上田慎一郎監督&皆川暢二さん
映画『ポプラン』インタビュー

あらすじ

主人公の田上晃は、マンガ配信サービスで成功を収めている会社の社長。会社の業績を優先し、友人を捨て、妻子を捨て、故郷を捨てて生きてきた。そのことに、何の疑問も持っていなかった。

そんな田上が、悪夢にうなされて朝起きると男のイチモツがなくなっていた。なくなった理由は、イチモツが自我を持ち、家出したからだ。イチモツは時速200キロで飛び回り、6日以内に捕まえないと、二度と元には戻らない。イチモツを探し出すヒントは、自分だけが知っているという。

田上は、イチモツを捕まえるため、自分の過去を振り返り、自分が誰なのかを探し出す旅に出る。はたして、田上はイチモツを捕まえ、自分が誰なのかを探し出すことができるのか・・・。

解説

映画「ポプラン」は、「カメラを止めるな!」で映画業界に旋風を巻き起こした上田慎一郎監督による最新作です。

主人公を演じるのは、映画「メランコリック」で主演とプロデューサーを務めた皆川暢二さん。また、この映画は「映画をもっと自由に」をモットーとした映画実験レーベル”Cinema Lab”の作品として制作され、待望の劇場公開となっています。

この映画のキャッチフレーズは「家出したイチモツを捕まえろ」です。「イチモツ」という言葉にマニアックや、カルト的なマイナスイメージを持つ人も多いと思いますが、映画の中では「イチモツ」という言葉もなく、いやらしさやカルト的な表現もありません。

映画の内容は、涙あり、笑いあり、感動あり、誰もが楽しめるエンターテイメントに仕上がっています。キャッチフレーズの「イチモツ」に対する印象と、映画を観た後の印象に大きなギャップを感じてくれれば、上田監督の思うツボです。

今回は、映画「ポプラン」の監督である上田慎一郎さんと、主人公の皆川暢二さんに、映画の内容や撮影時のエピソードについて話を伺ってきました。

映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像

皆川暢二さん(写真左)と上田慎一郎監督(写真右)

この映画のアイデアは10年前

―― はじめに、この映画の元になったアイデアについて話を伺います。
ニュースリリースには、この映画のアイデアを考えたのが10年以上前、20代の頃ということですが、何かアイデアのきっかけはあったのでしょうか?

上田慎一郎監督(以下、上田監督)
今から10年前、まだ20代後半の頃、フリーターをしながら自主映画を作っていた時に、アイデアを思いつきました。

―― そのアイデアを元に、映画に膨らませていったわけですね。

上田監督
そうですね。アイデアを思いついて、その時に脚本も書いていました。

自分のアレが家出して、それを探す旅になっていく。それが自分探しの旅にもなっていくっていうところまで、ベースはできていました。

ある朝起きたら自分のアレがなくなっていたところから始まるストーリーを書いてみようと思ったのが始まりですね。

ただ、当時はプロットのように、最初から最後まであらすじを書いてみることはしていなかったんで、アイデアを思いついたらどう終わるか分からない中で書いていました。

映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像

―― その時に、脚本とか、絵コンテとかも書いていたんですか?

上田監督
中編ぐらいの脚本を書きました。当時は、お金もなく映画を作るあてもなかったので、ひとまず書いておいたというところです。

―― それが、10年後に映画を作れることになったわけですね。

上田監督
何度か映画化のチャンスもあったんですが、成立するまでに至りませんでした。

それが、今回、映画実験レーベルシネマラボという新レーベルから声をかけていただき、「好きなものを作っていいですよ」と。この映画の企画を提案したら作れることになりました。

―― 企画が通ってよかったですね。この映画については、上田監督が「10年間やって映画になる感触がつかめずにいた」と言っていますが、10年かけて「映画にできるかも」という感触に変わった理由は何でしょうか?
例えば、「カメラを止めるな!」の成功とかが、裏付けになったりしたんでしょうか?

上田監督
そうですね。当時のアイデアだけだとちょっと長いコントにしかならない、長編映画になるという感触はつかめなかったんです。

それが、この10年間で自分の人生経験と、その間に何本も映画を作ってきた経験から「今ならただの奇抜な、奇想天外な話だけじゃなく、もっと普遍的な物語、映画になるんじゃないか。撮れるんじゃないか」という感触がつかめたからだと思います。

主人公は皆川さんしかいなかった

―― 次に、キャスティングについてお話を伺います。
昨年(2020年)の9月に、この映画の撮影が開始されたわけですが、その段階では、主人公の皆川さんしか公表されていませんでした。そのあたり、上田監督の皆川さんに対する強い思い入れを感じるんですが...

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上田監督
皆川さんあっての映画になったと思います。皆川さんを見る映画でもありますよね。

皆川暢二さん(以下、皆川さん)
たまには、休憩したほうがいいんじゃないって思うぐらい出ていますね(笑)。

―― 上田監督は、皆川さんのことは以前から知っていたんですか?

