米紙ワシントン・ポストが「スポーツをする人はビールを飲む機会が多く、健康で活動的な人ほど多く飲めるという研究結果がある」と報じました。事の真偽を日本のポリフェノールの権威、お茶の水女子大学名誉教授で医学博士の近藤和雄氏にお答えいただきました。

ビールにも“ポリフェノール”成分がしっかり含まれている

 ハーフターンの昼食時やラウンド後は、「やっぱりビールが最高ですね!」というゴルファーが多いことと思います。

 汗をかいて飲むビールのおいしさは世界共通のようで、先日、米紙ワシントン・ポストによると「スポーツをする人はビールを飲む機会が多く、健康で活動的な人ほど多く飲めるという研究結果がある」といいます(クーリエジャポンの翻訳より抜粋)。

ノンアルコールビールはビールから悪い部分を取り除いたものといえそう 写真:AC
ノンアルコールビールはビールから悪い部分を取り除いたものといえそう 写真:AC

 さらに同記事には、「スポーツのプレー後に飲むビールをノンアルコールビールにすると、疲労回復や健康増進効果の高まりを期待できる」とも。その理由として、「ビールにもノンアルコールビールにも、健康によい“ポリフェノール”成分が含まれている」とし、「しかもアルコールを含まないノンアルコールビールなら、筋肉に対する影響がない」というのです。

 ゴルフをした時も、ビールよりノンアルコールビールを飲んだほうが健康に良いのでしょうか? ひょっとして、スコアにもよい影響があるのでしょうか?

 そうしたゴルファーの素朴な疑問について、お茶の水女子大学名誉教授で医学博士の近藤和雄氏にお答えいただきました。近藤氏は日本ポリフェノール学会理事をつとめ、「ポリフェノールの効能」に関する多くの研究結果をもとにテレビや雑誌、講演会などを通じて発信をしています。

 まず、“ポリフェノール”といえば、一般に赤ワインが思い浮かびます。「過度な肉食や乳脂肪の摂りすぎは体によくないが、赤ワインの消費量が多いフランスでは、他の欧米諸国より動脈硬化や心臓病の患者が少ない」という“フレンチパラドックス”もあります。その“ポリフェノール”がビールにも含まれているとは意外です。

「ビールにポリフェノールが含まれていることは1996年に発表していますよ。ビールやノンアルコールビールの原料である麦芽とホップに、イソフムロンというポリフェノールが含まれているのです。ポリフェノールとは、植物が持っている渋みや苦みの成分です。お茶のカテキン、コーヒーのクロロゲン酸、ブルーベリーのアントシアニンなどがよく知られていますが、そのほか8000以上もの種類があるといわれています」(近藤氏)

 25年以上も前から、多くの人が無意識で飲んでいるビールにも“ポリフェノール”成分がしっかり含まれていることが分かっていたのです。

 ところで、“ポリフェノール”は、健康にどのように良い効果をもたらすのでしょうか。

「“抗酸化作用”というのを聞いたことがあると思います。少し専門的な話をすると、人の体にはLDLと呼ばれている、いわゆる“悪玉コレステロール”の元が存在しています。これが血管で、酸化・変性すると“本当の悪玉”になって動脈硬化を起こすのですが、ポリフェノールには、ここを抑える働きがある。LDLの酸化・変性を抑える“抗酸化作用”があるのです」(近藤氏)

 LDLが“本当の悪玉”コレステロールになるのを抑えることによって、動脈硬化の進行を防いでくれるわけですから、中高年にとって“ポリフェノール”は積極的に摂取すべき成分といえるのです。ビールに含まれていると知って得をした気分になります。

ノンアルビールはナトリウムとカリウムのバランスがとれて熱中症予防に有効

 ですが、冒頭ご紹介したように、米紙では「(ビールより)ノンアルコールビールの方が、ポリフェノールの有益な効果が弱まることがなく、疲労回復や健康効果の高まりを期待できる」と報じています。一般ゴルファーはどちらを飲んだらいいのでしょうか。

「ビールやノンアルコールビールに含まれているポリフェノールは、体内ではLDLに対する抗酸化作用が少ないものの、ポリフェノールを摂ることはできます。ただ、ビールにはアルコールも含まれているため、体がだるくなる、反応が鈍くなる、など体の変化が起こりやすくなります。個人差はありますが、ゴルフプレーへの影響はあるでしょう」

 ノンアルコールビールについてはどうでしょう?

「おいしく飲めればよいというのが一つ。もう一つは、ノンアルコールビールは、ビールからアルコールとアルコールが引き起こす“悪さ”を除いたものと考えられます。例えばフランスでは、子供の風邪のひきはじめに赤ワインを沸騰させて飲ませることがよくあります。アルコールを飛ばすことで“悪さ”を取り除き、ポリフェノールが持つ抗炎症作用の一つによって風邪の悪化を防ぐためです。つまり、アルコールを飛ばしたり抜いたりしても、ポリフェノール効果は落ちないという利点があるのです。また、ノンアルコールビールは水分補給に役に立ちます。ナトリウムとカリウムのバランスがとれて熱中症予防にも有効といえます」

 そう近藤氏は太鼓判を押します。

 昼食時のビールは格別ですが、後半のハーフで急にトイレに行きたくなって慌てたり、ショットがボロボロになったりして後悔するようでは、せっかくのおいしさも半減してしまいます。ゴルフ場ではノンアルコールビールで健康的に“ポリフェノール”と水分を摂り、自宅に帰ってからビールでくつろぐスタイルはいかがでしょうか。それならゴルフもビールも存分に楽しめそうです。

野上雅子