『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第17週。

その昔、菊村栄(石坂浩二)が入れあげた挙げ句、妻・律子(風吹ジュン)が自殺未遂を起こしてしまったという、いわくつきの女優・安西直美。

その直美の孫・アザミ(清野菜名)と菊村がいよいよご対面することになる。

かつて、「今すぐ会えるというなら、若く輝いていた昔の律子より、死期の迫った晩年の律子に会うことのほうを選ぶに違いない」なんて語っていたように、亡き妻をいつまでも愛し続けているイメージがあった菊村センセイなのに、アザミと会えるとなったら妙にウキウキしちゃって……。

やっぱりアンタも若い子が好きなのか!


菊村センセイ、ちょっと薄情すぎるよ


アザミとの対面の前に、及川しのぶ(有馬稲子)の退場があった。

以前より、認知症が悪化して徘徊癖が出ていた及川しのぶだが、最近では、かつて出演したホールの楽屋口を目指して徘徊していた。彼女の中では自分のリサイタルの当日がずっと続いているのだ。

徘徊した挙げ句、踏切の中に入り込んでしまったりすることもあり、「やすらぎの郷」では手に余るということで、徘徊老人を拘束するような設備のある施設に移されることが決定する。そうか、「やすらぎの郷」から去るのは死んだ時だけではなく、こういうパターンもあるのか。

「これでもう祭りは終わり」

とつぶやいて「やすらぎの郷」から去って行った、悲しすぎる及川しのぶの姿は他の老人たち的にもショックだったようで、マヤ(加賀まりこ)はしみじみと「ああいう姿だけにはなりたくないな」なんて言っていたが、アザミとの対面を控えて浮かれている菊村センセイは、

「私の心からたった半日で及川しのぶが風化していった」

とのこと。

これを見た時は「さすがにヒドイ!」と思ったが、菊村センセイは後に特大ブーメランを喰らうこととなる。

浮かれるジジイたちに強烈な一撃が


身近な仲間が「やすらぎの郷」から去っていったことも吹っ飛ぶほど、浮かれまくっている菊村センセイ。

マロ(ミッキー・カーチス)からオススメのカフェを聞き出したり、ここぞとばかりに床屋に行ったり、しまいにゃ「火曜日までは死んではならない」なんて思う始末……。

さすがにアザミに対してエロスな意味で下心を抱いているわけではないと思うが、かつて安西直美と会う時に感じていたような、妻に対する罪悪感をほんのり抱いているあたり、何かをちょっぴり期待していることは間違いない。

安西直美の孫。しかも当時の彼女にそっくりとはいえ、自分にとって孫……ヘタしたら曾孫レベルの若い娘に会うのに、ここまで浮かれてしまうものなのか。

ま、しかし、そんな菊村の気持ちが分からないでもないくらい、アザミ役の清野菜名ちゃんはかわいかった!

当時の直美と、しぐさから香りまでそっくり……という菊村の思い出補正を抜きにしても、バツグンのジジイ転がしスキルを持っているのだ。

ジジイのたわいない話を嬉しそうに聞く、ジジイが目の前でタバコを吸ってもイヤな顔をしない、ジジイから酒を勧められたらグイグイ飲む。

さらには初対面のジジイ相手に「本当は私、無口なんですけど、今日は私、ばかにおしゃべりです」なんて嬉しいことを言ってくれる。

清野菜名ちゃん自身の、美人だけど今時な感じではない、ちょっとあか抜けないルックスも相まって、菊村センセイのみならず、おっさん視聴者たちも完全に転がされてしまったのではないだろうか。

そういえば清野菜名ちゃん、内村光良監督の映画『金メダル男』での80年代アイドル役がメチャクチャハマッていた。やはりジジイのノスタルジーを刺激するオーラを持っているんだなぁ。

そんな清野菜名ちゃん……じゃない、アザミに心を奪われたジジイどもに強烈な一撃が。

アザミの祖母にあたる安西直美が、東日本大震災で亡くなっていたことが明かされる。

及川しのぶの件を自分の中でさっさと風化させてしまい「3・11の風化を笑えない」なんて思っていた菊村も、これにはガツンとやられたようだ。

倉本聰は東日本大震災をどう描いたか?


東日本大震災以降、ドラマや映画において、震災をどう描くか、描かないかというのは大きな問題となっている。

やはり物語の中で震災を扱ってしまうと、全体が震災に引っ張られすぎてしまうので、「なかったことに」とまではいわないまでも、あえて描かないことを選択している作品が多いように感じる。

震災自体をテーマにした作品以外で、上手いこと震災を取り入れているドラマというと、『あまちゃん』くらいしか思い浮かばない。

そういう意味で、主人公たちが直接震災で大きな被害を受けるのではなく、過去に恋していた相手が、忘れかけていた東日本大震災で死んでいたことを知る。……という『やすらぎの郷』の描き方はいい距離感だ。

震災シーンも回想ではなく、震災当時の様子を書いたアザミのシナリオを読んだ菊村によるイメージ、という形をとっているおかげで、映像が必要以上に生々しくもショボクもならずに済んでいた。

震災時の津波の中で、祖母の手を放してしまったことを今でも悔やんでいる様子のアザミ。

そして、震災後に見つけた祖母の文箱に入っていた「許してください、どうしても妻を捨てられません。あなたのことは今でも愛しています」という手紙。

これが菊村からの手紙だということをアザミが知っていたのか知らなかったのか? 要は菊村と祖母が不倫的な関係にあったことを知って会いに来ていたのか?

この辺は、今後の大きなテーマになってきそうだ。

またもジジイに都合のよすぎる展開!


それにしてもアザミが、別れ際に抱きついてきたのは、どういう意味だったのだろう。尊敬する脚本家の先生と会えたからって、いきなり抱きつくなんてことあるか?

ましてや、祖母が不倫していた相手だと知っていたとしたら……。

あのシーン、見ているジジイに対してのサービスカットとしか思えないのだ(あだち充漫画における入浴シーン的な)。

ジジイにとって都合のいい若い子を出して、視聴者のジジイたちを気持ちよ〜くしてくれる、というだけのシーンなんじゃないかと。

じゃないとすると、アザミ側に何か深い意図があるとしか思えない!

ジジイ向けサービスカットといえば、ハッピー(松岡茉優)も相当ジジイ・サービスしていた。

アザミとの対面後、バー・カサブランカで、若い子と会って楽しかっただの、若返ってギンギンだのと語る菊村を見つめるハッピー。その表情がワンショットで抜かれていたが、微妙に悲しそうな……「私の方が菊村センセイのことを好きなのに」とでも言いたそうな表情に見えたのはボクだけだろうか!?

あれもやっぱり「若い娘がジジイに心寄せている!」と思わせ、気持ちよ〜くさせるためのサービスカットだったんじゃないかな?

ババアたちのFacebookコミュニティーが怖い!


そんな、ジジイを浮かれさせてくれる若い娘たちに対して、ババアたちは今週も怖かった。

菊村がアザミと会うことにしたカフェの場所をFacebookで拡散され、みんなで待ち構えているという……。そりゃあ菊村も「天国から地獄」と思うよ。

……というか「やすらぎの郷」の老人たち、メールだけじゃなくて、Facebookまでやってるんですね。

マロ役のミッキー・カーチスは、リアルにFacebookやTwitterを使いこなしていることでお馴染みなので、やっぱりマロ主導でやっているという設定なんだろうか?
(イラストと文/北村ヂン)