バルト三国の一番北に位置するエストニア。実はIT先進国として知られ、多くの国や企業がエストニアから学ぼうとしている。今回は、ITによる社会向上の成功例を紹介する。

高齢者もパソコンを使いこなすIT国家、エストニア

人口約130万人、面積は日本の約9分の1程度。エストニアは、国土の50%以上が森林で覆われており、首都のタリンは昔ながらの町並みを残し世界遺産に指定されている。そんなエストニアは、実は「世界一のIT国家」。高齢者もパソコンを使いこなし、国民のほぼ全員がナンバー付きのIDカードを持つ。IDカードを用いて個人情報にウェブ上でアクセスしたり、海外でも電子投票できるなどさまざまなサービスがウェブで完結。またカルテに代わる医療情報もクラウド上で一元管理するなど、国を挙げて先進的なITインフラを構築している。

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【成功例その1】外国人でもエストニアの電子居住権が取れる!
実際にエストニアに住まなくても、起業や口座開設が可能になる「e-residency」が取得できる。

【成功例その2】国外にいても投票可能
IDカードさえあれば、ウェブからでも投票できる仕組み。国外在住でも政治に参加できる。

【成功例その3】オンライン最短18分で会社を起業
起業に必要な行政の申請プロセスがすべてウェブで完結可能。誰でもすぐに起業できる。

【成功例その4】自分の情報を一元管理
IDカードをパソコンにつなげば、自分の職歴、病歴、納税履歴など一括で閲覧、管理可能。

【成功例その5】IDカードは万能カード!?
IDカードを持っていれば免許証は携帯不要。民間の店のポイントカードとしても使用可。

セキュリティは大丈夫?

こんなに便利すぎると少し心配になるのが安全性だ。しかし、エストニアでは、セキュリティについても世界随一のシステムが敷かれており、また公的機関のシステムは13年おきに新しいものに更新することを決めているとの徹底ぶり。また、NATOのサイバー防衛センターはエストニアに置かれていることからも、エストニアのITの強さがうかがえる。

なぜ、エストニアではIT技術が高いのか

エストニアのIT技術が高い理由……。その発端はソ連時代にさかのぼる。ソ連に併合されていた冷戦時代、エストニアの地でITを強化するソ連の戦略があったのだ。1970年代にエストニア大学に優秀な学者が集められ、この地にIT力を高めるモノと人が集結。ソ連崩壊後に独立したエストニアは、その素地を国の強みと認識し、国を挙げてさらなるIT技術革新に乗り出した。昔ながらの建造物が立ち並ぶ、緑豊かなメルヘンの国には、実はIT網が張り巡らされていたのである。

小学1年生からプログラミングの授業を設ける学校もあり、起業する若者も他国に比べて多い。日本の経済界からも視察に訪れているとか。先進的IT国家から、私たちが見習うことは多そうだ。

●教えてくれた人
ラウル・アラキヴィさん
エストニアで生まれ、エストニア経済通信省に入省、経済開発部にて局次長を務める。現在は日本に移住し、ITスタートアップ企業「Planetway Corporation」の取締役を務める。著書に『未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界』(インプレスR&D)がある。

(出典:『Discover Japan』、text&photo:Discover Japan)