「腕を積極的に振る」と「体の動きを主体にして振る」、スイングは主にこのふたつのタイプに分かれます。そのせいかどちらのタイプを身につけたらいいの? と迷っているゴルファーがたくさんいます。果たしてどちらがいいのでしょうか。

常識と王道、どちらを身につけるべきなのか

 1992年に「アスレチックスイング」というスイング理論書が発行されると「ボディーターン」という言葉が瞬く間にゴルファーに浸透。そして「スイング=ボディーターン」がある意味ゴルファーの常識になりました。

 ボディーターンスイングは簡単にいうと腕や手の動きをできるだけ抑えて、体の動きを主体にしてクラブを振りましょうということです。

アマチュアを常に悩ます「ボディーターン」と「アームスイング」 写真:Getty Images
アマチュアを常に悩ます「ボディーターン」と「アームスイング」 写真:Getty Images

 なぜカラダ主体なのかというと、腕や手はとても器用なのでゴルファーの意に反して動きすぎてしまう傾向があり、そのことでミスが生じるからです。しかしカラダを主体にして振れば、腕や手の動きすぎが抑えられ、再現性の高いスイングが身につきます。

 これに異を唱える人はまずいないでしょう。いまとなっては、それほどこの考え方は普遍的といえます。

 その一方でゴルフスイングの基本といえる「アームスイング」を実践し、結果を残しているゴルファーもたくさんいます。積極的に腕を振ってアームローテーションを発生させ、しっかりとボールをつかまえる。これこそがゴルフスイングだと思わざるを得ない王道といえる振り方です。

 ダブルスタンダートともいえるふたつのスイング理論があることで、どちらが自分に合っているのか、どちらを習得するべきなのか、少なからずアマチュアゴルファーは迷っています。

 そこでふたつの理論に精通した東京ゴルフスタジオのコーチ、真弓伸仁プロに話を聞きました。

安定したボールコンタクトができていれば腕でも体でも問題なし

「クラブが正しく動いて、安定したボールコンタクトができているのであれば、腕を積極的に振るアームスイング、体の動きを主体にして振るボディーターン、どちらでもOKです。プレーヤーが自分にとって合っていると感じている振り方でまったくかまいません」

「ただし、ボールコンタクトがうまくできていない人が下半身リードや地面反力などを使い、両肩とグリップで作られる三角形を崩さない体の回転を主体にしたスイングをすると、ダウンスイング時のクラブの軌道がとても不安定になります。ボールコンタクトが悪くなって、最後にはスイングが崩壊してしまう可能性もあります」

「なぜかというと、意識が体を動かすことばかりになると、クラブの動きをコントロールする意識が不足してしまうためダウンスイング時のクラブの軌道が安定しなくなるのです」

「また体への意識が強い人は、体を動かすための出力がとても大きくなります。そのためクラブが動くことで発生する遠心力とのバランスが崩れてしまい、うまくボールコンタクトができなくなる人が多いのです。そのような人はカラダの動きを抑えて、腕を振ることを主体にしてみると、ボールコンタクトがよくなります」

「練習場のマットだとダフってもヘッドが滑るため分かりづらいのですが、タテの距離がそろっていればある程度ボールコンタクトができていると考えてもいいでしょう。最近は弾道計測機器が備わった練習場も増えたので、タテの距離がそろっているかどうかをチェックしてみましょう」

遠心力を意識した連続素振りで軌道を安定させる

「ダウンスイング時のクラブの軌道を安定させるには連続素振りが効果的です。練習場のゴムティーを往復で打つ連続素振りをしてください。空振りせずに、行きも帰りもゴムティーが打てたら安定した軌道になっている証拠です」

「連続素振りをするとき、ゴムティーに確実に当てたいからと振るスピードセーブして、軌道をなぞるようにする人がいますが、これはNG。しっかりとクラブを振って遠心力を発生させてください。そして遠心力が発生したほうが、軌道が安定することを実感してください。ここはとても大切なポイントで、実際にボールを打つときも遠心力が発生するように振ることで軌道が安定し、よいショットにつながっていくのです」

練習場のマットを利用してボールコンタクトをチェックすれば「腕」と「体」の答えが見つかる!? 写真:AC
練習場のマットを利用してボールコンタクトをチェックすれば「腕」と「体」の答えが見つかる!? 写真:AC

「最後に、最下点の手前でボールコンタクトできているかをチェックする必要があります。素振りでかまいません。ボールの位置よりも少し先に目印(テープ等を貼ってもOK)を付けて、その目印をヘッドが擦るように素振りをしてください。これができれば最下点の手前でコンタクトできていることになります」

「練習場でマットを強く擦るようにして素振りをしている人を多く見かけますが、ボールの先のマットを擦るようにしないと意味がありません。ボール位置を擦るように素振りをするとダフりグセがつくだけなので注意してください」

 腕で振るか、体で振るか。迷っているのなら、自分のボールコンタクトをチェックしてみましょう。その結果によって習得すべきスイングの方向性がみえてくるはずです。

宮川岳也