「終活」「デジタル遺品」「エンディングノート」。人生を終えたその後、残された家族のためにできることをしておくのが大切という機運が高まっています。確かにそうです。しかし、あまりにも「やっておくべき」論が強くて、おっくうになってしまっていませんか? そのため本人も、その家族も、なんとなく言いづらくなって、後回しになってしまっているように感じます。

「相続する財産は何があるの?」「不動産の所有権は?」「葬儀には誰を呼んで欲しいか?」「パソコンやSNSのパスワードは?」。たしかに大切なことです。だけど、子どもや孫、家族に伝えておきたいこと、知っておいてくれるとうれしいことはそれだけでしょうか?

母が好きだった花を知っていますか?

アフィリエイテッドファイナンシャルプランナーの一橋香織さん(相続診断士事務所 笑顔相続サロン代表)は、「笑顔で相続を迎えるために、もっと家族のことを知っておきませんか?」と提案します。

一橋さんは「母が亡くなったときに、通帳と印鑑の場所がわからず困りました。また、祖母がつくってくれたおばんざいの味つけが再現できなくて苦労しました。父親がどういういきさつで母と不仲になったのかわからず悩みました。そんなことを伝えるのも大切なことだと思いました」と言います。

父親の好きなお酒の銘柄が分かりますか? 母親が子育てで悩んだこと、楽しかったことを聞いたことはありますか? 両親の学生時代や結婚のエピソードを知っていますか? 好きな音楽や俳優さん、映画や本は?

これらは言葉に残しておかなければ、伝わること、知ることのない人生の大切なエピソード。亡くなったあとに、聞いておけばよかったと悔いても遅いのです。

思い出の相続が残された人の支えになる

人生の終焉はいつ訪れるか分かりません。若いからまだ大丈夫と思っている人も、その時は突然やってくるかもしれません。日記をつけたり、手紙を書くつもりで、まずは気軽にノートに書き始めてみてはどうでしょうか? 親と離れて暮らしたり、自分の家族ができたりすると、コミュニケーションも不足になりがちです。目に見える財産ではなく、思い出も相続する。残された家族にとっては、それが支えになったり、人生の節目で道しるべになるかもしれません。
(出典:『終活・相続の便利帳』)
(K)