3月2日に開幕する国内女子ゴルフツアー。トップ選手の熾烈な争いも見所ですが、シード権を持たない選手たちの下剋上も面白いポイントです。そこで、解説などでよく耳にする「リランキング」について分かりやすく解説しました。
シードのない選手はコンスタントに成績を残す必要がある
3月2日にいよいよ開幕するJLPGAツアー。テレビやネットで試合に関する情報を見聞きする時、頻繁に出てくる『リランキング』という言葉があります。単純に言葉通り、ランキングをつけ直す、ということで間違ってはいないのですが、その詳細を改めてチェックしてみましょう。
リランキングを知る前に、わかっておく必要があるのがQT(クォリファイング・トーナメント)についてです。シード選手以外がJLPGAツアー、下部のステップアップツアーの出場順位を決める競技がQTです。
以前は広く門戸を開放していましたが。現在はプロテストに合格した会員しか受けることができなくなっています。毎年11月下旬から2週連続で行われ、上位に入れば翌シーズンの第1回リランキングまで試合に出場できます。

ここで登場するのが「リランキング」です。以前はQTで上位に入れば1年間出場できた時代もありました。しかし、2018年に導入されたリランキング制度によって、のんびりはしていられなくなりました。
シード選手と当該年度優勝者以外のTP(トーナメントプレーヤー)登録者は、出場した試合で稼いだメルセデスランキングのポイントによって順位がつけられます。上位に入ればポイント配分が高いのは言うまでもありません。そして、予選落ちすればポイントはゼロ。調子が悪いと厳しい状態に陥ります。
2023年の場合はニチレイレディス(6月16〜18日)終了後に第1回、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン(9月22〜24日)終了後に第2回のリランキングが行われます。いずれも、リランキングの翌週から新しい順位を基準に出場選手が決定します。QTランキングで上位にいても、いい結果を残せないままに第1回リランキングを迎えてしまえば順位は下がり、出られる試合は減ることになります。第2回リランキングも同様です。
QTの結果がよくても、リランキングで上位に来なければ試合に出られない
昨年の例でいえば、QTランキング1位でシーズンを迎えた下川めぐみ選手は、開幕からの8試合中7試合で予選落ちする苦しいスタートを余儀なくされました。第1回リランキングまでに34.04ポイントしか獲得することができず、その後の順位は60位まで落ちてしまいます。
そのため、リランキング後に出場できる試合は激減。第2回リランキングでは59位と1つ順位を上げましたが、結局年間を通した試合数は22試合。第1回リランキング後はわずか4試合しか出られず、メルセデスランキング116位に終わっています。

対照的に下剋上を果たしたのが金田久美子選手です。QTランキング87位と序盤戦の出場は苦しい順位でしたが、主催者推薦などで8試合に出場。トップ10入り2回などでポイントを稼ぎ、第1回リランキングで18位となり、その後の出場を勝ち取ります。
第2回リランキングでは25位まで後退しますが、それでも出場を続けることができ、終盤の樋口久子・三菱電機レディスでの11年ぶり優勝にこぎつけたのです。
主催者推薦で試合に出場した場合のポイントも、同様に加算されます。この部分は、実力だけでなく人気やコネクションが必要になりますが、とにかく結果を出すことが試合出場につながっていきます。
第1回リランキングまでに結果を出さなくてはいけない選手たちは、開幕戦から全力疾走を余儀なくされます。それまでの16試合に、その後のシーズンがかかってるからです。
リランキング制度導入によって、シーズン途中の”下克上“も可能になった反面、よりコンスタントな結果を求められるようになった選手たち。今年も、シード獲得をかけた熾烈な戦いが始まります。
小川淳子(ゴルフジャーナリスト)