ウェッジのダフリやトップは、うまいヘタに関わらずコースでは誰にでも起こりうるミスです。なぜウェッジは難しいのか? その理由はクラブの構造や使用する状況にあるそうです。ウェッジが難しい理由を少しでも知っておくことで、ミスを少なくできるなら知っておいて損はないはずです。
ウェッジはロフトが増えるほど深重心だった
ウェッジのスイートスポット(SS)はモデルによって細かな違いこそありますが、基本的にロフトが増えるほどリーディングエッジ(刃)より後方になります。

写真はロフト58度ウェッジですが、ボールに「当てるだけ」ではスイートスポットでボールを打ち抜くインパクトにはなりません。構えた所から見ると「フェースの真ん中あたりの高さ」に見えるかも知れませんが、ウェッジのスイートスポットはボールの半径ぐらいの高さにあるモデルが多く、クラブの構造上「深&低重心」ヘッドになります。
フェースの高さの割に、スイートスポットはダフリやすい位置になっているのは事実です。だからこそ、特にロフトが大きいウェッジでアプローチする場合は「ダフらないように」しながら、「しっかりボールを打ち抜く」技術が求められます。
ウェッジのソールは勝手に滑らない! クラブに合わせたインパクトが必要
グリーン周りのアプローチでは「ソールを滑らせるように打つと簡単」といいますが、その感覚がない人にとっては「ソールが勝手に滑らない」と考えた方がいいかも知れません。人気ウェッジのソールは、バンスが多くても少なくてもインパクト時の抜けをよくするための様々な工夫が施されています。

ウェッジのソールが真っ平らでなければ、インパクト時に邪魔な部分を削ってある「多面ソール」になっています。バンスが少しでもあればソールが平面だったとしても実際のインパクトではソールの前後どちらかが傾くように通過しなければいけません。
ウェッジのソールは「水面に船が浮かんでいる状態」というよりは、ボートレースのように最小接地でインパクトすることで性能を発揮するように作られています。うまくウェッジを使いこなしているゴルファーの「滑らせる」は、ソールのある一点を指していることだと考えて下さい。
「ダウンブローに打つ」だけでは上がらないし寄らない
ウェッジでのアプローチが特に難しい理由は、コース状況に合わせて「振り幅」だけでなくインパクト時の「ロフト」もコントロールしなければいけないところにあります。
毎回異なる距離に加えて、フェアウェイとラフでは飛び具合も変わりますし、打ちたい高さやスピンも変わります。58度ウェッジを使ったからといって、毎回フワっとボールが上がらないのはトップだけが原因ではありません。

ソールの滑らせ方で「ロフト」が立ってしまえば、ボールは低く強くなり振り幅以上に飛びすぎることもあります。逆に、低く打とうとしてボールを右に置いても、インパクト時にソール後方が接地してロフトが増えるインパクトになってしまえば、ボールは高く上がってしまいます。
ソールは「勝手に滑る」と考えるより、インパクト時にヘッドとソールがどんな状態で「通過するか?」を想像したほうが、ウェッジの性能を引き出しやすくなると思います。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。
猿場トール