監督・演出大根仁で、金曜22時、ドラマ「ハロー張りネズミ」が放送スタート。原作漫画は、「島耕作シリーズ」「人間交差点」の弘兼憲史だ。


最後のバレエのシーン、さすがにちょっと気持ち悪いんじゃないか?と、感じていたのだが、よくよく考えると、すごく素敵なシーンに思えてきた。

1話あらすじ


東京都板橋区下赤塚にひっそりと居を構える「あかつか探偵事務所」。探偵の五郎(瑛太)とグレ(森田剛)は、川田(伊藤淳史)から、交通事故で亡くなった娘に似ている女の子を探してほしいという依頼を受ける。同じ事故に遭った余命少ない妻に、元気な娘の姿を見せたいというものだった。

なんとか五郎とグレは、そっくりな少女・遥(三本采香)を見つけるが、遥は母親を亡くし、父親にDVを受け、心を閉ざしていた。五郎は何度も児童養護施設通い詰め、なんとか説得し、病院へ遥を連れて行くことに成功する。川田の妻は死んでしまうが、この事がきっかけで、川田が遥を引き取ることに。

問題のバレエシーン


めでたしめでたしで終わりそうな話なのだが、五郎は「結局、川田は死んだ娘の代用品として遥を引き取ったのでは? 遥にしても、代用品だと思いながら生き続けるのは辛いのでは?」という、疑問を持つ。そう考えると、確かにハッピーエンドかどうか、難しいところだ。

これに対して、あかつか探偵事務所所長・風かほる(山口智子)は、目の前にあるチューハイには、焼酎ではなくウォッカが入っていることを引き合いに出し、代用品でも悪くないと五郎を説得する。五郎はようやく納得がいった様子だった。

代用品として生きる人生も悪くない、このドラマとしての答えがこれだ。これは視聴者に対する問いかけにもなっている。これを受け入れられるのか、受け入れられないのかで、このドラマの感想が変わってくる気がする。

ただ、その後に川田が実の娘と同じように、遥をバレエ教室に通わせるシーンがあるのだが、これはどうかと思う。これでは代用品にも程があるし、ハッキリ言ってちょっと気持ち悪い。

やっぱりハッピーエンドだった


と、なんだかモヤモヤし観ていたのだが、よくよく考えてみたら、本当に川田が通わせたのだろうか? もしかして、遥が自分から通いたいと言いだしたのではないだろうか? という可能性もある。

遥は母親を亡くし、生きる意味を見失っていた。「私も死にたかった。一緒に」、このセリフからも、遥が未来に絶望している事はわかる。

そんな遥を、五郎は土下座をしながら「もし遥ちゃんが、自分が誰にも必要とされていないと感じているのなら、それは絶対に違う」と説得した。ここで、遥は代用品になる覚悟を既にしていたのかもしれない。

代用品になる事で、自分の存在意義を感じ、遥は生きる意味を見出した。だから遥は、川田に引き取られ、娘として生きていくことを受け入れた。

川田の娘として生きていく決意をした遥なのだから、川田の娘のようにバレエを習いたいと思っても不思議ではない。その思いを汲み取った川田が、素直に遥をバレエ教室に通わせたのではないだろうか。

お互いの足りない部分を補い合って生きる、やっぱりこの話はハッピーエンドだ。

まほろとリバースエッジ



脚本・演出を務めるのは大根仁。風変わりな依頼を受けた主人公が、人情で事件を解決する。そうなると、どうしてもテレビ東京系深夜ドラマ「まほろ駅前番外地」と「リバースエッジ 大川端探偵社」が思い浮かんでしまう。

確かに、この二つの作品と「ハロー張りネズミ」は、ザックリいうと同じ方向性のドラマだ。第1話は、内容的にも二つの作品で取り扱ってもおかしくないものだった。

方向性は同じでも、「ハロー張りネズミ」は、なんたって枠にとらわれないジャンルレス漫画。原作は、SFにもホラーにも恋愛にもサスペンスにもなる。

第2話は、原作ファンの中でも評判が高い「サンダー貿易編」だ。大根監督がどうアレンジするかはわからないが、この話をジャンル分けするとしたらエログロミステリー、みんな大好き深田恭子演じる蘭子が、すごい事になってしまう。

1話は、人情強めの「ハロー張りネズミ」のベースになる話だったが、公式ホームページのアオリ文句「まったく新しい変幻自在な探偵ドラマ」の本性を表すのは、これからだ。
(沢野奈津夫)