多くのゴルフ場で見かける「ハーフは2時間15分以内」という注意書き。一昔前であれば可能だったプレー時間ですが、プレーヤーが増えた昨今ではなかなか難しくなっています。

全組セルフ営業でハーフ2時間15分以内は至難の業

 先日ラウンドしたゴルフ場のスコアカードには、スコア記入欄の真下に「スロープレーは最大のマナー違反です」と記されていました。

 ゴルフ場は大人数で広大なフィールドを共有する施設です。スロープレーの組が1組でもいると、後続組のプレー進行に支障を来たします。

 多くのゴルフ場ではプレー進行の目安をハーフ2時間15分以内に設定しています。この時間設定は大ざっぱにいうと1ホール15分です。15分×9ホール=135分(2時間15分)になります。

ゴルフ場に行くと様々な所で見かける「play fast」の文字。混雑しているとなかなか実行できないもどかしさも
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 実際にはパー3、パー4、パー5で所要時間が異なりますから、パー3は1ホール12分、パー4は1ホール15分、パー5は1ホール18分といった具合になります。

 しかし現実問題として、コロナ禍でゴルフブームになりゴルフ場が混み始めてから、ハーフ2時間15分以内で回れることはほとんどありません。なぜなら基本的に前が詰まっているからです。

 この日もスタートホールから最終ホールまで前が詰まっている状態が続きました。前の組は60代後半か70代前半と思われるご夫婦の2サムでした。男性はレギュラーティー、女性はレディースティーでティーショットを打ちます。楽しそうにプレーされているので、こちらも間隔を広めに取ってプレーを見守ります。

 この年代の一般アマチュアゴルファーは、ドライバーがいい当たりをしても男性で200ヤード前後、女性で160ヤード前後です。当たりが悪いと飛距離はさらに落ちます。

 そうするとティーショットを打ち終えてカートに乗り込んでも、レギュラーティーから180ヤード付近でいったん停止します。そして2打目を打ち、再びカートに乗り込んでも250ヤード付近で再び停止します。したがって、3打目を打ち終わらないと後続組はティーショットを打てません。

 幸いにもこの日は雨予報でキャンセルが出たようで、このペースでもハーフ2時間15分以内でプレーできましたが、トップスタートから最終スタートまでフル稼働だったらハーフ2時間30〜40分ペースだったでしょう。

スタートから定刻どおりにティーオフできないこともある

 このご夫婦はおそらく自分たちがそんなに速くプレーできないことを自覚されているから、2サムでプレーするという選択をされているのだと思います。

 2サムであれば1組当たりの打数が確実に減ります。男性がダブルボギーペースの108打、女性がトリプルボギーペースの126打だとしたら、2人合わせて234打です。4サムで4人全員がパープレーでも72×4=288打ですから、それよりも少ない打数になります。

 ただ、昨今は4サムの中で最も経験豊富なゴルファーがダブルボギーペースで、その人がトリプルボギーペースやダブルパーペース(144打)の初心者の面倒を見ながらラウンドしていたりします。

打ち込みを防ぐ看板があればいいいが、目測でプレーを急ぐとトラブルの危険性は増加する
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 ダブルボギーペースが1人、トリプルボギーペースが1人、ダブルパーペースが2人の組み合わせだとすると、4人の合計スコアは522打になります。この4人がハーフ2時間15分以内でプレーするのは至難の業です。

 そういう組み合わせでラウンドする人たちは、あえてスタートホールから最終ホールまで前が詰まっているゴルフ場を選びます。そうすれば自分たちのプレーが遅くても「どうせ前が詰まっているんだから」という言い訳ができます。このようなゴルフ場はハーフ3時間ペースが常態化していきます。

 今の時代、ハーフ2時間15分以内を遵守できているのは全組キャディーつき営業のゴルフ場くらいです。セルフプレー主体のゴルフ場はコース内渋滞が慢性化しています。

 前が詰まっていてスムーズにプレーできないのに「スロープレーは最大のマナー違反です」といわれても「打ち込みのほうがマナー違反では?」といい返したくなります。

 9時台後半や10時台のスタートだと、そもそも定刻どおりにティーオフできないこともあります。スロープレーはゴルファーのマナー違反というよりも、ゴルフ場の営業スタイルが“セルフ”という名の放置営業になっていることも一因だと感じます。

保井友秀