決して力があるわけではないのに、飛距離もスイングも素晴らしい女子プロ。一般男性ゴルファーに近いヘッドスピードということもあり「マネするべき」という意見や、逆に「体の軟らかさが違うからマネしちゃダメ!」という声もあります。女子プロたちのスイングをアマチュアは参考にするべきでしょうか。
女子プロは「ほぼバックティー」でスコアメイクする達人
一般アマチュアと比較的ヘッドスピードが近しいという理由から、女子プロたちのスイングやプレー、使用ギアなど「マネするべき」という意見は常に存在します。
反して、年齢的にも身体的にも全く異なるという理由から、「スイングを参考にしても無理がある」という意見もあります。近年、女子ツアーの距離は長くなってきていて、一般アマチュアの「ほぼバックティー」ぐらいになっています。そんなセッティングで女子プロたちは「スコアメイクの達人」といえるような素晴らしいプレーを展開しているのです。

実際には、「女子プロ」と一括りにしては失礼なほど、個々のプレースタイルは異なります。例えば、青木瀬令奈プロのように卓越したショットの精度と突出したショートゲームで優勝を毎年重ねる選手もいれば、大きな飛距離を武器にショット力の高さでバーディーチャンスをものにする穴井詩プロのような選手もいます。
一般男性ゴルファーが、まず女子プロたちから学ぶべきポイントは、非常に高いショットの方向性です。トップクラスになると、70%を超えるパーオン率は驚異の数字。
「やっぱりスイングがすごい」となると思いますが、個々の選手で「形(フォーム)」や「テンポ」、「リズム」の違いはあるものの、どの番手でどんな状況でも「いつも一定している」という一点は共通しています。
彼女たちは「達人」なのでそれをマネするのが難しいのですが、どの番手でも「似たリズムやテンポ、力感」を意識することは、アマチュアゴルファーでも「お手本にすべき」ポイントの一つになると思います。
女子プロのクラブセッティングやシャフトスペックも参考になる
アマチュアゴルファーと同様に、女子プロたちもヘッドスピードの速い選手もいればそうでもない選手もいます。もし彼女たちのクラブを参考にするなら、自分と飛距離が近しい選手を見つけ番手やモデルの構成をチェックしてみるといいと思います。

中にはフェアウェイウッドやユーティリティーの本数が多い選手もいますが、距離の長いトーナメントコースを攻略するにはシビアで細やかな番手構成が必要になるのです。
女子プロの高い精度を誇るドライバーショットをマネることは無理ですが、セカンドショットでグリーンを狙うクラブのシャフトの種類や硬さは参考になるはずです。近年はカーボン・スチール共にアイアン用軽量シャフトモデルが増えました。もし「好きなスイングリズムのプロ」がいるなら、アイアンシャフトをチェックしてもいいと思います。
フルスイングより効果あり!? マネるなら「アプローチ」と「パター」
よどみのないしなやかなスイングは、女子プロをマネしたくなる一番大きな要素かもしれません。
しかし、体の柔軟性やジュニア時代から培ったしなやかな動きのフルスイングをマネするのは困難。それよりも参考にすべきは「アプローチ」や「パッティング」ではないでしょうか?

めったにスリーパットしない女子プロのパッティングは、振り子運動のような左右の振り幅が近いオーソドックスなストロークが多く、一番参考にすべき要素の一つです。
またアプローチも、男子プロのように高く上げたりスピンをかけて止めるスタイルよりも、ロフトどおりの高さと振り幅どおりの距離の出し方をしている女子プロの方が参考になるはずです。
「巧い!」と思える女子プロたちのアプローチやパッティングからマネしてみると、少しずつショットのリズムやテンポ、力感も想像しやすくなります。長年直らなかった、腕力頼りのスイングから脱却できる可能性があります。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。
猿場トール