『やすらぎの郷』で、脚本家志望の女子大生を演じて強烈なインパクトを残した清野菜名ちゃんが、後番組となる『トットちゃん!』で黒柳徹子役を演じると発表されましたね。

ずっと主演が発表されていなかったので、誰がやるのかと思ってたら……そうかー、そこか!

『やすらぎの郷』への出演は、後番組で主演する女優のお披露目的な意味もあったのかな? などと考えてしまうが、ドラマの中で石坂浩二を翻弄していたように、おっさん&ジジイうけしそうな雰囲気を持った娘なので、『トットちゃん!』でもガッツリと高齢男性たちのハートをつかんじゃうことだろう。

昨年NHKで放送されていた『トットてれび』の満島ひかりが演じていた徹子と、どう変えてくるのかも気になるところだ。……そういえば、1987年の映画『トットチャンネル』では、今話題の斉藤由貴が徹子役を演じてましたね。

ま、それはいいとして『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第18週。


ライター的には恐ろしいシチュエーションです


アザミ(清野菜名)との対面&アザミの書いた脚本の件をまだ引きずっている菊村栄(石坂浩二)だったが、やすらげない老人ホーム「やすらぎの郷」では、また新たな事件が。

映画・テレビ業界の歴史について調べているルポライターの立木公次郎(きたろう)が、姫こと九条摂子(八千草薫)に戦時中の映画業界について聞くため「やすらぎの郷」を訪れたのだ。

最初のうちは姫もノリノリで、「日本映画の父」と呼ばれた牧野省三をはじめ、伊丹万作だ伊勢野重任だと、かなりの高齢者じゃないと分からないネタを熱く語っていたのだが、話題が千坂浩二監督の件になると、とたんに口が重くなってしまう。

姫の初恋の相手であり、永遠の恋人。戦時中、アッツ島で玉砕して帰らぬ人となった千坂監督だ。

その千坂監督が当時、軍に協力して戦意高揚のためのフィルムを撮っていたのだという。

立木は、千坂監督が撮ったと思われるフィルムを入手しており、その映像を見せながら、千坂監督がどんな気持ちで軍に協力していたのかを姫から聞きだそうとするのだが、

「千坂先生は私にとって本当にひとりだけの大事な方なのね。その人を貶めるようなインタビューなら、私、これ以上お話できません」

と言って、姫は部屋を飛び出してしまう。

立木と同じく、誰かにインタビューしたりするライターとしての立場から言わせてもらうと、インタビュー相手がイヤがりそうな話題をあえて振ってみて反応を見るというのはしばしば使うテクニックなので、コレで部屋を出て行かれちゃうのはツライ!

しかも、インタビュー場所に「やすらぎの郷」事務局の人間が立ち会うのはまだしも、菊村や秀サン(藤竜也)など、明らかに関係のない人(しかも業界の大物)までいるというシチュエーションも、すんごくプレッシャーだ。

ジャニーズの若手グループにインタビューしに行ったら、マネージャーだけじゃなく、ジャニーさんやメリーさん、マッチ、ヒガシまでついてきた! 的な恐ろしさがある。

このように、ライターという立場から立木に感情移入して見ていると、千坂監督が軍に協力していたことを非難しようとか、姫と千坂監督のスキャンダラスな関係を暴いてやろうとか、そういうことではなく、事実関係をフラットに説明した上で当時のことを聞き出そうとしているんだろうな……と察することができる。

ただ、立木役であるきたろうの演技が妙に暗かったので、一般視聴者が「裏に何か隠しているうさんくさいライター」という雰囲気を感じてしまったのではないかとちょっと心配だ。

ライターなんてみんな陰気で粘着質なタイプで……あんな感じなんですよ!(偏見)

倉本聰の描く戦時中のリアルとは


これまでテレビ業界の黒歴史をふんだんにぶっ込んできた倉本聰だが、戦時中の映画人による国策協力というのはある意味、日本の黒歴史だ。

当時、作家や画家、映画人といったアーティストたちも、戦意高揚のために軍への協力を強いられていたというのはよく知られている話。実際に「戦争バンザイ」な映画が多数製作されていたようだ。

そういうご時世を考えると、千坂監督が軍に協力して戦場の記録フィルムを撮っていたというのも仕方のないことだろう。

ありがちなドラマだと、「実は千坂監督は反戦思想を持っていて……」みたいな話になるところだろうが、戦争に対してそういう紋切り型な描き方をしないのは、実際に戦時中を知る倉本聰ならではといったところだろうか。

当時の映画人はみんな、軍からの命令でイヤイヤ国策映画を撮っていた……と思いがちだが、戦時中から活躍していた映画監督・吉村公三郎の自伝『キネマの時代』によると、

「映画人の社会的地位の最も高かったのは、太平洋戦争の最中であったと私は思う」

「今日、テレビ・ドラマなどで戦争中の風俗が扱われると、決まって二人や三人の厭戦思想の持ち主が現れるが、ああいうのは全くの嘘で、あんな連中はいなかった」

というような記述がある。

菊村の口からも、

「平和になった今だからみんな戦争はイヤだって大声で言うけどさ、当時はみんな口が裂けてもそんなこと言えないムードだったしね」

と語らせているが、国策映画にいいも悪いもなく、国に協力するのが当たり前というのが当時のリアルだったのだろう。

さて、そんな千坂監督が撮っていた記録フィルムだが、戦場で日本兵が敵兵を銃剣でめった刺しにするシーンの合間に、なぜかプライベートで撮ったと思われる姫の映像がはさみ込まれていた。

戦場から一時帰国した際に、声をかけるでもなく、道ですれ違う一瞬、カメラを回して姫の姿を撮影するというシーンは切なくて、単純に「戦争はんたーい」とか言われる以上に胸に迫ってくる。

……そうやって撮影したフィルムを、虐殺映像の間にはさみ込んじゃうセンスはまったく分からなかったけど。

震災&戦争がテーマかと思いきや……


前週の東日本大震災の話題に続き、今回は戦争がテーマだったわけだが、共通して語られていたのが「自分、もしくは身近な知り合いが関係していないことは、自分ごととして考えられない」ということ。

これまで戦争を描いた映画や、実際の戦争映像を見た時には平気だったのに、初恋の相手である千坂監督が撮った、千坂監督の目の前で繰り広げられていた映像を見たら大きなショックを受けた姫。

東日本大震災のことをすっかり忘れかけていた菊村も、かつて自分が恋した相手が震災の津波に飲まれて死んでいたことを知って、リアルに考えるようになった。

倉本聰から「忘れるなよ!」というメッセージをぶつけられるとともに、「でもお前らはどうせ自分ごととして考えられないからな」と言われているような気がしてしまう。

いよいよ終盤にさしかかってきた『やすらぎの郷』だが、ここにきて震災と戦争という大きなテーマが提示され、今後のストーリーはこのあたりに集約されていくのかな……と思いきや、第19週はマロ(ミッキー・カーチス)と伸子(常盤貴子)の結婚に向けてのドタバタ話が展開されるようだ。

いまだにどうやって終わるのか予想のつかない『やすらぎの郷』。とにかく倉本聰が世間に訴えかけたいこと全部ぶっ込んできているんだろうということは分かった! もう、どこまでも付き合うぞ!
(イラストと文/北村ヂン)