オフシーズンでも人気のゴルフ場は平日から混雑しています。当然コースにはベテランからビギナーまで様々なキャリアのゴルファー達がプレーしています。コースが渋滞すると、知らない前後の組が近くに来ることになりますが、知っておきたい「最低限のマナー」とは何か? 筒コーチに聞きました。

渋滞時は「知らない組」のゴルファーと嫌でも近くになる

 仲間内でゴルフを楽しみたいと思っていても、コースには「知らない人の組」が前後にいます。ゴルフにはルールやマナーに関する決まりたくさんあり、堅苦しく感じることもありますが、他人を不愉快な気持ちにさせたくてプレーしているゴルファーはいません。

 ただ、知らないうちに他人を不愉快な気持ちにさせてしまうのは、初心者に限らず「知らない」、「何が正しいのか分からない」ことが原因ではないでしょうか。

 ゴルフ場にはフロントからトイレ、風呂場にいたるまで数え切れないほどの「マナーに関する注意」が貼られています。しかし、なぜか「コース渋滞時にどうすればいいのか」など、ゴルファーがコース内で直面することに対する張り紙は少ない気がします。

コース内の渋滞時には前後どちらの組にも近づいてしまいますが、「知らない組」へのゴルファーに対する気遣いやマナーが難しいと感じているゴルファーも多い
コース内の渋滞時には前後どちらの組にも近づいてしまいますが、「知らない組」へのゴルファーに対する気遣いやマナーが難しいと感じているゴルファーも多い

 例えば、わざと「前の組に打ち込んでやろう」なんて思っている人は滅多にいません。カートナビの表示を見て、「前カートまで十分が離れた」と思って打ってみたら、実はカートのはるか手前に人がいて、結果として「打ち込みトラブル」になっていたりします。

 打ち込まれたゴルファーも決して悪気があったわけではなく、「遅れないようにカートを先に進ませなきゃ」と思ったら、ボールが手前にあったので「停めたカートから戻って打っただけ」だったのかも知れません。

 こんなトラブルは混雑しているコースを中心に、ドッグレッグした「ブラインドホール」などで起きやすくなっています。注意していなかったのはなく、「注意するコツ」を間違っただけで、誰が悪いということもありません。

打つ時の「たった2〜3秒」だけ静かにすれば不愉快には感じない

 ショット時のスイング撮影に慣れている僕でも、普段のラウンド時に突然近くで知らない人の話し声がすればビックリします。一度でも自分が「被害者になったことがある」人なら、他の人に同じような不快感を味わせたくないと思えます。しかし、知らないうちに加害者になっている場合も多いのです。

 しかも、「知らない組」に対してならなおさらです。「後ろの組はサイテー!」と嫌な気持ちでラウンドを続けているかも知れません。しかも、仮に注意したところで「あの人マナーにうるさ過ぎない?」と思われるのがオチでしょう。当事者に悪気がないのですから。

ゴルフ場では離れたつもりでも話し声などの音が通りやすいので、せめて打つ時の「2〜3秒」だけでも静かにしてみては?
ゴルフ場では離れたつもりでも話し声などの音が通りやすいので、せめて打つ時の「2〜3秒」だけでも静かにしてみては?

 せめて、スタートホールや渋滞時には「無意識の加害者」にならないために、前組のカートと距離が離れていてもショットの前後は物音をたてずにいましょう。「そこまでやらなきゃいけないの?」という疑問があっても、打つ時の2〜3秒くらいは静かにできるはずです。

 前組が4人だったとして、約10秒だけ静かにすればよいだけなので、それは「マナー」以前の問題ではないでしょうか。

「安全のため」の距離感と「圧迫感を与えない」ための距離は違う

 初めてのコースに行った時ほど、渋滞時に前後組との距離感が難しいと感じるゴルファーは多いのではないでしょうか?

 あまり前組に詰め過ぎて「まるで煽(あお)ってる」ような印象を与えるのも嫌ですし、距離を取り過ぎて「後ろが困る」のも安全面で適切でない場合があります。

初めてのゴルフ場ほど前後の組との「安全のため」と「圧迫感を与えない」距離感を保つのは難しい
初めてのゴルフ場ほど前後の組との「安全のため」と「圧迫感を与えない」距離感を保つのは難しい

「渋滞させるコースが悪い」という元も子もない話は置いておいて、ゴルフ場側には「このホールは具体的にどうするのがよいのか?」をカート内の案内で教えてくれるとうれしいです。

 わざわざ知らないゴルファーに対してクレームなんか言いたくないと思っている人がほとんどです。かといって「マナー違反者」に何も伝えてあげないのも、実は彼らにとってマイナスになります。まわりに「教えてくれる人がいないだけ」なのですから。

 グリーン先にフェンスがあれば「安全性優先でココに待機でいいのかな?」や、「マナー面とのバランスで考えたら後ろにいたら逆に迷惑」など対処できますが、ベテランゴルファーだって初めてのゴルフ場では「正解が分からない」場合がたくさんあります。

 状況によってマナーに対する明確な答えは変わりますが、何度か自分が被害を経験し「他の人には嫌な思いはさせたくない」と考えれば、自ずと最適なカート位置が分かってくると思います。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン 「FITTING」編集長を務める。

猿場トール