多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、米国女子ツアー「コグニザント・ファウンダーズ・カップ」の畑岡奈紗です。

畑岡奈紗のアプローチに見た技術力の高さ

 5月11〜14日のスケジュールで、米女子ツアー「コグニザント・ファウンダーズ・カップ」が開催されました。優勝したのは、トップと4打差の4位で最終日をスタートした韓国のコ・ジンヨン選手です。通算13アンダーで並んだミンジー・リー選手とのプレーオフを制し、今季2勝目、ツアー通算15勝目を挙げました。

アプローチの引き出しが多い畑岡奈紗(写真はJMイーグルLA選手権) 写真:Getty Images
アプローチの引き出しが多い畑岡奈紗(写真はJMイーグルLA選手権) 写真:Getty Images

 コ選手はメジャー優勝経験もあり、世界ランキング1位に上り詰めたこともあるトッププレーヤーですが、昨年3月の「HSBC女子世界選手権」で優勝した後は体調が万全でなかったこともあり、勝利から遠ざかっていました。そんなコ選手でしたが、今年の「HSBC女子世界選手権」で連覇を達成し、今大会でシーズン2勝目。今季は7戦中5戦でトップ10フィニッシュしています。

 今大会のコ選手はパットを外してもバーディーを決めても感情が波立たず、心がフラットでした。自信に満ち溢れたそのプレーぶりは、「強いコ・ジンヨンが帰ってきた!」と印象付けるものでした。

 さて、この大会に出場した日本勢は、畑岡奈紗選手、西村優菜選手、勝みなみ選手、笹生優花選手、野村敏京選手の5名。日本勢最上位は、通算6アンダーで8位の畑岡選手でした。彼女の技術力の高さが見られたのが、2番パー5でのアプローチです。

ヘッドが手元より前に出る「ハンドレート」で球を打つ

 グリーン奥からのウェッジでの3打目。インパクトした後にヘッドをフォロー側ではなく、バックスイング側に戻す打ち方をして、球をフワっと浮かせました。

 まるで空手チョップのようなこの打ち方をすると、インパクト直前で手元の動きが止まり、ヘッドが前に出ます。すると、ロフトが寝て、フェースが上を向き、柔らかい球を打つことができるのです。

 インパクトの正しい形は、手元がヘッドよりも前に出る「ハンドファースト」だけではありません。フワっと球を浮かせたい時やバンカーショットでは、ヘッドが手元より前にでる「ハンドレート」で球を打つインパクトが必要になります。本番でいきなり試すのは難しいかもしれないので、レンジでこの打ち方を練習しておくと、ショートゲームの引き出しを増やすことができるはずです。

畑岡 奈紗(はたおか・なさ)

1999年生まれ、茨城県出身。2016年の日本女子オープンで国内メジャー史上初のアマチュア優勝達成。その後、プロ転向して翌17年から米ツアーに参戦。同ツアーでは18年に初勝利を挙げ、22年DIOインプラントLAオープンで米ツアー通算6勝目。日本ツアーでも、17年に日本女子オープン連覇、19年に日本女子プロゴルフ選手権、日本女子オープンの国内メジャー2勝を達成するなど、ツアー通算5勝を挙げている。アビームコンサルティング所属。

石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

小澤裕介