中川奈月監督×北條誠人(ユーロスペース)対談

ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」では毎回様々なゲストをお迎えして映画、映画館にまつわる様々なお話をしていただいております。
5年前に自主制作した作品『彼女はひとり』が10月23日(土)よりK’s cinemaで再上映されています。本作には黒沢清監督、諏訪敦彦監督、深田晃司監督や森崎ウィン、佐伯日菜子、川瀬陽太ら多くの映画人から絶賛の声が寄せられています。本作の中川奈月監督をゲストに迎え、作品作りを中心にお話を聞きました。

【当日トークレポート】

映画作りを始めた頃
―映画作りに興味を持たれたきっかけはなんでしょう?
中川「もともと映画は好きでした。学生時代は作るまでに至らなかったんですが卒業してから、やはり一度は制作してみたいと思い就職をせずにニューシネマワークショップ(NCW)へ行きました。そのあとは、NCWの時に制作したホラーテイストのセリフがほとんどない短編を提出して立教大大学院映像身体学科に入りました。その時の終了制作として『彼女はひとり』を作りました。それからさらに映画制作の経験を積むために東京藝術大学大学院映画専攻に入りました。」

『彼女はひとり』再上映の経緯
―2016年に『彼女はひとり』を制作してから2018年にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭、2020年にテアトル新宿で上映されて、今回、K’s cinemaで再上映と息が長い作品ですが。
中川「今回の再上映は、昨年のテアトル新宿さんでの上映がきっかけで、作品の反響も良くって、やっぱりもう少し長く興行したいなと私自身思って、周りの方もおっしゃってくれていろいろな方の協力を経て今回に至りました。それまでは、宣伝も全て全部自分でやってたんですが今回はきちんと体制を整えてくださいました。」
北條「2018年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭では審査員のひとりでその時に拝見しました。特に人物の印象がよく残る作品ですよね。脚本作りはどれくらいかかったんですか?」
中川「脚本は1年以上はかけて書いていたんですが、最初はホラーで書いていたんですが、なかなか面白くならなくて1回、高校生の話じゃなくて自分と同じ年代のもう少し年齢が上の設定の人物の話に変えてみたんですがそれもうまく行かなくて、元の高校生の女の子の復讐ものというアイディアに戻しました。そうしたらいっぱい書いた分、引き出しが多くなったのか、やりやすくなって今の形に落ち着きました。脚本開発中はなかなか面白くならないしものすごく苦しかったです。家の中でゾンビのようにふらふらしてました(笑)」
―主人公の澄子の凶暴なキャラクターは元々想定されていたんでしょうか?
中川「はい。初めは、人を殴るくらい凶暴性のある設定でした。今は、あれでもだいぶマイルドになったかと(笑)」

キャスティングについて
―主人公澄子役の福永朱梨さんについて
中川「知っている方に福永さんの資料をいただいて勧められたんですが、資料を拝見すると非常に明るい印象で合うかな?と思っていたんですが、オーディションでお会いしたら想像と違っていてすごくイメージに合って決めさせていただきました。」
―主人公の相手役の金井浩人さんもオーディションでしょうか?
中川「そうですね。」
―キャストとの現場での撮影はいかがでしたか?
中川「皆さんいつも、私の想像以上のものを発揮してくださいました。特に2人(福永朱梨さん、金井浩人さん)の役へのハマり方が本当にすごくイメージ以上で。二人の世界観が良かったのでそれを壊さないように。」
北條「俳優さんに引っ張っててもらった。」
中川「はい。」
北條「リハーサルはやったんですか?」
中川「はい。やりました。」
北條「出来上がったものを現場に持ち込んだということですね。福永さんから何か役作りで質問など受けたりしました?」
中川「脚本を読まれてる時から、ご自分で色々と工夫されて作り上げてきてたので割とすんなりと進みました。」