上田監督
皆川さん主演の「メランコリック」を、公開前に試写を見せていただきました。

凄い面白くて、それで改めて映画館に「メランコリック」を観に行った時に、皆川さんが映画館の前で立って、ビラ配りをしていました。

―― 映画の主人公自らビラを配っていたんですか?

皆川さん
はい。

―― 上田監督は、ビラを配っていた皆川さんと初めてお会いしたわけですか?

上田監督
その時は、ご挨拶程度だったんです。

―― その時は、「ポプラン」のことは頭にあったんですか?

上田監督
頭にありましたが、まだ映画にするとかの話にはなっていなかったです。まだ眠っていた時です。

―― それが、映画として「ポプラン」を作ることになったとき、主人公として皆川さんのことが頭に浮かんだわけですね?

上田監督
皆川さんを選んだ理由は大きく分けて三つ。

主人公のイメージに合うこと。肩をガッツリ組んで撮影前から一緒に映画作りに向き合ってくれると思ったこと。田上を演じるにあたって、知っていてほしい感情や経験を積んでいると思ったことです。

―― 皆川さんは、上田監督から連絡がきたときには、どう思われましたか?

皆川さん
ビックリしました。まさか、上田監督から連絡をいただけるとは思ってもいなかったので...

その上、 ZOOMでお会いした時に、上田さんから、この「ポプラン」の話を、とても丁寧に話して説明してくださいました。

―― 上田監督と実際にお会いして、「ポプラン」の話を聞いて、どう思われましたか?

皆川さん
上田さんは、どうしても、映画が「イチモツを取り戻す」という内容なので、そこの部分を誤解がないように、とても丁寧にいろいろと話してくださいました。

映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像 映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像 映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像 映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像

―― 上田監督の話を聞いて、すぐに主人公の役をお受けすることになったのでしょうか?

皆川さん
ぜひやらせていただきたいということでお願いしました。

―― 上田監督のことはお会いする前から知っていたんですか?

皆川さん
上田監督を知ったのは「カメラを止めるな!」になります。そのときはテレビでも話題になっていていたので、本当に凄いなって思ってました。

もちろん、映画も映画館で観たのですが、僕が観に行ったのは平日の昼間でしたが、もうビッシリ観客が入っていました。

―― 映画を観た感想はどうでしたか?

皆川さん
「カメラを止めるな!」って、人と一緒に観れば観るほど楽しみが増えるというか、観ている人が本当に映画と一体となって楽しめる作品でした。

映画館で映画を観ているときは、日本人ってあんまり笑わないじゃないですか。それが観ている人たちの間で、笑うことに対して高揚感ができていたので凄いなと思いました。

しかも、そんなすごい監督から声をかけていただき、まさか一緒に、こういう形で映画に関わることができるとは想像していませんでした。光栄の至りです。

上田監督
僕のほうこそです。

キャッチコピーと観た印象のギャップ

―― 次に、映画の内容についてお話を伺います。
キャッチコピーに「イチモツをつかまえろ」とありますが、「イチモツ」という言葉を、あえて使ったのはなぜでしょうか?

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上田監督
本編では、「イチモツ」という言葉は、1回も言ってないです。宣伝のコピーとしてしか言っていない。

本編では「ポプラン」としか言っていません。ただ、「ポプランをつかまえろ」って言われても何のことか分からない。そこで「何じゃその話?」と、まず興味を持ってもらう意味から「イチモツ」をコピーに入れ、何の話なのか、はっきり打ち出しました。

―― どうしても「イチモツ」という言葉の印象からは、いやらしいとか、マニアックとか、マイナスのイメージがつきまとうと思うんですが?

上田監督
「イチモツ」という言葉にギョッとする方もいるかもしれませんが、その言葉と出来上がった映画には、かなりギャップがあると思うんです。

コピーの印象からは、おバカコメディとか、生々しいものを想像するのかもしれませんが、この映画では「イチモツ」という言葉とは裏腹に、上品で上質な映画を目指しました。

そのギャップは今までの映画にはないものになっていると思います。

―― そういえば、この映画を観て、いやらしさとか、生々しさとかは感じませんでした。
観た印象としては、笑いあり、感動あり、涙ありのまさに娯楽映画だと思いました。

上田監督
あらすじから想像するものと、全然違う感触の映画に仕上げるのが、当初からのイメージでした。

実際に「イチモツ」が映ることはないし、セクシャルなシーンもない。下品なシーンもありません。

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誰も経験してないことにリアリティをもたせる

―― 皆川さんが、ポプラン(イチモツ)をなくした男を演じるうえで、一番苦労した点は何ですか?

皆川さん
(笑)

そうですね。あんまり「苦労しました!」っていう感じはなかったというのが正直なところです。

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―― 上田監督は、皆川さんにポプランをなくした男を演じるに当たって、何か指示は出されたんですか?

