『銀魂』と相性が良すぎる福田雄一監督


空に天人の宇宙船が飛び交い、日本家屋と高層ビルなど近代建築がカオスに入り乱れる江戸の町並み。CGをフル活用して造られたかぶき町のチープなこと!
そんなオープニングで『これぞ『銀魂』!」と言える人、こんにちわ。あるいは「メッチャ金の掛かった『勇者ヨシヒコ』じゃん!」と小躍りできる人、いらっしゃい。あなた達は、1800円の入場料を払って1万円の満足感を持ち帰れる幸せな人たちだ。
『ONE PIECE』が累計発行部数3億4千万部に対して、『銀魂』は5千万部。つまり、『銀魂』ファンはワンピよりも選りすぐりの読者である。それだけ「許せる」「許せない」の一線が厳しいわけで、実写版の企画が難航したのもそのためだろう。
そんな中で原作者の空知先生が、この監督なら行けるんじゃないか?と思ったのが、『勇者ヨシヒコ』シリーズや『アオイホノオ』の福田雄一監督だったという(以下、ソースはパンフレット)。
どこが気に入ったか。コスプレ感まるだしでも「違うところ」に面白さを求めるやり方だ。うん、「ヨシヒコ」なら「勇者が魔王を倒しに行く」ドラクエの王道をやりながら、脱力ギャグ。『アオイホノオ』はあだち充や高橋留美子(敬称略)などの許可を取って漫画のコマを使う原作リスペクトっぷり。
どうあがいても、国産映画はハリウッドと比べれば予算には限りがある。その枠の中でベストの実写『銀魂』が撮れる男は、福田雄一監督しかない!ってことだ。
そんなわけで、今回のレビューは「原作やアニメを知ってること」前提。原作ファンが知ってることはガンガンすっ飛ばす、不親切な原稿を心がけております。あと多少ネタバレあり。


「ゴージャスな学芸会」が感動のドラマへ!


コスプレ上等! 本物の役者やスター達が演じているゴージャスな学芸会、これぐらい心のハードルを低くすることがちょうどいいスタート地点だ。
坂田銀時こと銀さん、ツッコミ役の志村新八、酢昆布大好きな美少女の神楽。この3人に小栗旬、菅田将暉、橋本環奈のキャスティング、もう文句はひとことも言えない。
『銀魂』はギャグとシリアスの振れ幅が激しい作品である。ギャグだからとニ等身になったりせず、どちらも地続きの人格だ。彼ら万屋3人のキャストは、両極端のキャラを憑依させられる演技力を持った人選ということ。
はじめは「天パのかつらを被った小栗旬」以外の何者でもない存在が、じわじわと銀さんに見えてくる。メガネを付けた菅田将暉が世界一のツッコミ役・新八になり、橋本環奈が語尾に「アル」とつけても違和感のない「いつもの神楽」へと化けていく。
なんと学芸会が「感動のドラマ(ないしコント)」に! 福田監督の見せ方や俳優陣の熱演により、どんどん小栗旬が鼻くそをほじり、橋本環奈がゲ○をはいても「神楽だしな」とキャラに馴染んでいくさまを楽しむ映画なのだ。

紅桜篇のていねいな実写化


ストーリーは原作漫画83〜84話の「カブト狩り」と、テレビと劇場版とで二回アニメ化された紅桜篇(89〜97話)がベース。将軍様の逃げたペット(カブトムシ)をめぐってドタバタの全編ギャグでつかみ、客席を温めてから人気の高いシリアス巨編につなぐウマい構成だ。
もうね、現場中継してる古畑星夏=結野クリステルにいちいち「結野アナ(けつのあな)」と名乗らせることが卑怯。すでに腹筋が痛くなったところで真選組が登場し、局長の近藤勲もハチミツを全身に塗りたくって登場……中村勘九郎に何やらせてんだー!
恐ろしいのは「やらされてる」ではなく「本人が望んでやってる」こと。小栗旬に声をかけられた中村は「俺ゴリラでしょ」と自分で言い出し、このためにジムに通ってムキムキにしたとか。そのかいあって、多くない登場シーンのほとんどは半裸か全裸(股間のモザイクが薄い)。
実写化された紅桜篇は、ほぼ原作やアニメと同じで、真選組の出番が増えた劇場版に準拠してる感じ。よく言えば原作を大事にしていて、ストレートにいえば福田監督にしてはおとなし目だ。やはり安心して「原作を預けられる監督」なんですよね。

