バンカーショットはなかなか練習する機会がないにも関わらず、「フェースを開く」や「まっすぐ構えても打てる」、「フェースは開かなくていい」などの対論もあり混乱しがちです。アマチュアゴルファーでも実践できる「安全な打ち方」はないのでしょうか?

打ち方よりも「勢い」と「高さ」が最重要

「誰でも出来る安全なバンカーショット」と簡単に言いますが、特に冬のバンカーは砂が固くなったり凍っていたりして整備も難しいため、ハザードとしての難易度は一層高まります。

「入れないようにしてください」といいたい所ですが、入ってしまったら欲をかかず「一発脱出」を最優先しましょう。硬い砂に弾かれてOBに……なんてことも冬場は多くなるので、「しっかり砂を取る」安全なバンカーショットの打ち方を覚えておいて欲しいです。

ゴルフ場でしか練習する機会がないバンカーショット。「安全な打ち方」があるのでしょうか?
ゴルフ場でしか練習する機会がないバンカーショット。「安全な打ち方」があるのでしょうか?

 そうはいっても、コース以外では練習する機会が圧倒的に少ないバンカーショット。にも関わらず、「フェースやスタンスは開く?」から始まり、「コックは使う?」、「ヒジはたたむ?」などスイング方法が気になって振り回されている人も多いと思います。

 状況が毎回異なるにも関わらず、パター以上に普段から練習しない(できない)うえに、スイング方法まで色々考えていては「出るものも出なくなる」のは当然。プロのようにゴルフ場でたくさんバンカー練習していない限り、「寄せるより一発脱出を最優先」にして欲しいです。

 バンカーから一発で脱出するには、手前の砂をダフっても外に出るだけ「勢い」と「高さ」があるのか、が重要です。フェアウェイからサンドウェッジのフルショットをした場合、みなさんはどれぐらいの飛距離が出ていますか?

バンカーショットを安全に行うためには、手前の砂を打ってもボールの「勢い」と「高さ」が必要
バンカーショットを安全に行うためには、手前の砂を打ってもボールの「勢い」と「高さ」が必要

 例えば、フルショットで70ヤード飛ぶ人がいるとします。手前の砂を大きくダフれば、すぐに半分ぐらいしか飛ばなくなるのは想像できると思います。バンカーから手前の砂をダフった場合は「普通のショットより半分〜3分の1しか飛ばない」と知っていれば、オーバーを過剰に意識して小さな振り幅で打ったり、スタンスやフェースを開いたりして「飛ばなくする工夫」はしないはずです。

 確かにボールを直接打ってしまうホームランは嫌なミスショットですが、実際に大叩きの原因になるのは脱出するだけの勢いが足りず、何回打ってもバンカーから出ないことです。

 つまりたくさんバンカーを練習しているうまい人用の打ち方と、練習できない人が「一発脱出するための方法」は同じでなくてもいいのです。

ボールに当たる前に砂に当たる「バンカーショット風」アドレス

 手前の砂を一生懸命打っているのに、全然ボールが飛ばない人もたくさんいると思います。タコツボのように深いバンカーからは上級者でも簡単には出せませんが、そうではないなら「V字スイング軌道」や「手首のコック」、「スタンスやフェースを開く」も必要ありません。

 上級者のような「高く飛ばない球を打つ」方法ではなく、「ボールの前に砂に当てる」ようにすればよいのです。

ドライバー時のボール位置よりも「さらに左」にすることで、ボールを直接打たず砂に当たってからボールに当たる「バンカーショット風」になる
ドライバー時のボール位置よりも「さらに左」にすることで、ボールを直接打たず砂に当たってからボールに当たる「バンカーショット風」になる

 具体的には、スイングしてもボールを直接打てないくらいボール位置を左足寄りにします。感覚的にはドライバーの時よりもっと左のつもりでいいです。あとは打ちたい距離の2〜3倍打つイメージで、普段通りのスイングをしてください。

 このボール位置なら直接ボールに届かないので、結果的に手前の砂に当たってからボールに当たることになり「バンカーショット風」になります。

 シンプルに一発脱出するための勢いを得るために、とにかく普通のショットをイメージすること。高さを得るためにサンドウェッジを使用し、手前の砂に当たってからボールにコンタクトするボール位置にすること。

 サンドウェッジには55〜60度のロフト角がついています。よほどの状況でなければ、クラブ本来の機能に任せるだけで脱出は可能です。ただ、フルショット時の飛距離が50ヤード以下のゴルファーにとって、深くて高いバンカーは本当に大変なショットになります。そもそも「バンカーはハザード」なので、ペナルティーを払うつもりで向き合うしかありません。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール