大会2日目を首位と6打差の42位タイでスタートした小祝さくらが、5バーディー、1ボギーの68をマーク。通算イーブンパーまでスコアを伸ばし、一気に2位タイにまで順位を上げた。首位とはまだ4打差あるものの、自身初のメジャー制覇に大きく近づいて決勝ラウンドを迎える。

フォローではマイナス20ヤード計算でピンを狙った

◆国内女子プロゴルフ<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 5月4〜7日 茨城ゴルフ倶楽部 西コース(茨城県) 6780ヤード・パー72>

「風が強くて大変な1日でした」と語ったものの、小祝さくらの表情は笑顔に満ちていた。それもそのはず、多くの選手が風の強さに苦しんだ午後スタートながら5バーディ、1ボギーの68で回り、4打差2位タイまで順位を上げたのだ。

この日4アンダーのスコアで2位タイに浮上した小祝さくら 写真:Getty Images
この日4アンダーのスコアで2位タイに浮上した小祝さくら 写真:Getty Images

「実は昨日、ホールアウト後の練習で思い出したことがあるんです。コーチからテークバックの際、インサイドにクラブを引いてしまうことに気をつけるように言われてたんです」

 練習ではボールと目標を結んだラインに対してクラブを真っすぐ引き、トップではレイドオフ(クラブヘッドが目標の左を指した状態)になることを意識していたはずなのに、初日をスタートするときにはすっかり忘れていたという。

「明日はしっかりやろうと思い、今日実践したらショットの調子がよくなりました」

 なんとも小祝らしいエピソードだが、今大会には珍しく気合を入れて臨んでいた。というのも、今季は9戦して4度も予選落ちを喫しているのだ。3位タイが2回あるとはいえ、過去4シーズンにわたって賞金ランキングの上位をキープしてきた小祝らしくない。

「ここ最近、いいゴルフをできていなかったこともあり、自信がない感じでしたが、今週は自信を持ってしっかりプレーしようと。アドレスに入る前にしっかり集中したことで、今日は自信を持ってプレーできたかなと思います」

 そんな小祝を後押ししたのが、得意のバンカーショットだ。2番パー4でグリーン奥のバンカーからカップインさせて、この日初バーディーを奪う。簡単には寄らない状況だったが、小祝の考えは違った。「ピンまで15ヤードぐらいありましたが、グリーンが受けていましたし、ライも左足上がりだったのでうまく止められるかなと思って打ちました」と振り返る。

 聞けば、開催コースの茨城GCのバンカーは砂質がよく、ライさえ良ければいいイメージで打てるのだという。最高の形でピンチを乗り越えたことで、前半に計4つのバーディーを奪えたことは大きい。

 それでも、さすがに最大瞬間風速13.9m/sの風に手を焼く場面もあった。ドライバーショットでアゲンストのときは、ティーを低くしたり、クラブヘッドを少し浮かせて構えることでフェースの下部に当てて低い球を打つことで対応したが、さすがにアイアンでグリーンを狙うショットでは、ピンまでの距離感を合わせるのにひと苦労。特にフォローでは実測から40ヤード引いた数字で打たなければいけないときもあり、本当にこの番手で大丈夫かという不安と戦いながら回っていた。

 厳しい状況で小祝のゴルフを支えていたのは、気持ちが弱い自分との戦いだった。何度も予選落ちを繰り返すうちに、どんどん自信を失ったが、必死で気持ちを切り替えようとした。

「調子が悪い時って、自分のダメなところに気づくことができるいいチャンスなんです。そうやってポジティブにとらえるようにしました」と、ついにポジティブの境地に達した小祝。決して器用なタイプではないが、コツコツと努力することだけは誰にも負けない自信がある。そんな小祝だからこそ、メジャーという難易度の高いコースセッティングにもしっかり立ち向かうつもりだ。

小祝 さくら(こいわい・さくら)

1998年4月15日生まれ、北海道出身。98年度生まれの“黄金世代”の一人として2017年にプロ入り。19年サマンサタバサガールズコレクション・レディースで初優勝。22年シーズンは2勝を挙げて、メルセデスランキング7位に。ニトリ所属。

山西英希