練習場のように真っすぐなラインもないのに、なぜプロや上級者は狙った方向に打てるのでしょうか? インドゴルフレンジKz亀戸店・ 筒康博ヘッドコーチがコースでの“ルーティン”について解説してくれました。

アベレージゴルファーは軽視しがち!? 素振りよりも重要な「脳内ショット」

 ラウンドでのプレーを見ていると、ショット前の“ルーティン”で「どんなショットが打ちたいのか?」、「どんなスイングイメージで打ちたいのか?」などが、同伴競技者に伝わる人ほど簡単にナイスショットを打っているように思います。

 逆にビギナーの“ルーティン”には、同伴競技者に「何がしたいの?」、「ここからどうするの?」、「その番手で大丈夫?」など、不安感を与えている傾向があります。

現在の状況に合わせた「狙い」を決めて、今の自分が打てそうな“弾道”に合わせてアドレス方向やボール位置などを調整する
現在の状況に合わせた「狙い」を決めて、今の自分が打てそうな“弾道”に合わせてアドレス方向やボール位置などを調整する

 ゴルファー本人は無意識なことが多いですが、ラウンドに慣れた上級者ほど必ず「脳内ショット」、つまり状況に合わせたイメージ作りを、何度も行ったうえでショットに臨んでいます。

 ボーリングやダーツ、ビリヤードなど、静止した姿勢から目標を狙う「ターゲットゲーム」では、無意識に誰もが行っている“ルーティン“です。ゴルフの場合、サッカーのPKやテニス、卓球のサーブのように打ち返されたり阻止されないので周りの目を欺く必要もありません。

 “ルーティン”は同伴競技者から見て、不安要素ではなく分かりやすいことが重要。ついついチェックポイントが多くなりすぎて、結局「ただボールを打っているだけ」になっていませんか?

イメージした“弾道”に合わせてアドレスする

 飛球線後方から方向を決めてアドレスに入る“ルーティン”は、多くのゴルファーが行っているはずです。しかし、上級者ほど自分の調子やミスの傾向に合わせた「脳内ショット」を何度も行いトラブルになりにくいアドレスを実行しています。

現在の状況に合わせた「狙い」を決めて、今の自分が打てそうな“弾道”に合わせてアドレス方向やボール位置などを調整する
現在の状況に合わせた「狙い」を決めて、今の自分が打てそうな“弾道”に合わせてアドレス方向やボール位置などを調整する

 練習場のように「体の向きが真っすぐかどうか?」よりも、ショットそのものに直結するクラブフェースの向きを優先してアドレスします。

 コースレイアウトや持ち球の傾向をみながら、最終的には「グリーンの右奥の木のてっぺん」などシンプルな狙いにクラブフェースの向きを合わせます。さらに体のポジションを調整し、リズムよくスイングできそうな状態に誘導していくのです。

 実践しているゴルファーからすれば当たり前のことですが、練習場とコースで別人になってしまうゴルファーの多くは、コースの状況や自分のミス傾向などよりも、「真っすぐ体が向いているかな?」などを優先しがちです。「練習どおりのスイングをすればボールは真っすぐ飛ぶはず」と過信しているアマチュアが多いのです。

“ルーティン”に慣れることも大切な練習

 練習場の打席では、チェックや工夫をしなくてもある程度「真っすぐ構えて真っすぐ打つ」ことは可能です。また、同じクラブで何球も続けて打っている人ほど、ミスよりもうまく打てたショットを認識しやすい傾向があります。

 しかし、コースには真っすぐなラインもシミュレーションのようなターゲット表示もありません。ミスした場合には、ペナルティーやトラブルを回避しながらショットに臨まなくてはなりません。

練習打席では比較的簡単に「真っすぐ構えて真っすぐ打つ」はできるが、コース本番さながらの意識で“ルーティン”の習慣をつけておくのも「練習」
練習打席では比較的簡単に「真っすぐ構えて真っすぐ打つ」はできるが、コース本番さながらの意識で“ルーティン”の習慣をつけておくのも「練習」

 ラウンド前に関わらず普段から「脳内ショット」を行い、これから打つ番手のミスを予想しながら、弾道に合わせたアドレス作りも大切な練習です。

 打ちっぱなしの練習場で、他人から「あいつカッコつけてる!」と思われる気がするなら、個別に打席が仕切られているインドアレンジで身につけるのもオススメです。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

猿場トール