2023年のPGAツアー「ソニーオープン・イン・ハワイ」を最終日64で逆転したのは、韓国キム・シウ選手でした。昨年ルーキーながら優勝したトム・キム選手や女子プロ達も、韓国人トッププロの層が厚いのはなぜでしょう?韓国ゴルファーのスイングメソッド研究も行なっている筒康博コーチに解説してもらいました。
ニーズが高い? シミュレーション機器メーカーの多くが韓国企業
PGAツアー「ソニーオープン・イン・ハワイ」では、昨年の松山選手に続き韓国のキム・シウ選手が最終日逆転でツアー4勝目を挙げました。優勝候補の一人だったトム・キム選手はじめ、PGAツアーで活躍する韓国選手はみんなオーソドックスなスイングのショットメーカー。
スイングが似ていて特徴がないように感じる、という人も多いかも知れませんが、今回は韓国プロのスイングの特徴や傾向についてお話しします。
韓国のゴルフマーケットは日本より規模こそ小さいですが、競技または向上志向ゴルファーの比率が高く、「熱」があるのが特徴です。

気候やゴルフ場数の関係で、インドアゴルフレンジは早い時期から活況でした。シミュレーション機器メーカーの多くが韓国企業なのも、そんなゴルファーニーズからだと考えられます。
そんな韓国、ゴルフメディアやコンテンツは自国オリジナルよりも米国をお手本にしていて、レッスンメソッドの中心もPGAツアー選手になっています。そのため、レッスンカリキュラムも、コーチ個人による感覚的なものではなく「型」を繰り返し覚える、どちらかというと画一的なスタイルが一般的です。
そのため、日本選手に比べ個性的な魅力があるスイングというより、スイングプレーンをなぞるような「教科書的」スイングを多くの選手が身に付けています。
実は韓国スイングの「お手本」に多く登場しているのが、松山英樹選手。アマチュアをレッスンするインストラクターの多くが「松山選手のように……」と説明することも多く、トップスインガーのローリー・マキロイ選手と並び、韓国ゴルファーの教科書の一人になっています。
韓国スイングでは各ポジションの体とクラブの「型」を覚え込ませる
韓国スイングレッスンは日本と比較して、個性の前に「型」の習得を重視する傾向があります。
スイングを8〜10ポジションごとの「型」に当てはめ、何度も繰り返して覚えさせるスタイルが主流。PGAツアー選手の多くがジュニア時代からプロコーチにつき、早い段階からスイングの「型」を徹底的に身に付けるのでショットメーカーが多いのです。
個性的なスイングと天才的な感性で活躍する松山選手が登場する前の日本人プレーヤーとは異なり、機械的にも見える韓国スイングはPGAツアーで「厚い選手層」を形成するまでになりました。

プロに限らず、SNSなどで見かける韓国ゴルファーのスイングは、みんな似ていることに気づいた方も多いと思います。日本のように、突然「〇〇打法」が流行しない韓国のゴルファーは、ローリー・マキロイ選手やタイガー・ウッズ選手そして松山選手のように「ややフラット」なスイングプレーン、かつ「体の回転」を重視した“美しく強いスイング”を多くのゴルファーが目指しているのです。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。
猿場トール