11名の劇作家と3人の映像作家がタッグを組み、下北沢を舞台に毎回さまざまな「人生最悪の一日」が繰り広げられるドラマ『下北沢ダイハード』がスタートした。


演劇ならではの物語、ドラマならではのカット


第1話の物語はまさに下北沢の玄関、駅前からはじまる。SMを趣味とする国会議員、渡部(神保悟志)がプレイの一環で全裸でスーツケースに入った状態で下北沢へ。そのスーツケースが取り違えられ、誘拐の現場に運ばれてしまう。その犯人の一人に売れない舞台役者である自分の息子がいて……。
息子がいよいよ殺人まで犯してしまうのではと焦った渡部がスーツケースから登場したのち、その場所がどこか視聴者に明かされるシーンの手際がいい。説明台詞なしに少しずつ挟まれるカットでその場所が明らかになってゆくこの部分は、演劇ではできない表現だ。カットが切り替わるたび静かに盛り上がってゆくクライマックスの画づくりには、演出の関和亮の手腕が光っている。
第1話の脚本を手がけたのはTAIYO MAGIC FILMの西条みつとし。『エンタの神様』にも出演したことのある元お笑い芸人の彼が劇団を始めたのは2012年。そこから5年で12回、かなりのハイペースで公演を続けている。このドラマに参加する劇作家の中ではキャリアは浅いほうだが、「取り違え」「どんでん返し」とエンターテイメント性の高い物語を40分間におさめ、第1話にふさわしいドラマと演劇の橋渡しを行った。

自分の足でつくった企画


このドラマを仕組んだのはテレビ東京の濱谷晃一プロデューサー。『怪奇恋愛作戦』や『バイプレイヤーズ』など、演劇にゆかりの深い作品を多く手がけてきた彼が満を持して放った企画だ。その劇作家のラインナップに本気度が見える。細川徹や喜安浩平など、映像の脚本も多く手がけている作家から、いまいちばん勢いのある劇作家のひとり、20代の根本宗子まで。徹底してコメディしかやらない上田誠、ボーイミーツガールを描かせたら小劇場界随一の三浦直之、日常と変態が淡々と同居する松井周……。小劇場とひとくくりにいっても、数え切れないほどの劇団があり、本当に様々なタイプの演劇があるが、この11人の作品を見ればひとまずはいまの小劇場を語れるのではないかと思えるメンツが揃っている。自分の足で芝居を観ている人がたてた企画だから、信頼できるし、期待がもてる。


特別編も必見! 古田新太の最悪の一日


案内人は古田新太と小池栄子という、下北沢にゆかりある二人(『万獣こわい』での二人の演技は忘れられない)。彼ら二人がいることで、それぞれの作品に太鼓判が捺されたような安心感が生まれる。ちなみに、期間限定で配信中の特別編エピソード0「記憶をなくした男」では古田が主役の「人生最悪の一日」が繰り広げられる。この脚本を手がけたのは玉田企画の玉田真也。ちょっとした会話の中の微妙な譲り合いや気まずい瞬間を笑いに変え、公演ごとにファンを増やしている気鋭の劇作家。この特別版は、この企画が隅々まで手を抜いていない証左のような作品になっている。

今夜放送の第2話はこのメンバーの中ではベテランの細川徹。光石研を主役に、これまた小劇場界を代表する池田鉄洋が本人役で出演。どうやら2話連続でおじさんの裸が披露されるようです。演劇ではそんなに出てこないはずなのに、劇作家が下北沢を舞台にドラマを書くと、裸を出したくなるものなのだろうか。
(釣木文恵)