意外に?できのいいアクションシーン


巨大なペットの定春もCGで描かれ、町を走り回ったり銀さんに噛み付いて流血させるのも原作通り。そしてエリザベスも原作通りのきぐるみ。実写化のデメリットを最大限に活かしており、「日常に侵入した巨大きぐるみ」感がメッチャこわい。
ギリギリまで伏せられていたエリザベスの「中の人」の声は、「勇者ヨシヒコ」の山田孝之だった。福田監督が深夜ドラマで仕事をともにした俳優達、通称「福田組」が本作でも出演してるなか、山田の役だけがなかった。そこでオファーしたところ快諾。ただし、セリフ一言だけ。なんという贅沢な使い方や……。

心配されたのがアクションシーン。ほら、「ヨシヒコ」にも本格アクションなんてなかったし。が、フタを開ければアニメにも負けない迫力の殺陣で、VFXにも力が注がれ、銀時VS岡田似蔵、土方VS似蔵や神楽VSまた子の「腕力と2丁拳銃の激突」まで、ド迫力かつスピーディー。
そのタネ明かしは、小栗旬が自らアクション指導も連れてきたから。そういやこの人、実写版『荒川アンダーザブリッジ』でも「かっぱの村長」役をやりたいと自分から言い出し、正気が疑われた実写版『ルパン三世』も成功させた立役者だった。漫画やアニメ実写化の守護神、小栗旬……!

最大の見どころはエンドロール(版権的に)


やはりギャグパートこそ福田監督のホームグラウンド。シリアス7割、ギャグ3割といわれる紅桜篇だが、原作通りのネタに加えてオリジナルのギャグが超面白い。
お妙さんが長澤まさみ。『銀魂』の連載誌といえば、集英社の「週刊少年ジャンプ」。うん、『ドラゴンボール』の朗読させたくなるよね! 新八=菅田将暉だし、グ○ブルCMネタをやりますよね。
そして神楽が鬼兵隊に捕らわれてるシーンで、なぜか始まる大食い王決定戦。司会は中村有志で、TVチャンピオンの完コピじゃん! これは製作委員会にテレビ東京が入ってるからできること。
そして平賀源外=ムロツヨシと武市変平太=佐藤二朗。『勇者ヨシヒコ』でもおなじみの二人は、いつも通りのムロツヨシと佐藤二朗だった。
武市は紅桜篇のシリアス部分にも出るのだが、完全に「勇者ヨシヒコ」。原作にあった策略家の面はどこへやら、「ロリコンじゃありませんフェミニストです」ネタを膨らませる純度100%の変人だ。
源外パートは、むしろ「予算の都合でヨシヒコではできなかったこと」に振り切ってる。ムロツヨシは(本作では)どんな武器でも作れて修理できる発明家だし、色んなクライアントもいる。赤くて3倍速い人でも、製作委員会にバンダイが入ってるから安心だ!
そんなこんなで、「版権ネタが完全にクリアされたきれいな『勇者ヨシヒコ』」と評判になってる実写版『銀魂』。そうか、とエンドロールのクレジットを眺めて関わった企業の名前をチェックすることも大きな楽しみ。一秒でも目をつぶってる暇なんてない。
あのネタはオッケー。あれもクリア……えっと、源外がクライマックスで持ってきたアレは? 青い人が乗ってきて、鉄子(早見あかり)が「大丈夫なの? 怒られない?」とキョドり、源外が「微妙にデザインが違うから」と言い訳をしていたアレ。「ジ」と「リ」が含まれている企業名がどこにもないよ!

ある意味、エンドロールが一番盛り上がる実写版『銀魂』。このトキメキ(版権的に)を再び味わえる続編『銀魂2』を熱望します!!
(多根清史)