『恐竜戦隊ジュウレンジャー』発祥、アメリカでのテレビ版経由。映画『パワーレンジャー』は、その出自を特徴にしつつも、2017年のヒーロー映画に必要な様々な要素を盛り込んだ意欲的な作品だ。


前半は真っ当な青春映画です


アメフトのスター選手でありながら選手生命を絶たれてしまった高校生ジェイソン。小さな町エンジェル・グローブで暮らす彼は、卒業に向けた補習授業で内気な少年ビリーと知り合う。ささいなきっかけでビリーが金の採掘場で行う「宝探し」に付き合わされるジェイソン。その場に偶然居合わせた、女子グループから孤立しているキンバリー、孤独な転校生トリニー、不登校でトレーラー暮らしのザックらと共に、ジェイソンとビリーは5色に輝く謎のコイン状の物体を手にする。

コインの力でやたらと身体能力が強くなる5人。彼らは採掘場に再び足を踏み入れ、地下に埋まる謎の建造物を発見。中にいたゾードンと名乗る体を失った魂だけの存在と機械生命体アルファ5によって、コインの力がかつて「パワーレンジャー」と呼ばれた戦士たちのものだったこと、元パワーレンジャーでありながら世界を滅ぼす力を求め、古代の地球で封印されたリタ・レパルサという悪の戦士が復活しつつあることを知る。さらに5人が新たなパワーレンジャーとなって戦う必要があるという話を聞き、戸惑いつつも訓練を始めることに。

訓練を進めつつも、5人はパワーレンジャーが最大の力を発揮するための"変身"ができずにいた。迫るリタ・レパルサの復活。5人の高校生と地球の運命はどうなってしまうのか!

というわけで、『ジュウレンジャー』では復活した古代の恐竜人類みたいな設定だったメンバーは、今回は全員落ちこぼれの高校生に。この高校生たちのメンツが白人、黒人、アジア系とちゃんと人種が散らばってるのはいかにも現代的。5人のメンバーはそれぞれ家庭環境や人間関係などに悩みを抱えており、特殊なパワーを手に入れてしまったことで調子に乗ったり戸惑ったりする。このあたりはちょっと2012年の映画『クロニクル』っぽい。

特に現代的な設定のキャラクターが、ブルーレンジャーに変身する黒人少年ビリーだ。彼は自閉症スペクトラムであり(これは劇中ではっきり明言される)、机の上の色鉛筆の並びにこだわったり、他人の言ったことが冗談なのかわからなかったり、早口で独り言を言ったりと、いわゆる従来のヒーロー像とは毛色が異なる。彼もパワーレンジャーとしての能力に目覚め重要な役割を担うこの映画には、悩めるティーンエイジャーに対する「君はそのままでも戦える!」という優しいメッセージが込められているのだ。

戦闘シーンはスーパー戦隊へのリスペクト満載


後半では悪役リタと戦うわけだが、この戦闘シーンにも(アメリカナイズされつつ)日本の戦隊もののお約束が随所に散りばめられている。敵には明確に「量産型の戦闘員」という概念があり、ワラワラと湧いてくる雑兵をアクロバティックなアクションで蹴散らす。当然戦闘シーンの背景は採石場っぽい荒地。エリザベス・バンクス演じる悪役リタ・レパルサは服装も演技も完全に悪の女幹部なんだけど、このあたりからは『ジュウレンジャー』のバンドーラ様へのリスペクトが感じられる。

パワーレンジャーの5人にはそれぞれ「ゾード」という恐竜や古代生物を模した大型メカが用意されており、それらが合体したロボットが巨大な敵と殴り合うというクライマックスももちろん踏襲。このゾードも日本版のデザインというよりは実写版トランスフォーマーのダイノボットのようなアレンジになっており、見た目は今風ながらやっていることはほぼスーパー戦隊のまんまである。このロボット戦は正直駆け足な印象だったけど、駆け足感も戦隊っぽいと言えなくもない。正味3分くらいしかロボット出てこない回、ザラにあったよね……。

なかなか変身しないので「ティーンエイジャーの悩みはわかったから、早くかっこいいパワーレンジャーを見せてくれ!」という感じもなくはない。このへんはヒーローのオリジンを描いた映画にはありがちな悩みどころだけど、とりあえず変身してからの「オレら戦隊ヒーローめっちゃ研究したんすよ!」というシーンの連打は好感が持てた。もうちょいそのへんをたくさん見たかったな〜と思わんでもないけど、一応続編は作れるような終わり方だったし、ひとまず志の高さは伝わってきたぞ。