上田監督
朝起きたらイチモツがなくなっていたなんて、誰も経験したことがないことじゃないですか。

だから、実際はこうじゃないかというリアリティ、塩梅についてはかなり話し合い、その境界線をさぐりながらやりました。

飛び回るポプランは後からCGで入れていますが、現場では実際いるわけではない。それを追いかけて、捕まえるシーンは、イメージしてやってもらうしかなかったので、大変だったと思います。ですよね?

皆川さん
苦労したというよりも、楽しかったです。

自分のイチモツが壁や窓にぶち当たるシーンでは、監督とも、ぶち当たったときの痛み具合とか、当たる音を変えなきゃいけない部分とか、どのくらいの勢いで当たってるとか、ちょこんと当たってるとか。

その時の衝撃の度合いで痛みの声の出し方も変わるだろうということで、楽しみながら演じていました。

―― 納屋にポプラン を追い込んで格闘するシーンは凄かったですね。
暗闇の中で、ポプランが飛び回り、壁にぶつかるたびに痛みを感じながら捕まえるシーンは、本当にポプランが飛び回っているようで迫力がありました。

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皆川さん
この作品と一緒で、童心に帰るように無我夢中でやることが結果として作品の流れにもなる。自分自身もそこに没頭することで余計なものが排除されていったっていう面白さがありました。

あらゆるジャンルが入っている
ノージャンル映画

―― 「カメラを止めるな!」のワンカットのシーンは6テイクくらい撮ったと伺ったのですが、今回、一番多かったシーンで、何テイクぐらいまでいったんですか?

上田監督
一番多かったので10テイクぐらい?

皆川さん
多分あそこですよ。最初のなくなるシーン。

―― 撮り直しになった原因は、何かあったのでしょうか?

上田監督
主人公が朝起きてイチモツがなくなっていると気づくシーンですね。そのリアクションの塩梅と、もう一つは、どうやって前貼りを映さないように撮るかっていう。何度も撮り直しました。

―― 最後に、この映画の見所について教えてください!

映画『ポプラン』監督の上田慎一郎さん、主人公の皆川暢二さんインタビュー,画像

上田監督
あらすじから想像するものと、観た映画とのギャップですね。

想像するものとは違う映画になっていると思います。今までにない感触。今まで観たことがない、ちょっと珍妙な味わいを楽しんで欲しいなと思います。

あと、観た人によって受け取り方が変わる映画だなと思っています。年齢、性別、観る人によって受け取り方が変わるんじゃないかなと。

ぜひ観た人同士で語り合っていただきたいですね。

皆川さん
ふつう、映画を観るときは、映画のジャンルを予め決めてから行きますよね?それが、この映画の場合、一瞬コメディだと思って観ていると、たぶん、コメディとは違う不思議な感情を抱く方もいると思うんです。

じゃ、この映画のジャンルは、なんだろうって...。自分なりに観た時に、新しいジャンルをその人の中で咀嚼して作ってもらうのも楽しみ方のひとつだと思います。

人って、何かしらこういうジャンルだよねって枠にはめて、分かりやすくしたくなるかもしれませんが、この作品は今までにない新しいジャンルの枠組みを自分なりに作ってもらえたら面白いと思います。

―― 新たなジャンルとして、名前を付けるとすればどんな名前になりますか?

上田監督
あらゆるジャンルが入っているノージャンル映画かな?

―― 本日は、ありがとうございました。映画「ポプラン」が盛況となりますよう、心よりお祈りしています。


スタイリスト(皆川さん):沖田慧
ヘアメイク(皆川さん):Chieko Katayama (HMC)

上田慎一郎(うえだ しんいちろう)

1984年 滋賀県出身。2009年 映画製作団体を結成。10本以上の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。2018年 初の劇場用長編「カメラを止めるな!」が2館から350館へ拡大する大ヒットを記録。2019年に、三人共同監督作の「イソップの思うツボ」、劇場用長編第二弾「スペシャルアクターズ」が公開。同年に映画の企画・制作を行う株式会社PANPOCOPINA(パンポコピーナ)を設立。その後も、完全リモートで制作された「カメラを止めるな!リモート大作戦!」(2020)、大ヒット4コマ原作を映画化した「100日間生きたワニ」(2021)など、話題作を次々に監督している。

皆川暢二(みながわ ようじ)

1987年10月生まれ、神奈川県出身。大学時代に俳優を目指し、舞台を中心に活動後、突如カナダに1年滞在しながら、北米大陸の自転車横断に挑戦。帰国後、映画制作も試み、2018年に主演兼プロデューサーという形で制作した映画「メランコリック」が「第31回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門」で監督賞を受賞し、前年に「カメラを止めるな!」が観客賞を受賞して話題となった「ウディネファーイースト映画祭」では新人監督作品賞に選出される。主演映画は「ポプラン」が2作目となる。

作品クレジット

出演:皆川暢二  アベラヒデノブ  徳永えり 原日出子 渡辺裕之
監督・脚本・編集:上田慎一郎
配給:エイベックス・ピクチャーズ
©映画「ポプラン」製作委員会
公式HP:https://popran.jp/

1月14日(金)テアトル新宿他、全国公開