遊川さん、今度の新作は大丈夫?


遂にはじまった遊川和彦脚本の新ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ・水曜22:00〜)。

遊川さんは、オリジナル脚本のドラマをコンスタントに生み出している、最近では数少ない脚本家ということで以前より注目してきたのだが、『家政婦のミタ』の大ヒットでフォームを崩しちゃったのか、それ以降のドラマがちょっとおかしなことになっちゃっているのだ。

朝ドラとは思えない鬱展開で、主演の夏菜に「(『純と愛』で主演を務めてから)女優業が楽しくなくなった」とまで言わしめた問題作『純と愛』や、最終回に突然妻が死んでしまうという鬱エンドを迎えた『○○妻』などなど……。

『家政婦のミタ』も確かに衝撃展開の連続で人気となったドラマだったけど、「衝撃的ならいいってもんじゃないんだよ、遊川サーン!」と、新作を見るたびに思っていた。

そんな遊川さんも、2014年に結婚して以降、じょじょに作風がマイルドになってきている。……というか、妙にファミリー志向になっているようだ。

完璧すぎる契約妻を描いた『○○妻』、偽装結婚をしていたカップルが真実の愛に目覚める『偽装の結婚』、育児放棄された子どもと特別養子縁組をする『はじめまして、愛しています』、熟年夫婦を描いた初監督作品『恋妻家宮本』、そして今回の『過保護のカホコ』。

結婚に対して疑問を持っていたような時期から、子どもメッチャカワイイ期まで……ちょっと分かりやす過ぎじゃないですか(遊川さんのとこに子どもがいるかどうかは未確認だけど)。

そんな遊川さんの「過保護に育てられた子ども」ドラマ。果たしてどんな感じなのか?


過保護 VS 夢見がちなバカ?


根本カホコ(高畑充希)は、父・正高(時任三郎)と母・泉(黒木瞳)に超甘やかされて育ってきたため、大学4年なのに毎日母親に弁当を作ってもらって、駅までクルマで送り迎えしてもらい、着る服すら自分では決められない過保護な娘。

そんな感じなので当然、就職先も決まらないままなのだが、カホコ自身はあまり気にしていないようで、泉から「花嫁修業をすればいいんじゃない?」とか言われたら、あっさりと就活もやめてしまう。

そんなカホコが、同じ大学に通う苦学生・麦野初(竹内涼真)と出会い、その過保護っぷりにはじめてツッコミを入れられることによって「なぜ働くのか?」を考え、少しづつ変わっていく……。

とりあえず初回は登場人物紹介的なエピソードで、極端な衝撃展開もないポップな雰囲気。かつての明るく楽しい遊川コメディを期待できそうな予感なのだが、細かいところが色々とひっかかった。

そもそも、過保護で世間知らずで現実が見えていないカホコと相対する存在として、現実的な麦野がいるべきなのに、この麦野自体が世間知らずで夢見がちな男に見えてしまうのだ。

確かに、バイトしたり奨学金を借りながら大学に通っている苦学生なのは分かるが、教授から就職することを勧められても、画家を目指し「ピカソを超える!」とか言って就活をしない男に、

「大事なことが分かってないんだよ。そもそもお前は何のために働くんだ?」

「要するにお前はずっと子どものままでいたいんだよ。一生竜宮城にいて、社会に出て働くのが怖いんだよ。違うか?」

とか言われても……。

本当は自分も一生竜宮城にいて、現実を見ないで生きていきたいのに、経済的事情によってそれが許されない。それなのにカホコは……というイラつきから辛辣な態度を取ってしまうという立ち位置なのだろうか?

「親は子どもを甘やかし、学校は保護者を甘やかし、会社は社員を甘やかし、政府は役人を甘やかす……この国そのものが過保護の王国になってるんだよ!」

という「過保護」ディスのセリフも少々とんちんかんだ。コレだけブラック企業が問題になっているのに「会社は社員を甘やかし」? 政治家から役人への圧力が話題となっているのに「政府は役人を甘やかす」?

