“手の5番”や“卵を産む”などは、ゴルフの代表的な不正行為として、基本的にNGとされています。しかし、スコアを競わないで、同伴競技者とのコミュニケーションを楽しむラウンドでは、同伴者の同意があれば使うのもありなのでしょうか?
女性ゴルファーとのラウンドで新たな楽しみ方を発見
先日、女性3人と男性1人(=筆者)でラウンドする機会がありました。女性1人・男性3人の組み合わせと女性2人・男性2人の組み合わせは過去に記憶がありますが、女性3人・男性1人はおそらく初体験です。
元々は親戚の女性と、その女性のいとこ夫婦と一緒にラウンドする予定でした。すなわち女性2人・男性2人の予定でしたが、夫の都合が悪くなり、友人女性が入りました。筆者は女性3人のうち1人しか面識がなく、2人は初対面です。女性3人は全員面識があります。

そのような組み合わせでもゴルフ場で「はじめまして」とあいさつし、ゴルフの話を始めれば、すぐに打ち解けることができるのがゴルフというスポーツの魅力です。
そのゴルフ場はスタートホールにスターター(スタート誘導スタッフ)が配置されており、前の組との間隔を見ながらティーショットを打つタイミングを指示していました。するとスターターが「男性はまだ打てないけど女性は打てるので、女性から先に打ってください」という指示が出ました。
使用ティーは筆者がレギュラーティーで、女性陣はレディースティーですが、その差は30ヤードくらいでした。レギュラーティーから前のカートまで250ヤード前後なので、男性はまだ打てませんが、女性は220ヤード前後離れていれば打ち込みの心配なしとスターターが判断したわけです。
実際にそのとおりで、女性3人が先にティーショットを打ち、その間に前の組のカートが進み、最後に筆者がレギュラーティーからティーショットを打つことでスムーズなスタートが切れました。
女性ゴルファーとレディースティーに関する話をしていると、次のような意見を聞くことがよくあります。
「レディースティーから回ってもパー4が2打で届かないホールがけっこうあるので、もっと前に出してくれてもいいのに」
でも、もしかしたらゴルフ場側の事情として、レディースティーを前に出し過ぎると、男性よりも先に女性が打つことができなくなるので、わざとレギュラーティーの近くに配置しているのかもしれないと思いました。
完全ノータッチのプレーを強要する必要はない
さて、この日のラウンドの主導権は女性陣が握っていますから、ルールも委ねることにしました。
すると「バンカーで2回打って脱出できなければ“手の5番”で外に出してOK」、「ボールが見つからなかったら速やかに“卵を産んで”プレーを続ける」、「下りのシビアなパットはお互いにOKを出し合う」といった具合に、メンバーのレベルに応じて独自のルールを設定し、ラウンドを楽しんでいました。

“手の5番”はバンカーや林の中などの難しい状況からボールを手で持ち上げて動かすことです。“卵を産む”はボールが見つからなかったときに手持ちのボールを地面に落とすことです。
どちらも競技ゴルフの世界では不正行為の隠語として使われていますが、草ゴルフの世界では同伴者全員が同意しているのであれば何の問題もありません。
草野球では野球経験がない女性が守備につくときは10人で守ったり、その女性がバッターボックスに立ったときは一塁まで走る“走塁要員”を配置したりして参加者全員が楽しめるように特別ルールを作ります。
草ゴルフでも公式ルールを遵守してプレー進行が遅れると後続組に迷惑がかかります。各自のレベルに応じて特別ルールを設定し、プレーをスムーズに進めるほうが合理的です。
そもそも、彼女たちにスコアを競い合うという意識はまったくありません。その場のコミュニケーションの楽しむのがラウンドの一番の目的ですから、細かいルールなんて気にしていないのです。
男性ゴルファーは互いにスコアを競い合う意識が強いため、ルールに関しても厳格な適用を好む傾向がありますが、初心者のうちはボールが右にも左にも曲がりますし、ダフリ・トップも多発します。そんな状態で完全ノータッチのプレーを強要するのは酷です。
プライベートなエンジョイラウンドであれば、仲間内で通用するオリジナルルールを設定し、できるだけストレスが溜まらないようにプレーするのがゴルフを長く楽しむ秘訣かもしれないと感じました。
保井友秀