いよいよ開幕した2023年国内女子ツアー。華やかなこの舞台に立てるのは、女子プロゴルファーの中でも一握りのエリートだけです。そんなレギュラーツアーを目指し、若手からベテランまでしのぎを削るのが下部にあたる「ステップ・アップ・ツアー」。一体どんなツアーなのでしょうか?

今季は過去最高の21試合を開催予定

 ダイキンオーキッドで華やかに開幕した女子ツアー。これに遅れること2週間、3月16日に開幕するのが、レギュラーツアーの舞台を目指す選手たちの戦い「ステップ・アップ・ツアー」です。

「JLPGAツアーに出場資格を持たない選手お呼び新人を対象に、試合経験を積ませることによる育成・レベルアップを目的とし、1991年から始まったトーナメントです」と、JLPGAのオフィシャルウェブサイトにある下部ツアーのステップ・アップ・ツアー。その実態や、出場資格などを詳しく見て行きましょう。

 2022年は17試合が行われ、そのうち5試合で優勝した櫻井心那(さくらい・ここな)が賞金女王となっています。2023年はこれに4試合がプラスされ計21試合が行われる予定です。

昨年5勝を挙げ、2511万4100円で賞金女王に輝いた櫻井心那 写真:Getty Images
昨年5勝を挙げ、2511万4100円で賞金女王に輝いた櫻井心那 写真:Getty Images

 大王海運レディスオープン(3月16〜18日、愛媛県・エリエールGC松山)、あおもりレディスオープン(7月12〜14日、青森県・青森CC)とサロンパスレディスオープン(10月20〜22日、コース未定)の3試合が新規大会。ルートインカップ 上田丸子グランヴィリオレディース(6月8〜10日、長野・上田丸子グランヴィリオGC)は開催再開試合です。

 ツアー初年度の1991年にはたった2試合しかなかったのですが、試合は増減を繰り返し、2016年に18試合になったあたりからは安定した試合数を誇っています。

 2018年には過去最高の21試合になりました(悪天候で2試合が競技不成立)。翌2019年は20試合、コロナ禍の2020年は中止が相次ぎましたが、それでも日程変更などをして8試合が行われています。そして今年は過去最多だった2018年と同じ試合数になっています。

 当初は2日間競技が主流でしたが、徐々に3日間競技を増やし、2017年からは、ロレックス(女子世界)ランキングの対象ツアーにもなっています。

 ステップ・アップ・ツアーの出場資格は以下のとおりです。1.ステップ・アップ・ツアー優勝者(臨時登録者を除く。優勝した翌日から翌年度の最終戦まで)2.前年度プロテスト合格者3.前年度メルセデスランキング51位から55位の者4.前年度ステップ・アップ・ツアー賞金ランキング2位までの者5.QTランキングリスト上位者 レギュラーツアーにも出場資格があれば、ほとんどの場合はそちらを優先します。

賞金ランキング上位者には様々なチャンスがある

 ステップ・アップ・ツアーで賞金ランキング2位までに入れば、翌シーズンの第1回リランキングまで、レギュラーツアーに出場することができます。前述の櫻井、2位の宮澤美咲(みやざわ・みさき)がそれにあたります。

 各大会の優勝者及び賞金ランキング3位から10位の選手には、QTファイナルステージの出場資格ももらえます。

「山陰ご縁むす美レディース」優勝から瞬く間にスターダムにのし上がった川崎春花 写真:Getty Images
「山陰ご縁むす美レディース」優勝から瞬く間にスターダムにのし上がった川崎春花 写真:Getty Images

 プロテストに合格してすぐにQT上位には入れれば、レギュラーツアーで戦うことができます。序盤戦でいい結果を出せれば、リランキング後も生き残れます。たとえQTの結果が悪くても、ステップ・アップ・ツアーには出場できるので、その名のとおりステップアップを目指す選手も少なくありません。

 新人以外の選手も、QTの順位が微妙な場合、レギュラーツアーとステップ・アップ・ツアーを行ったり来たりすることも珍しくありません。ステップアップというよりも、復活のための場所、という様相を呈す試合もあるほどです。

 4日間大会がどんどん増えるレギュラーツアーに比べ、2日間、3日間で成立するステップ・アップ・ツアーは、開催費用が少ないことからスポンサーにも人気があります。

 レギュラーツアーのスケジュールがびっしりだから、という理由だけでなく、開催費用の関係からステップ・アップ・ツアーの開催を選択するスポンサーもいます。

 さらに、全試合が有料のCS放送ではありますが「スカイA」で見ることができます。プロになったばかりの選手が、いきなり活躍するケースも多い昨今、ステップ・アップ・ツアーの結果も気にかけておくと“推し”が早い時期に見つかるかもしれません。

小川淳子(ゴルフジャーナリスト)