やっぱり世間知らずのバカが、画家としての才能を認められないストレスをカホコにぶつけているだけに見えてしまう。

どうして登場人物を動物でたとえるのだ!


「もう暗くて重い話はやめておこう、明るく楽しいドラマにするぞ!」……と思ったかどうかは分からないが、ポップな演出をしようとして、ちょっとスベッているのもつらい。

登場人物たちが突然「snow」アプリ風の動物顔になり、その動物にたとえながら人物紹介されていくのだが、その動物たとえがイマイチ上手くいっていないのでちっとも分かりやすくないのだ。

カホコのことを「まだ尻尾のあるかわいいカエル」というのはいいとして、母の泉が「目を光らせるミーアキャット」とか……ミーアキャットってどんな動物だっけ?

母方のおじいちゃんがウサギ、おばあちゃんがゾウ……。その他にもハムスターだトンビだナマケモノだと、そんなムリヤリ動物にたとえなくてもよくないか?

とりあえず流行りの「snow」とやらに乗っかっておこうというという気持ちが透けて見えすぎて悲しい。

そして、Googleアース風の地図に描かれた自宅を囲むハート型の境界線も謎だ。

地図上で説明されるだけならまだしも、実際の風景の中にもズドーンと壁が見えており(『進撃の巨人』かよ!)、どれほど重要な意味があるのかと思ったら「その領域内では母・泉が強気でいられる(泉のなわばり)」ということらしい。

カホコに関しては特にその領域から出ようが入ろうが関係なさそうなのだが、今後のストーリーにこの「領域」がどう絡んでくるのだろうか?

かわいいから全部オッケー!


色々と引っかかるポイントはあるものの、このドラマは「高畑充希がかわいい」という一点突破で細かいアラを吹っ飛ばすパワーがある。

とにかく顔芸がスゴイのだ。

美味しい物を本当にモグモグと食べ、納得のいかないことがあれば露骨に「うぬ〜?」という顔をし、嬉しいことがあれば一点の曇りもない笑顔を浮かべ、お腹いっぱいになったらバタッと寝てしまう。

……過保護どうこうじゃなくて、ただ単に頭の足りない子に見えなくもないが、次々と繰り出されるザ・無垢な表情の数々に、父・正高ならずとも、「もう、細かいツッコミどころなんてどうでもいい! カワイイから!」と思ってしまう。

また、そのかわいさがアイドル的なそれではなく、キッチリ「娘」としてのかわいさになっているからスゴイ。見ているこっちも完全に父親気分で「カワユイ〜」とニヤけてしまうのだ。

高畑充希といえば、『とと姉ちゃん』での、しっかり者なドヤ顔演技が記憶に新しいところだが、『とと姉ちゃん』とは180度違う、こんなにおバカでかわいらしい表情もできるのか! さすが芸歴が長いだけはある。

こんな子が身近にいたら、そりゃあ周囲の人たちも過剰に優しくしちゃって、過保護になるってもんだ。

みんなを幸せにする仕事って……


そんな純粋培養で育ったカホコが、麦野に言われるがまま、アルバイトを手伝わされたことによって、「みんなを幸せにするような仕事をしたい」という、なんともボンヤリとした目標を持つようになって第1話は終了した。

「魔法の国を作りたい!」と叫び続けていた『純と愛』を若干フラッシュバックしてしまうような目標ではあるが、とにかく今後はこの目標に突き進んで、

「私たちはその時、予想もしていなかった。ママがいないと何もできなかった純粋培養の過保護のカホコが、ひとりの青年と出会ったことで、私たちがおどろくような人間に成長していくのを」

ということらしい。

まだまだ本性を現していなそうな、キャラの濃い親戚連中との絡みや、第1話ではちょっと物足りなかった「過保護っぷり」など、今後、どんな感じで展開していくのか?

とりあえず、高畑充希のかわいさで引っ張っていって欲しい!
(イラストと文/北村ヂン)