脚本完成から撮影へ
―キャストはプロの俳優、キャメラマンはベテランの芦澤明子さんで撮影場所も学校から家庭から様々な場所を使うけれど、映画の制作スタッフは自主制作体制ですよね?
中川「すごい大変でした。撮影の芦澤さんに香盤表の作り方を教わるくらい…ご迷惑をおかけしました。」
―作品を拝見して、階段や段差を最大限に利用されてるなと思ったんですが
中川「自分も本格的な演出は初めてだったのであるものは全部使おう!と思って撮影に入りました。比較的に身近な場所を選んだんですが、芦澤さんとロケハンしている時から色々相談してました。金井浩人さん演じる秀明の家のシーンでは、芦澤さんにお向かいさんの家の屋根の上にまで上がっていただいたり、階段のシーンでは柵から乗り出すくらいの体勢で撮っていただいたり、ものすごいアクティブな方で驚きました!」
北條「アングルも澄子の心象を受けて非常に不安定な演出でいいですよね。芦澤さんからいろんなことを教わりましたか?」
中川「はい!それはもうカット割りから何から何まで、本当にお世話になりました!初めはバシバシカット割りを決めてくださったんですが、そのうちに「あなたもやりなさい。」と言われて自分なりに考えてやりました。」
北條「舞台になる学校はどうやって見つけたんですか?学校内の夕日の照り返しも良かったですね。」
中川「あの学校は母校なんです。春休みで人もいない時期に撮って。夕日のシーンは照明さんにガンガンに作ってもらって、「こんな風になるんだあ!」と感動しました。淡い感じかなと思っていたらかなりバキバキにやっていただいて(笑)」
北條「まさに心象風景を表してますね。人間関係も入り組んでるし(笑)芦澤さんに決まったのはどうゆう経緯だったんですか?」
中川「当時指導に当たってくださっていた篠崎誠監督が、「中川さん、黒沢清監督作品好きだよね?じゃあ、撮影は芦澤さんにあたってみる」と言い出して、びっくりしましたし自分に経験がないのでご迷惑をかけてしまうかも、という不安もありました。」
北條「監督とキャストと芦澤さんのカメラと、いろんな要素の息がすごく合ってると思いました。画に奥行きを感じました。映画作りのおける貪欲さがいい方向に出てますよね。編集作業はどうでした?」
中川「そもそも必要のないカットも多かったので、必要、不必要なものが分かるまで大変でした。シーンの重要な部分の見極めというか。中弛みしないようにと構成も多少考えて、、。外部の方に見てもらってアドバイスをもらったりいろいろやりました。そうして削ぎ落としていったものが今の60分のバージョンです。元々は70分以上はあったんですが。」
北條「かなり削ぎ落としたんですね。だから見ていて、なんだろう?なんだろう?と引き込まれるんですね。」

再上映について
―そうして出来上がったものが数年後に再上映。今の盛り上がっている状況は、客観的に見てどう思われますか?
中川「皆さん、こんなに良いって言ってくれるんだ!という印象ですね。今まで自分の周囲の反応は感じられたんですが、今回は今まで知らなかった人や、名前は知っているだけで接点がなかった人たちへ届いているんだなということを実感しています。テアトル新宿での上映が大きいと思いました。」
北條「やはり、上映機会というのは大事ですよね。」

公開に向けてのメッセージをお願いします
中川「5年かけてようやくここまで来ました。一度見て、何度もご覧いただくリピーターの方も多くてありがたいです。まだ、この作品に出会ってない方も多いと思うのでぜひ一度ご覧いただければ嬉しいです。」

キャスト

福永朱梨
金井浩人
美知枝
中村優里
三坂知絵子
櫻井保幸
榮林桃伽
堀春菜
田中一平
山中アラタ

脚本・編集・監督

中川奈月

プロデューサー:ムン・ヘソン
撮影:芦澤明子
照明:御木茂則
録音:芦原邦雄
整音:板橋聖志
編集協力:和泉陽光
音楽:大嶋柊
美術:野澤優
衣装:古月悦子
助監督:杉山修平
スチール:明田川志保 吉田留美
特別指導:篠崎誠

2018/カラー/ビスタ/60分
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:ミカタエンタテインメント
©2018「彼女はひとり」