体の使い方をいかに言語化するかは、ティーチングプロの技量が試される部分で、生徒側も相応の言語能力なしには指導を活かせません。帝人フロンティアの「マトウスゴルフ」は、このあたりを実に手軽に「見える化」してくれるツールです。
スイングを可視化することでレッスンの質がグンと上がる
ゴルフの効率的な上達をサポートするレッスンツールとして、帝人フロンティア(大阪市北区)の展開する「マトウスゴルフ」が注目を集めています。
「マトウスゴルフ」は、帝人フロンティアが「ウェアラブルソリューション」を謳う、高機能繊維とセンシング技術を組み合わせたスマート衣料「マトウス」の、ゴルフレッスンに照準を合わせた商品です。
簡単に説明すると、モーションセンシングの技術を活用して、スイング時の上体の動きを計測し、肩の回転量や前傾角度などを客観的な数値として見せてくれる、というものになります。専用アプリにより、タブレットなどの画面にアバターを表示し、数値を具体的な動きとして再現することも可能です。

これまでゴルフに限らず、スポーツの指導では、体の動きをいかに言語化できるかがポイントでした。コーチは生徒の動きを分析し、正しい動きに導くために言葉の表現を工夫してきましたが、言葉を介する以上、どうしても生徒によって受け取り方に違いが出てきます。結果、上達スピードに個人差が出てしまっていたのです。
「マトウスゴルフ」はこういった、スポーツ指導の現場が長年抱えていたジレンマを解決するために開発されました。これまで感覚的な表現をするしかなかった体幹の動きなどが、明確に数値としてチェックできますので、レッスンの内容が一気に具体化されます。
例えばバックスイングからトップにかけての肩の回転について指導する際、従来なら「もっと、しっかり回そう」と曖昧な表現しかできなかったようなところを、「マトウスゴルフ」を活用することで、「あと20度肩が回れば、理想的なトップになります」と具体的なアドバイスをすることが可能になります。

体の動きを可視化する機器は、これまでにもありました。しかし、大がかりな機器で計測に手間がかかったり、多大なコストがかかったりと、アマチュアゴルファーが導入するにはハードルの高いものになっていました。
一方で「マトウスゴルフ」は、モーションセンサーを搭載した専用のベストとリストバンドを着用するだけで手軽にスイング計測をすることができます。この手軽さは「マトウスゴルフ」の大きな特徴になっていて、時間の限られたゴルフレッスンの現場でも活用しやすくなっています。

では、その効果とは、どれほどのものなのでしょう。今回は、「マトウスゴルフ」を導入しているスタジオにてレッスンを受けてきました。スイングを「見える化」することで、どのような違いが出るのかを、実体験を交えながら解説していきます。
スイング計測で原因と課題が明確になり上達効率が高くなる
今回、取材したのは、東京都虎ノ門にあるヒルズゴルフアカデミーです。「インドア練習施設での技術向上に何が必要か」を常に考え、さまざまな最先端機器をレッスンに活用しているスタジオで、所属プロがマンツーマンで行う丁寧なレッスンには定評があります。
指導陣のひとりである江尻公光プロは、「マトウスゴルフ」について以下のように話します。

「基本的には、レッスンの最初と最後に『マトウスゴルフ』でスイング計測を行っています。体の動きとしてどんな問題点があり、どのように改善すべきなのかをしっかり理由づけて説明できますので、すごく納得していただいた上でレッスンを受けてもらえています。
教える側としても、指導すべきポイントが明確になることが大きなメリットですね。手軽に使うことができますし、効率的な上達をサポートするレッスンを行う上で欠かせないツールになっています」
実際、「何が原因でミスが出ているのか全然分からない」というスイングに悩むe!golf編集部員が、江尻プロによる「マトウスゴルフ」を活用したレッスンを受けてみたところ、さまざまな面で衝撃を受け「問題点が明確になりました」といいます。
「アドレスの前傾姿勢であったり、左右のバランスの悪さであったりといった点を指摘されましたが、自分で練習している時は全く気にかけていなかったポイントなので、驚きました。タブレットの画面に表示されたアバターを見ると、確かに左右アンバランスな姿勢を取っていましたし、江尻プロにそれを直してもらったら、明らかに振りやすくなって、飛距離も伸びました。
理由が数字で見えることで納得感を持ってレッスンを受けられますし、効果もすぐに出てくれます。上達を考えたら、活用しない手はないですね」

この日のレッスンは、基本的に「マトウスゴルフ」を着用したまま行いました。センサーを搭載したベストを着続けるのはストレスになりそうなものですが、「マトウスゴルフ」はその点でも問題ないようです。
「計測のためにかなりピッタリしたサイズのベストを着用しましたが、スイングしていて不快感は全くなく、着ていることを忘れるほどでした。『マトウスゴルフ』を着用したままレッスンを受けることで、問題となる数値の変化がすぐに目で見て、確認できます。その意味で、ストレスなく着続けられるベストの性能の高さも大きなメリットですよね」(e!golf編集部員)

「マトウスゴルフ」を展開する帝人フロンティアは、そもそもが繊維を取り扱う会社です。モーションセンシング技術の高さだけでなく、ウェアの性能にも妥協せず開発を行っているようです。
また江尻プロは、「自分のスイングを知ることで、理想値というか、目指すべきゴールが明確になることも『マトウスゴルフ』のメリットです」といい、次のように続けます。
「人それぞれ体型や柔軟性が違うので、目指すべき肩の回転量も、理想的な前傾角度も異なってきます。レッスンの最初に『マトウスゴルフ』でしっかりスイングの測定をすることにより、現状を知るとともに、目指すべきゴールも見えますから、コーチとしてそれをしっかり説明した上で、レッスンを行うようにしています。ゴールを知ることでモチベーションも保ちやすくなりますし、効率的に上達しながら、よりゴルフを楽しむことができます」
「マトウスゴルフ」を使った計測自体はスタジオでしかできませんが、専用アプリを利用すれば、スタジオから提供された計測データをいつでも手元でチェックできるようになります。時系列でスイングデータを確認すれば、問題点がどれだけ改善され、レッスンごとにどれほど変化しているかも見えますから、練習を続ける意欲も増してくるはずです。

このように、レッスンは最先端機器の導入によって、より効率的に上達できるものへと日々、進化しています。「マトウスゴルフ」が導入されているスタジオは公式HPからチェックできますので、気になった方は、ぜひレッスンを受けに行ってみてはいかがでしょうか。
撮影協力ヒルズゴルフアカデミー(東京都港区虎ノ門)TEL 03-6450-1940
田辺直喜