世界中のツアーで多くの勝利を挙げているキャロウェイの「パラダイムシリーズ」。プロにのみ支給されていたツアーバージョンをごく少数の数量限定で一般販売されることが発表されました。このレア物をいち早くコースで試打したゴルフライターの鶴原弘高氏がインプレッションをお届けします。

「パラダイム ツアー」は、痒いところに手が届く“スタンダードモデルの別バージョン”

 キャロウェイの「パラダイム」シリーズには通常販売モデルとして、「パラダイム ドライバー」(スタンダード)、「パラダイム トリプルダイヤモンド ドライバー」、「パラダイム マックス ファスト ドライバー」の3モデルが展開されています。そこにCALLAWAY EXCLUSIVEだけで取り扱われる数量限定モデルとして「パラダイム ツアー ドライバー」と「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」の2つが追加発売されることになりました。

 筆者はいち早くコースでこれらのモデルを試打する機会を得たので、各モデルのファーストインプレッションをお届けします。

左から「パラダイム ツアー ドライバー」と「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」
左から「パラダイム ツアー ドライバー」と「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」

「パラダイム ツアー ドライバー」は、ヘッド最後部に移動式ウェイト(ペリメーター ウェイティング)を備えたモデル。一見するとスタンダードモデルの「パラダイム ドライバー」とソックリですが、ソール前方にも交換式ウェイトを備えているのが大きな特徴です。前方のウェイト2グラムに加えて、後方の移動式ウェイトも1.5グラム増量(スタンダードモデルは13.5グラム、ツアーモデルは15グラム)されており、重量級ヘッドになっています。

 コースで構えてみると、ヘッドの形状や見え方はスタンダードモデルと変わらないように感じました。ツアープロ支給モデルの限定発売品だからといって、極端なオープンフェースになっているわけでもなく、アドレス視点ではフェース面がしっかりと見えます。「このモデルは、ソール前方にウェイトが追加されただけのモデルなのかな」と思えるようなレベルです。

「パラダイム ツアー ドライバー」のスタンダードモデルとの最も大きな違いはソール前方にもウェイトが配されている点
「パラダイム ツアー ドライバー」のスタンダードモデルとの最も大きな違いはソール前方にもウェイトが配されている点

 実際に試打してみても、ヘッドの基本性能は「パラダイム ドライバー」とほぼ同じに感じられました。高慣性モーメントのヘッド特性が生かされていて、弾道は直進性が強く、球が曲がりづらい。今回はコース上での簡易的な試打だったので弾道計測はできませんでしたが、打ち出し角やスピン量もスタンダードモデルと大差はなさそうでした。とはいうものの、この「パラダイム ツアー ドライバー」の存在価値は大いにあると感じました。その理由は、ユーザーであるゴルファーが別売のウェイトに取り替えることで、ヘッドをさらに浅重心化できる機能性を備えているからです。

 スタンダードモデルの「パラダイム ドライバー」は、ヘッド最後部の移動式ウェイトとそれを支えるレール部分によって、スイング中にヘッド後方側を重く感じるタイプのドライバーでもあります。曲げずに低スピンで飛ばしやすい弾道特性、移動式ウェイトによる調整機能は気に入っていますが、もう少しヘッド後方部を軽くしつつ、ヘッド重量は維持したいと感じていたゴルファーは一定数いたはず。「パラダイム ツアー ドライバー」なら、それが可能となります。

 後方部の移動式ウェイトを軽量のものに替えるだけでもいいし、ソール前方のウェイトをもっと重いものに替えてもいい。こうやって浅重心化することでヘッドを振り抜きやすくなるし、より強い弾道を手に入れることができるようにもなります。痒いところにまで手が届く調整機能を備えているのが、この「パラダイム ツアー ドライバー」といえるでしょう。ただし、「パラダイム ドライバー」に鉛テープをベッタリ貼って調整するという人には、それほど魅力がないモデルかもしれません(最近はあまり見かけませんが……)。

「パラダイム トリプルダイヤモンドS」は許容性を備えた好バランスの美形ヘッド

「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」は、ヘッド体積420ccという今どき珍しいタイプの小ぶりヘッドのモデルです(モデル名のSは、スモールのS)。通常販売モデル「パラダイム トリプルダイヤモンド ドライバー」が450ccなので、構えてみるとそれよりもヘッドの輪郭がひとまわり小さく見えます。ヘッドシェイプも洋ナシ型になっていて、見た目からしてツアープロが好みそうなモデルです。

「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」はヘッド体積420ccと小ぶりで、均整のとれた洋ナシ型のヘッド形状
「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」はヘッド体積420ccと小ぶりで、均整のとれた洋ナシ型のヘッド形状

 筆者はどちらかいうと投影面積の大きいヘッドが好みですが、「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」は従来の「パラダイム トリプルダイヤモンド ドライバー」よりも構えやすく感じられました。なぜかというと、420ccというヘッド体積ゆえか、ヘッド全体で洋ナシ型の均整がとれているから。オーセンティックな雰囲気が備わっているだけでなく、ヘッド自体が美形なのです。

 前述した「パラダイム ツアー ドライバー」と比べると、アドレスすると少しだけフェースはオープンに見えます。こちらもロフト角10.5度のモデルだと、アドレス視点からはフェース面がよく見えます。構えたときに球が上がらなさそうな不安感はありません。

 素振りしたときから感じられるのは、スムーズなヘッドの振り抜きやすさ。ヘッドの局所を重く感じるようなことはなく、ヘッド全体がスイングに乗ってくれるようなフィーリングが得られます。そのおかげで、ゴルファーの意思でヘッド軌道をコントロールしやすい。いわゆる“操作性がいいヘッド”といえるでしょう。

「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」には交換式ウェイトが2つ搭載されており、標準設定では前方が4グラム、後方が12グラムとなっています。このセッティングであれば、ちょうどいい“操作性のいいヘッド”として使いやすい。ツアープロ向けモデルだからといって、強いフェードバイアスのモデルでもないし、ヘッドが機敏に動き過ぎて扱いづらいモデルでもない。どちらかいうとチーピンのミスが出づらいモデルとはいえますが、難しすぎない絶妙なところでヘッドが設計されているように感じられました。

 とりわけ、やさしさが感じられたのは、芯を外したミスショットを打ったとき。AIによるFLASHフェース設計のおかげで、オフセンターでヒットしても大きなミスにならない。このような小ぶりヘッドでもミスヒット時の寛容性は最新版にチューニングされていることが、コースで打ってみるとよく分かりました。付け加えると、このモデルは打感も良い。きちんと金属音はしますが、感覚的にも操作性が良さそうな球持ちのいいフィーリングが得られます。「パラダイム ツアー ドライバー」よりもプロ好みしそうに思えました。

 ヘッド形状、構えやすさ、弾道、打感、すべてにおいて好バランス。ひょっとすると、名器として、この先ずっと「パラダイム トリプルダイヤモンドS ドライバー」を使い続けるゴルファーが出てくるかもしれません。

試打・文/鶴原弘高つるはら・ひろたか●1974年生まれ。大阪出身。ゴルフ専門の編集者兼ライター。仕事のジャンルは、新製品の試打レポート、ゴルフコース紹介、トレンド情報発信など幅広く、なかでもゴルフクラブ関連の取材が多い。現在はゴルフ動画の出演者としても活躍中。ギア好きゴルファーの会員制コミュニティサイト『3up CLUB』(https://3up.club/)では、配信される動画のキャスター兼編集長を務めている。Instagram :tsuruhara_hirotaka

鶴原弘高