勝みなみと西村優菜が加わり、過去最高とも言える強力な日本選手がそろった今季の米女子ゴルフツアー。そんな米女子ツアーに参戦して7年目となる畑岡奈紗が、今季中に更新する可能性のある大記録とは?
「米女子ツアーの生涯獲得賞金額」更新が期待される畑岡奈紗
米女子ツアーは今週のヒルトングランドバケーションズトーナメントオブチャンピオンズでいよいよ今シーズンの幕を開ける。うさぎ年生まれで年女の畑岡奈紗は参戦7年目。今季は宮里藍が持つあるデータの日本選手最高記録更新に期待がかかる。
畑岡が“宮里超え”に挑むのは米女子ツアーの生涯獲得賞金だ。宮里は2006年から17年まで米女子ツアーでプレーして830万2365ドルを稼いでいる。生涯獲得賞金ランキングでは31位というポジションである。

2017年に米女子ツアーメンバーとなった畑岡は昨年までの6シーズンで656万6629ドル。これは日本選手歴代2位の数字で、宮里との差は173万5736ドルである。畑岡は2021年に約190万ドルを稼いだことがあるので、今季中の更新は十分に可能だ。
宮里は米女子ツアーで12年間、257試合プレーした。畑岡は6年間で121試合。今季中に宮里超えとなれば通算140〜145試合くらいという計算になる。宮里よりもずい分と早いわけだ。
大きな理由は、賞金額が年々高くなっているから。宮里がシーズン5勝と活躍した2010年と昨年を比較すると、1試合あたりの賞金額は約1.7倍になっている。もうひとつ、宮里は9年目あたりから成績が低迷してあまり賞金を加算できなかったということも背景にある。
では、6年目までの成績を比較するとどうか。出場試合数は宮里が131試合、畑岡は前述したように121試合である。畑岡の場合はコロナ禍で2020年の試合数が大幅に減ったことが影響して宮里よりも少なくなっている。
優勝回数は宮里7勝、畑岡6勝でほぼ互角。トップ10は宮里45試合、畑岡34試合で宮里に軍配が上がる。
全体としては宮里やや優勢である。宮里は世界ランキング1位の経験もあるすごい存在。畑岡は、その宮里に迫るくらいの成績を残しているのだから見事なものだ。
宮里、畑岡に続く日本勢3位は宮里美香の398万5245ドル。やや水をあけられている。
歴代1位のソレンスタムの生涯獲得賞金は約2258万ドル
日本勢最多の米女子ツアー17勝をマークしている岡本綾子の生涯獲得賞金はどのくらいだったのかというと274万9509ドルである。意外と少ないと感じるかもしれないが、岡本が活躍したのは1980年代だから、賞金額は今の時代とは比べものにならないくらいに少なかった。
4勝を挙げて賞金女王に輝いた1987年ですら46万6034ドルである。今なら1試合でこれよりも高額の賞金を稼げるくらいだ。実際、昨年の全英女子オープンで3位に入った渋野日向子の獲得賞金は48万8285ドルで岡本の1年分より多かった。
では、米女子ツアー全体での生涯獲得賞金1位は誰で、どのくらい稼いでいるのだろうか。

答えはスウェーデン出身のアニカ・ソレンスタムで2258万3693ドルである。ソレンスタムは1995年から2008年までの間に通算72勝を挙げ、8回も賞金女王に輝いた歴史に残る名選手である。
ソレンスタムの生涯獲得賞金は単純に現在のレートで円に換算すれば約29億円という途方もない額になる。日本女子ツアーの生涯獲得賞金1位は不動裕理の約13億円だから、その2倍以上だ。
歴代2位はソレンスタムのライバル的存在だったカリー・ウェブ(オーストラリア)で2029万3617ドル、3位はクリスティ・カー(米国)の2016万6399ドルで、この3人が2000万ドルの大台を超えている。
1000万ドル以上は24人。畑岡は日本選手初の1000万ドルプレーヤーにも最も近い存在である。
さて、開幕戦の出場資格は過去2シーズンの優勝者なので、日本選手は畑岡と笹生優花の2人だけ。畑岡は大会の冠スポンサーであるヒルトングランドバケーションズのブランドアンバサダーに就任したばかりでより気合いも入るだろう。
3年前にはプレーオフで惜しくも敗れた大会。その時のリベンジを果たせば、“宮里超え”に向けて最高の勢いがつくはずだ。
宮井善一