますね。また、弾道的には、ノーマルモデルの『G430 MAX』と同じ高めの打ち出し角になりつつ、しっかりスピンが入るので、すごく高いボールが打てます。つかまりの良さで方向性を高めつつ、キャリーを伸ばせるドライバーとなっています」(甲斐氏)

このほか、ウェイトを装着する位置を変えてつかまり具合を調整できるのも「G430 SFT」の魅力です。「ドロープラス」にセットすれば、かなりのスライサーでもボールの曲がりを矯正することが可能となります。
ストレートな顔でボールがつかまえられる「RS D」
続いてはPRGRの「RS D」をテストしました。

「まず、構えた時の顔がすごくいいですよね。ドローモデルというと今まで、フェースが左を向く“フックフェース”の採用が多く、これは構えた時の違和感が強くて、敬遠するゴルファーが少なくありませんでした。『G430 SFT』もそうでしたが、最新のドローモデルは、スクエアで構えやすい顔に仕上げつつ、内部構造でボールがつかまるように設計されていて、すごくクラブの進化を感じます。これまでは初心者やアベレージゴルファー専用のモデルというイメージのあったドローモデルですが、この顔であれば使いたいと考える上級者もいると思いますよ」(甲斐氏)
振り心地については、「G430 SFT」と明確な違いがあったようです。
「『RS D』は、スイングする中でフェースが自然にターンしてくれる印象でした。『G430 SFT』は閉じた状態で固定される感じでしたので、同じドローモデルでつかまりが良いといっても、振り心地は全く別物ですね。また弾道についても、『RS D』はやや低めの打ち出しになっていました。スピンが入るという点は共通していますので、振り心地や弾道の好みで選ぶと良いでしょう」(甲斐氏)

ノーマルモデルに近い、構えやすい顔や弾道の強さがありつつ、ボールをつかまえやすく調整を加えたのが「RS D」だといえそうです。
「TSR2」はプッシュを抑えられるヘッド
最後にタイトリストの「TSR2」を試打しました。こちらは「TSR」シリーズの3機種の中で最もやさしいモデルになりますが、「G430 SFT」や「RS D」とは少し違いがあるようです。

「大きめのヘッドで構えた時に安心感があり、打ってみるとほど良いつかまりで真っすぐな高い球が打てます。右プッシュがほとんど出ない適度なつかまりの良さがあるものの、ドローモデルというよりは、他のシリーズのノーマルモデルに近い性能のヘッドに仕上がっていますね。パワーのある上級者でも十分に使えるドライバーです」(甲斐氏)
実際、甲斐氏の試打データを見ると、ほかの2機種はボールが左に曲がるドロー系の球筋でしたが、「TSR2」は軽く右に曲がるフェードになっていました。
「打ち出し角は14.1度と高めで、フェードを打ってもスピン量が2137rpmに抑えられていました。スピンが多めに入る『G430 SFT』と『RS D』とは弾道的にも違いがありますね」(甲斐氏)

同じシリーズの“3兄弟”の中で最もやさしいモデルである3機種の打ち比べを終えて、甲斐氏は次のように感想を述べました。
「それぞれ、つかまり性能や弾道、対象ターゲットに明確な違いがありました。ノーマルモデルよりつかまりが欲しい、もう少し弾道を高くしたいと考えるなら『G430 SFT』や『RS D』を、やさしさも欲しいけど強弾道の飛びも欲しいなら『TSR2』を選ぶと良いでしょう」(甲斐氏)
初心者やアベレージゴルファー向けと考えられがちな「ドローモデル」ですが、今回テストした3機種はいずれもスクエアで構えやすい顔に仕上げられ、中、上級者が選んでもおかしくない総合力がありました。
近年はドライバーでも強いハンドファーストのインパクトでロフトを立てて当てるようなスイングがトレンドになっていますから、楽に高さが出て、スピンも入るドローモデルの需要はどんどん高まっていくかもしれません。
田辺直喜