夢の続きか、新たな人生か――。ディズニー/ピクサーによる人気シリーズ第3作「カーズ クロスロード」が、7月15日に全国で封切られる。“人生の岐路”をテーマに描いた今作で、監督が前作までのジョン・ラセターから長編初監督のブライアン・フィーに交代。劇中さながらの“クロスロード”を味わったフィー監督と、ピクサーのベテランプロデューサーのケビン・レハー氏が、今作に込めたそれぞれの思いを語った。(取材・文/編集部)

 「カーズ」シリーズ第1作では、自己中心的なレーシングカーのライトニング・マックィーンが、迷い込んだ田舎町の住人たちと家族のような絆で結ばれる様子を、第2作では、親友のメーターとともにスパイ作戦に巻き込まれていく姿を描いた。今作では、マックィーンが次世代レーシングカーであるジャクソン・ストームらの台頭やレース中のクラッシュをきっかけに、レーサーとしての夢を追い続けるか、別の人生を歩み始めるかという人生の岐路に立たされ、大きな決断を下す様子を見つめる。

 シリーズ第1作がラセターと家族とのロードトリップから生み出されたのと同様に、今作の物語はフィー監督の娘たちとの経験が基になっているという。

 「娘たちに絵を描くことを教えていたときに、彼女たちに何かを教えることは、僕の人生においてとても感動的でやりがいのあることだと気が付いたんだ」。そこからマックィーンと、今は亡き伝説のレーサーで師匠であるドック・ハドソンの親子のような関係に注目した。「たとえ何者でも、その人が得た居場所は、前の世代の助けがあってこそ。最終的には、次の世代にそのお返しができれば、それって人生で最高のことだと思う。この映画はそういう思いからからスタートしたんだ」

 フィー監督は、今作の製作総指揮を務めるラセターからシリーズを引き継いだ、まさに“次世代”の監督。レハー氏は、フィー監督とラセター氏の関係を映画に重ね、「ジョンはマックィーンだよ! (『トイ・ストーリー』シリーズの)ウッディでもあるしね」とほほ笑む。

 今作には、次世代レーサーらに対抗しようとするマックィーンのトレーナーを務める新キャラクター、クルーズ・ラミレス(声:クリステラ・アロンゾ)が登場する。若くて陽気な女性だが、自らの才能を信じ切れずにレーサーになる夢を諦めた過去をくすぶらせており、「私はただのトレーナー」と自らの可能性に蓋をしてしまう。しかし、憧れのマックィーンと出会ったことで人生の岐路を迎え、大きな一歩を踏み出す。

 フィー監督は、2003年にピクサーに加入し、監督に代わって絵コンテを描くストーリー・ボード・アーティストや、脚本を絵に起こすストーリー・アーティストとして活躍。「監督になるなんてまったく思っていなかった」というが、クルーズと同じように、今作との出会いで大きな人生の岐路を迎えた。決断させたのは、やはり“マックィーン”であるラセターだったという。「ジョンから『きみがこの映画を監督するんだよ』と言われたとき、『とんでもない。どうやればいいかわからないし、恐れ多いし、結構です』と言うこともできた。でもそうしなかったのは、ジョンが僕のことを信じてくれているのが伝わってきたからだ。劇中で自分を信じられないでいるクルーズを、マックィーンが信じてあげるシーンがあるんだけれど、それと同じものをジョンから感じたよ。彼は本当に頭がいいよね(笑)。僕に、『ジョンがそういうのなら、できるかもしれない』って思わせてくれたんだから」

 さらにフィー監督は、「クルーズがマックィーンに『初めてレースに出たとき、どうして自分にできるってわかったの?』と質問するシーンで、マックィーンが『どうしてかな、できないと思ったことがないから……』と答えるんだけれど、実はこれはジョンが『どうして3Dアニメーション映画を作れると思ったんですか?』と聞かれたときの答えからもらったセリフなんだ」と明かす。

 「まだ誰も3Dアニメーションをやったことがなくて、彼らが『トイ・ストーリー』について話していたときだ。ジョンは、たぶん僕が人生で出会った人のなかでもっとも自信のある人だよ。だって、『できないと思ったことがないだけさ』って言ってのけちゃうんだ。それほど自信がある人はなかなかいない。僕はもっとクルーズみたいな感じかな。彼女はマックィーンの話を聞いて『私もそんな気持ちになりたかった』ってつぶやく。ほとんどの人は、そう感じるんじゃないかな」

 今作を通してフィー監督とレハー氏は、自信が持てず、挑戦することをためらっている若い女性たちに、クルーズのような勇気を持ってほしいとメッセージを送っている。

 レハー氏「この映画には素晴らしい瞬間がある。ストームがクルーズに『ここはきみの居場所じゃない』と言うと、彼女は『ここは私の居場所よ』とキッパリと主張するんだ。とてもパワフルだよね。だってクルーズの言っていることは真実だから。若い女性たちにとって、『そうよ、私はこれをできるのよ!』と言える女性の存在は、すごく力になるんだと感じた。何度見ても、あのセリフには圧倒されるよ」

 フィー監督「僕の娘たちが何かに挑戦するとき、上手く行かないんじゃないかと怖がったり、躊躇したりするところを見てきた。でも、最初から何でも上手にできる人なんていないんだ。失敗しても構わないから、飛び込んでやってみるしかないんだよ。みんなそうやって学ぶんだからね」