スイングの構築は道のりが長く険しいものです。特にバックスイングに悩むと、「深い沼」にハマってしまうものです。なぜ、「真っすぐ引く」がバックスイングの基本と言われているのでしょうか。筒康博コーチに、スイングの歴史や正しい意味について話を聞きました。
スイングは円運動なのに「真っすぐ引く」は正解なの?
アマチュアゴルファーがスイングについてアレコレ悩むこと悪いことではありません。しかし、悩みの先に“迷い”ではなく、“方針”や“対策”が存在しないと「スイングの沼」にハマってしまいます。
多くのプロや競技ゴルファーたちは、「バックスイングに悩んだらイップスの始まり」と考えている人もいるほどです。「静」であるアドレスから「動」のスイングへの移行は、考えれば考えるほど悩むことになるでしょう。

昔からバックスイングは「真っすぐ引く」といわれているのは、飛ばすためというよりもインパクト時のヘッド軌道をよくするための「イメージ」だと考えた方がいいと思います。
基本的にスイングは円運動なので、定規で引いたような直線はほぼ存在しません。しかし、真っすぐ飛ばしたいゴルファーほど、「バックスイングさえ真っすぐなら」と依存してしまう傾向が見られます。
バックスイングが真っすぐ引けたかどうかは、ショット自体の方向性に直接関係しません。極論ですが、とんでもない方向にバックスイングしているスイングでも、インパクト時のヘッド軌道とフェース向きがそろっていれば、「かなり真っすぐに近い」弾道にはなります。
なぜプロのバックスイングは「真っすぐ引いている」ように見えるのでしょうか?
ゴルフの発祥は何百年も前の話なので、当然僕はリアルタイムに立ち会っていません(笑)。しかし、「GOLF」になった時に最初からあったものは、短い距離を転がして穴(カップ)に入れるパターだったことは想像に難くないと思います。
そこから「もっと遠くから打ってみよう」になり、だんだん飛距離を出すためにクラブや体の動きが大きくなった……、というのが現代スイングの原点になっているのではないでしょうか。

普段のラウンドでは特に気にしないと思いますが、30センチ程度の短い「OKパット」では、みなさんはどんなバックスイングをしていますか? 「インサイドから打ちたいから、外に上げてループ」、「シャローイングするから」、「コックをどこで使うか」など、普段練習場やコースで悩んでいるショットと同じことを意識している人はいないと思います。
つまり、短いOKパット時にはほとんどのゴルファーが「だいたい真っすぐな感じ」のバックスイングで打っているはず。ボールとクラブの関係性でいえば、パターのようにフェースがカップの方向を向いたまま真後ろに近い方向にバックスイングされ、だんだん大きなスイングになるに従い円運動になるのが合理的です。
とはいえ、個々のゴルファーによって「感覚」や「クセ」が異なり、なかなか「真っすぐに見える」バックスイングは難しいのも事実です。多くのエリートゴルファーが採用しているのが、シャフトが地面と水平になったときに グリップとクラブがツマ先を結んだライン近くになっていることを目安にしています。
クラブを真っすぐ動かすために、体の「目安」はある?
クラブとグリップの「真っすぐの目安」が分かっていても、体の回転や体重移動などが加わり、「止まったところを確認しても打てない」と感じている人も多いです。そんな方は、一度本当に止まってからボールを打つ「ストップ&ゴー」を試してみてください。やり方は簡単、バックスイングでピタッと止めて、そこから実際にボールを打つドリルです。
おそらく何回かは「止まったつもり」なのに「止まってない」事実に驚くのと同時に、「バックスイングの動かし方なのにボールを打つ必要があるのか?」と疑問に思う人もいると思います。

バックスイングはその名の通り「後方にスイングする」動作を行うことで、ボールを打つ助走動作と体勢作りが目的。いくら形だけカッコよくても、自分にとってボールを打つメリットが出なければ本来の目的を果たしてはいません。
あくまでも「基本の型」は、エリートゴルファーの平均値であり「目安」です。基本からアレンジして結果や中身がよければ、「今の自分にとっての最善」と悩み過ぎないで欲しいです。
猿場トール