2017年7月18日(火)よる10時から、火曜ドラマ『カンナさーん!』(TBS系)の放送がスタートした。
脚本は『ブスの瞳に恋してる』『山田太郎ものがたり』などのコメディタッチの作品を得意とするマギー。原作は、深谷かおるの同名漫画『カンナさーん!』(集英社)だ。


渡辺直美vsシシド・カフカ、働く女性の対比


主人公の鈴木カンナを演じるのは、お笑い芸人の渡辺直美。
2016年には芸人としてワールドツアーを成功させ、2017年6月に発売された写真集『NAOMI』も話題。アパレルブランドのプロデューサーとしても活躍中の渡辺が、芸歴11年目に突入した今、新たなチャレンジとして連ドラ主演に挑む。

カンナの夫・礼を演じるのは要潤。礼は、浮気・マザコン・優柔不断と「女性が嫌う三大要素を兼ね備えた(本人談)」ゲス夫だ。
これまで要潤にあまり悪い印象を抱いたことがなかったが、『カンナさーん!』では意見を聞かれても口を尖らせて黙り込んだり、職場で浮気相手に膝枕をしてもらっていたりとイラッとさせられた。でも、ダメでも憎み切れないところに要潤らしさを感じる。

そんな礼の浮気相手・草壁真理を演じるのは、朝ドラでも女優として活躍中のシシド・カフカだ。CG制作会社の社長を務める礼の仕事仲間であり元彼女で、空間デザイナーとして働くキャリアウーマンという設定。実は、真理のこの役柄は原作の漫画とは変わっている。

原作の漫画では、真理はニューエイジ系のミュージシャン。世界各地の伝統音楽を採集するために、地図には載っていないような場所まで訪れる。礼とは、礼が大学を休学して旅行をしていたときにバンコクで知り合った。ファッションデザイナーとして働くカンナとは、全く別世界の女で、その新鮮さに礼はハマってしまったというのが原作での浮気の言い訳だ。

原作がある作品を実写化する場合、登場人物の設定が変わることで原作ファンはがっかりさせられることが多い。しかし、今回の真理の設定の変更は改変というよりも「調整」であるように感じた。
結婚してこどもを持ちながら忙しいファッションデザインの世界で奮闘するカンナと、独身で不倫の恋を楽しみながら空間デザインの世界で着実に成功をおさめてきた真理。
ドラマでは、真理を彗星のように現れたまったく別世界の女としては描かず、カンナと同じようにデザインの世界で働く女性に引き寄せた。それによって、礼を挟んでカンナの働き方・生き方との具体的な対比を生み出している。

この変更によって、ドラマのテーマを「結婚・不倫トラブル」ではなく「女性の生き方」に置いていることがわかる。視聴者にわかりやすく、またドラマで描きたいことを際立たせるための調整が、第2話以降どう作用するか見守りたい。

視聴者目線の工藤阿須加



その他、原作と異なる登場人物で気になるのが、カンナの息子・麗音が通う保育園の保育士である青田壮介(青ちゃん先生)。演じているのは工藤阿須加だ。
SNSでは「工藤阿須加くんの保育士さん役…めっちゃいい……」「青ちゃん先生が保育園にいたら毎日幸せなのに」「青ちゃん先生のヒロイン感がすごい」と感想があがっていて、ハマり役の予感。

原作には登場しない人物である青ちゃん先生。カンナの元気がないと心配し、パワフルな姿を見ると元気が出る青ちゃん先生は、ドラマの視聴者のような存在ではないだろうか。制作側の「『カンナさーん!』を見た人に、こんな風に感じてもらえたら」という希望が、青ちゃん先生に乗っているように思う。
また、少し前までは「女性の仕事」というイメージが強かった保育士という職業。そんな仕事に就いている男性がパワフルに働く女性に憧れるという構図にも、新しい人間関係や生き方を肯定していきたいという制作の意図が感じられた。

第1話を見ただけでは、よくある「辛いことも笑顔で乗り切れ」系のドラマかと感じた人もいたかもしれない。
しかし、そこは『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』で、家族や男女の新しい人間関係を描くことに挑戦してきた火曜ドラマ枠。登場人物の設定にも細かく調整を入れているあたり、「辛いことも笑顔で乗り切れ」系ドラマを考えなしに踏襲しているわけではないのではないか、と期待してしまう。
原作からの変更点がどう活きていくかも楽しみに、ドラマを追っていきたい。

(むらたえりか)

『カンナさーん!』(TBS系列)
毎週火曜 よる10時から
脚本:マギー
演出:平野俊一、国本雅広
原作:深谷かおる『カンナさーん!』(集英社)