ゴルフを始めたら必ず入っておきたいのがゴルフ保険。春になって本格的にシーズンインしたら加入しよう、あるいは更新しよう、と思っているゴルファーも多いかもしれません。しかし、ゴルフ保険のプロに話を聞くと、まだ寒い時期こそ入っておくべきだと言います。
“場内”でのケガが多発する寒い時期こそ保険加入を
まだ今の時期はしばらくラウンドを休み、オフのうちにスイング改造やクラブの買い替え準備でもしておくか、という人もいるでしょうが、“オフのうち”の準備に忘れず加えたいのが、ゴルフ保険の加入や見直しです。

「ビギナーの方々は『コースに出られるようになったら、ゴルフ保険に入らなきゃ』、更新時期を迎えている方々は『オフは練習場通いだけだから、シーズンが始まってから更新すればいいや』とお考えかもしれません。しかし、 “オフのうち”だからこそゴルフ保険に加入されることをお勧めします」
そう語るのは、(株)京葉保険事務所の下道隆宏さんです。同社は東京海上日動火災保険のTQ(トップ・クォリティの頭文字)代理店として各種保険の取り扱いを行ない、ゴルフ保険でも多くの顧客やさまざまな事例に対応しています。
そんな“保険のプロ”に、なぜゴルフ保険に入るならプレー頻度が減るはずの今なのか、お聞きしました。
「今の時期は、想像される以上に“場内”でのケガが多発しがちだからなのです。“場内”とは、ゴルフ場及びゴルフ練習場の敷地内を言い、当社が取り扱うゴルフ保険のケガやクラブの破損・盗難など事故が起きた場合の保険適用条件にもなっています」
「大まかに言うと、コース、レンジ、クラブハウス内や周辺。ロッカールーム、浴室、洗面所、レストラン、駐車場も“場内”とみなします。冬場は舗装路やカート道に敷かれているゴムマット、駐車場など、“場内”のあらゆるところで凍結が見られるため、何かに気をとられた隙に足をすべらせて転倒し、ケガを負ってしまうケースが目立ちます」
「また、冬場は体が冷えて硬くなりがちです。みなさんそれをご存じで、ストレッチやウォーミングアップを行なってから素振りや球打ちを始めると思います。それでも100%は防ぎ切れないのがケガや故障です。素振りで腰をひねり筋を痛めた、ボールを打ち込んだ瞬間、手首に痛みが走った、たった5センチか10センチの段差で足首をひねったなど、ゴルフ場でも練習場でもちょっとした弾みで体を痛めてしまったというお客様の保険請求手続きも決して少なくありません」
下道さんによると、プレー後の入浴中もケガをする危険があるようです。年間を通して言えることでもありますが、特に今の時期はシャワーだけで済ませがちな夏場と違い、湯船にゆっくり浸かって冷えた体を温めるゴルファーが多いと思います。いざ出るとき浴槽の縁に足が掛かったり、浴槽と洗い場との行き来で石鹸の泡に足をとられたりして転倒するケースも間々あります。
冬場に多いケガに対する備えのほかにも、ゴルフ保険はゴルファーに降りかかるさまざまなアクシデントをカバーしてくれます。若年層も、当分ラウンドの予定がない人も、いつどこで出会うかわからないアクシデントに備えるためにもオフの今こそ加入手続をするのがベターというわけです。すでに加入している方にも、こうしたケーススタディーは更新時の参考になります。
実際の保険金請求が多いのはクラブの破損

では、ゴルファーは実際どのようなケースで保険請求しているのでしょうか。アクシデントが起きたとき「ゴルフ保険に入っていて本当に良かった! 助かった」と、安堵するのはどのようなケース? 反対に、ゴルフ保険を請求できると多くの人が思いがちだが「適用外だった」というケースもあるのでしょうか。
多くのゴルファーが疑問に思う質問に、下道さんはこう答えてくれました。
「まず当社で取り扱いしているゴルフ保険の補償のしくみを大まかに整理すると、(1)ご自身のケガ、(2)他人をケガさせてしまったときの賠償、(3)持ち物や携行品の破損や盗難、(4)ホールインワン(及びアロバトロス)保険の4分野をカバーします。このうち事故・保険の請求が比較的多く発生するのは、3、1、4、2の順になります。最も多いのは3ですが、その内容は多い順に、クラブの破損(折れる)、曲損(曲がる)、盗難です」
「ただし、自宅の駐車場や輸送中に起きた破損や盗難は“場内”ではありませんから適用外です。クラブ以外のキャディーバッグやボールの破損や盗難も適用外ですので気をつけてください」
「1については、先ほどもお話ししたように100%防げるものではありません。冬場でも発生しやすく、先日は手指の筋を断裂しかかるようなケガをされた方の請求手続きを行ないました。ゴルフ保険のケガにおける適用は、傷害保険と同じように『急激、偶然、外来(被保険者の身体外部からの作用によって生じる事故を言います)』の3要素が適用条件となります。そのため、例えば食中毒や熱中症、貧血といった“病気”は適用外です」
「4のホールインワン保険はオプションですが、請求数は多いです。当社のお客様はほとんど付けている一方、ビギナーで新規の方は迷われます。ただ、ホールインワンにはゴルフの腕前だけでなく偶然の要素も働くようにお見受けしており、実際幅広いゴルファーからの申請があります」
ちなみに、ホールインワン特約をつけている人がホールインワン及びアルバトロスを達成した場合、申請時にキャディーさんや同伴者の目撃証明の提出が必要になります。また、保険が適用されるのは、国内のゴルフ場でのホールインワン及びアルバトロスのみです。
「セルフプレーしかしない」「海外でラウンドすることが多い」など、それぞれ自分のゴルフスタイルも加味して判断するのがベストです。
他人にケガをさせるリスクが加入理由の第1位
さて、最後に他人をケガさせてしまった場合についてはどうなのでしょうか。自分の打球が前の組の人に直撃した、カートを運転して人にぶつかった、素振りで振り上げたクラブが近くにいた人に当たった……。ゴルフでは、さまざまな事故が起きる可能性は常にあります。
「実際のところ、この件での保険請求は少ないです。しかし、ゴルファーの方々にとって、ゴルフ保険に加入する最も大きな理由が、“ほかの人にケガをさせてしまった場合に備えて”です。お客様のなかには『自分のケガに対する保険はおまけのようなものですよ。人をケガさせてしまった場合の賠償が一番気になります』という方も少なくありません」
「当社での取り扱いではないのですが、打球をほかの人に当ててしまい、その治療が長引いたり重症化したりするケースもあったと聞いています。ただ、(記事に記載した)これらの事故は、あくまで例示であり、保険金が請求可能であることをお約束することではありません。実際の保険金請求にあたっては、(個々のゴルファーが)ご加入の保険会社または代理店に相談ください」と、下道さんは注意を呼びかけます。
インターネットで簡易に保険手続きをするのに慣れてしまった人も多いでしょうが、ゴルファーが気づいていない、知らないことまで教えてくれる“保険のプロ”が近くにいてくれたら心強いですね。
“オフのうちに”ぜひ一度、代理店でゴルフ保険の話を聞いてみてはいかがでしょうか。
野上雅子