ヨーロッパ、北米、アジア、南米、世界各地の国際映画祭を回った
『春原さんのうた』初日舞台挨拶
前作『ひかりの歌』が口コミなどの評判により全国各地での公開へとつながった杉田協士監督待望の⻑編第3作『春原さんのうた』。作家・歌人の東直子による第一歌集『春原さんのリコーダー』(ちくま文庫)の表題歌「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」をもとに、ある喪失感を抱えた女性が、日々のささやかな暮らしを続ける姿をただ見つめていく物語。
31音の短歌から生まれた本作は、第32回マルセイユ国際映画祭(フランス)にて日本映画初となるグランプリとともに観客賞、俳優賞の3冠、マンハイム=ハイデルベルク国際映画祭(ドイツ)にてライナー・ヴェルナー・ファスビンダー賞スペシャルメンションを受賞。そのほか、サン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)、ニューヨーク映画祭(アメリカ)、釜山国際映画祭(韓国)、サンパウロ国際映画祭(ブラジル)、ウィーン国際映画祭(オーストリア)、ベルフォール国際映画祭(フランス)など世界各国での旅を続け、11月の東京フィルメックスでのジャパンプレミアを経て、1月8日、日本での劇場公開を迎えました。
この度、1 月 8 日(土)にポレポレ東中野にて初日舞台挨拶が行われ、杉田協士監督、主演の荒木知佳さん、原作短歌の東直子さんが登壇しました。
満員の客席を眺めながら、杉田監督は「(国際映画祭への選出で)ありがたいことに作品に注目していただいて、受賞後の第1作をすぐに作らなきゃいけない空気を皆さんから感じるんです。本当はゆっくりしていたいんですけれど」と挨拶。
監督と世界各地を回った荒木さんも「2019年9月3日に『春原さんのうた』の撮影がスタートし、無事に完成して、去年は杉田さんと一緒に海外をたくさん回らせていただいた。今日、こうして初日を満席の中で迎えられることが嬉しい」と笑顔を浮かべます。
するとここで、マルセイユ国際映画祭で荒木さんに贈られた俳優賞の賞状を掲げた杉田監督。「この賞状、実は今日までわたしの家にあったんです(笑)。荒木さんに渡そう渡そうと思っていて、なかなか会えずにいましたが、やっと渡せます」と賞状を渡し、会場からは拍手が送られました。
作家・歌人の東さんは「1996年に作った短歌が、まさかこんなに素敵な2時間の映画になるなんて夢にも思っていませんでした。作ってからこんなに長い年月を経て映画になり、しかも世界にまで渡って……なんて長い旅をしているんだろうと、今でも夢を見ているようです」と感慨深げ。杉田監督は「東直子さんの短歌をお預かりして映画を作るとなった時、選んだのは1首でしたが、東直子さんの短歌以外の本も読んだり、原作が生まれた90年代後半にお住まいだった街を一緒に散歩したりしながら、自分の中に落とし込んで行きました」と述懐しました。
最後にメッセージを求められた杉田監督は「撮影に入る前、『短歌を映画にするなら35分から45分ぐらいでしょうか』と自信を持って言っていたんですが、2時間の映画になってしまいました。でも長くなってしまったのは、それだけ東直子さんの短歌に“広がり”があるからこそだと思っています」と締めくくりました。
『春原さんのうた』予告編映像
あらすじ
美術館での仕事を辞めてカフェでのアルバイトを始めた沙知(24)は常連客から勧められたアパートの部屋に引越しをする。そこでの新しい生活を始めた沙知だったが、心にはもう会うことの叶わないパートナーの姿が残っている。
キャスト
荒木知佳 新部聖子 金子岳憲 伊東沙保 能島瑞穂 日髙啓介 名児耶ゆり 北村美岬 黒川由美子 深澤しほ 安楽涼 大須みづほ DEG 徳倉マドカ 清水啓吾 吉川愛歩
原作短歌
転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー (ちくま文庫『春原さんのリコーダー』より)
原作:東直子
フロデューサー:髭野純
アソシエイト・プロデューサー:川村岬
撮影:飯岡幸子
照明:秋山恵二郎
音響:黄永昌
衣裳:小宮山芽以
編集:大川景子
仕上監修:田巻源太
音楽:スカンク/ SKANK
照明助手:平谷里紗
衣裳助手:田島あかり
スチール:鈴木理絵
イラスト:カシワイ
題字:荒木知佳
デザイン:篠田直樹
英語字幕:長谷川美樹 / AC・クロフォード
国際映画祭コーディネート:槻舘南菜子
国際広報:グロリア・ゼルビナーティ
宣伝:平井万里子
製作:Genuine Light Pictures/ねこじゃらし
2021/Japan/Color/Standard/DCP/5.1ch/120min
配給・宣伝:イハフィルムズ
公式HP:https://haruharasannouta.com
© Genuine Light Pictures