今夏公開された映画『1999年の夏休み』のデジタルリマスター版が話題です。30年前に公開された映画ですが、新旧問わず多くのファンを魅了しています。

非常にオリジナリティ要素の強い同作品。本映画がデビュー作である深津絵里さんをはじめ主役の男の子4人を演じたのは全員女の子。そこから別途声優が声を当てるという演出。萩尾望都さんの人気マンガ『トーマの心臓』がモチーフなどなど。

しかし、その他にも、透明感あふれる映像や思春期ならではの葛藤など、作品の魅力は多岐に渡ります。金子修介監督らへのより踏み込んだインタビューなど、さまざまな角度から映画『1999年の夏休み』の魅力に迫ります。

裏話1:『カメラを止めるな!』を止めた映画だった。

まずは軽めのトリビアから。 最初にデジタルリマスター版が公開され、連日満員だった新宿の映画館・ケイズシネマ。こちらは当時『カメラを止めるな!』を上映する数少ない映画館でもありました。しかし『1999年の夏休み』公開の2週間は、こちらの上映はお休み。

つまり、結果的に『カメラを止めるな!』を止めたことになったそうです(笑)。間違えて行列に並び、勘違いに気づいたがそのまま見てハマった人もいたという面白エピソードもあったそう。公開時にはトークショーも行われ、豪華ゲストによるポスターへのサインの寄せ書きサインも行われました。

この後、公開は全国各地の映画館へ徐々に広がっていきます。30年前に『1999年の夏休み』を上映していた映画館の人が、その後支配人となっていたことでデジタルリマスター版上映へと繋がったという奇跡の積み重ねもあったそうです。

裏話2:『1999年の夏休み』が作られたのは1987年の夏休み。

公開は30年前の1988年でしたが、実際に映画の撮影が行われたのは前年の1987年。4人の女優さんは全員学生だったので、本当に夏休みの間の撮影でした。

主演女優の宮島依里さんによると、撮影は大変暑く汗も沢山かいたとのこと。しかし、金子監督は映像から男の汗臭さは徹底して排除。結果、夏の美しい緑や湖に代表される爽やかなイメージが浮かぶ作品となりました。

なお、タイトルの「1999年」とは(当時から見た)1999年のありえる未来像という意味ではなく、ノストラダムスに代表される世紀末のイメージを記号化したもの。そのため、具体的にいつの時代かわからないように、当時の風俗的な物を排除して作られています。

その結果、21世紀の今見ても古くささを感じず、近未来の印象を受ける人が多いようです(筆者は卵を割るだけの巨大な装置が印象的です)。

裏話3:蘇った映画のカギは中村由利子さんの音楽

映画の抒情性を盛り上げるのは、劇中に流れる中村由利子さんのピアノ音楽。30年の歴史の節目で、音楽は同作に大きく関わっています。

まずそもそもの映画制作時。劇中音楽について、当時金子監督の元には音楽会社からさまざまなアーティストの楽曲が送られてきました。その中で、中村さんのデビューアルバム『風の鏡』を聞いて、絶対これだと強く思い決定。目次と映画の場面とを照らし合わせていきます。その結果、中村さんが少女の時に見た風景を思って作った曲と、少年たちと描いた映画とが見事に融合しました。

ただ、実は当時の本映画のサウンドはモノラル。その後のDVD化の際に、ミュージックトラックが作られます。ここで中村さんによる見直しがなされ、ステレオで音楽が入りました。

そして今回30年ぶりの公開のきっかけも、中村さんの30周年記念音楽会。中村さんと宮島さんのボイストレーナーが同じという繋がりなどもあり、金子監督と宮島さんの出演が決定。そこで、DVD制作のアニプレックス社に話をしたところ、好意的に話を聞いてくれて、デジタルリマスター版配給へ進んでいったとのこと。

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