♪パーパーパパパー というテーマソングもすっかりおなじみとなった日曜劇場『陸王』。中小企業が行事とかで流せば社員の意気も上がりそうだ(サントラ発売中)。

先週放送された第7話の視聴率は14.7%。ムムッ。ちょっとストレスフルな展開が続いているので、世のお父様方の視聴意欲も下がってしまったのだろうか。

これまで「課題→頑張る→♪エビデ〜→解決」というドラマのPDCAサイクル(適当な命名)を繰り返して視聴率を上げて『陸王』だが、後半からは第6話の後半からの課題がどんどん山積みになっていき、それを最終回近くで一挙に解決するという展開になっていきそうだ。こはぜ屋も、視聴者も、ここが耐えどきである。


シルクレイ製造装置が鉄クズに……大ピンチ


第7話でも、怒涛のようなトラブルが宮沢(役所広司)率いるこはぜ屋を襲う。まず、ランニングシューズ「陸王」のアッパー素材を供給していたタチバナラッセルが大手シューズメーカーのアトランティスと提携してしまい、アッパー素材の供給が打ち切られてしまった。新たな手立てもなく、意気消沈するこはぜ屋の面々の前で、宮沢の息子・大地(山崎賢人)が素材探しに名乗りを上げる。

意気込む大地は一晩で全国の織物メーカーを調べ上げてリストを作ってきた。大地の力強い言葉に、宮沢をはじめ、飯山(寺尾聰)もあけみさん(阿川佐和子)も嬉しそうだ。だが、世の中そうは甘くない。ビジネススーツで交渉に赴く大地だが、織物会社は相手にもしない。

イヤミたっぷりな織物会社の社員を演じた矢野浩二は、主に中国で活躍している俳優で、13年、14年連続で「中国で人気の日本人タレント」1位を獲得した。昨年より日本での活動を本格化している。ディーン・フジオカや大谷亮平のようなアジア発の逆輸入俳優になれるかどうか注目だ。

アッパー素材の確保に苦しむこはぜ屋にさらなる試練が襲いかかる。ソール素材「シルクレイ」の製造装置が増産に耐えられなくなり、炎上してしまったのだ。文字通り黒コゲになってしまった製造装置。

「こいつは、もうただの鉄クズだ……」と悲嘆に暮れる飯山に高らかなテーマソングが「♪パーパーパパパー」と重なる。違和感がすごいが、今回はこのタイミングしかなかったのだろう。それだけダウナーな展開が続いているということだ。

口跡良く相手を詰める市川右團次の恐ろしさ


再び「シルクレイ」の製造装置を作るには1億円が必要だという。銀行から借りるのは絶望的だし、借りることができたとしても、巨額の負債によって会社が押しつぶされてしまう可能性が高い。当然ながら、埼玉中央銀行の家長支店長(桂雀々)はけんもほろろ。「陸王」に好意的になった大橋(馬場徹)も「リスクが高すぎる」と反対する。

「シルクレイがなければ、こはぜ屋はまたただの足袋屋に逆戻りです」

と、なぜか薄笑いを浮かべて大橋に頭を下げる宮沢。そんな宮沢の態度に、こはぜ屋に協力していたカリスマシューフィッター・村野は激昂する。このままでは「陸王」を履きたいと言ってくれたランナーたちの気持ちを踏みにじることになってしまうからだ。問い詰める村野に対して、うつろな表情を浮かべる宮沢。

「我々だって命を賭けるぐらいの覚悟が必要なんだ。さもなければ、安易にシューズなんか供給すべきじゃない。私が聞きたいのは、宮沢さんにその覚悟があるかということです」
「私だって、もちろん、できることなら、サポートしたいと思っていますよ」
「できることなら? 宮沢さんはできないと思っているんですか? 答えてください」

市川右團次の口跡の良さが、裏表のないまっすぐな村野の人柄を表している。大変小気味良いのだが、言われている相手はたまらないだろう。それを受ける役所広司は表情だけで、いわゆるわかりやすいダメさ(酒浸りとか精神破綻とか)ではない、微妙なダメさを巧みに表現している。宮沢は半沢直樹のようなスーパーサラリーマンではなく、どこにでもいる零細企業の経営者なのだ。

今週も見せ場あり、音尾琢真


ニューイヤー駅伝で快走を見せたダイワ食品の茂木(竹内涼真)にもプライドを傷つけられるような事件が起こっていた。

茂木に『月刊アスリート』から取材依頼が持ち込まれる。以前、インタビューを受けたとき、言ってもいないライバル・毛塚(佐野岳)への賛美を書かれるなど酷い目に遭った茂木だが、「怪我から復活した茂木選手の話は同じように怪我で苦しむアスリートたちに勇気を与えるはずです」との殺し文句でインタビューを引き受ける。茂木は茂木なりに、苦戦する「陸王」のパブリシティに貢献したいという気持ちがあったからだ。

『月刊アスリート』の取材に「陸王」を持ち出してはりきって答える茂木。だが、今回も記事は毛塚メインの特集になっており、自分の扱いは極小、「陸王」についてのコメントもビタイチ採用されていなかった。特集の前にはアトランティス「RIIのカラー広告。アトランティスが広告出稿をタテに特集内容をねじ曲げてしまったのだろう。

さすがにブチ切れる茂木だが、城戸監督(音尾琢真)は「放っとけ」と受け流す。「なんでですか!」と身体全体を震わせて抗議する茂木に、城戸は言う。

「そんな暇があるなら走れ!(雑誌をパーン)これが世の中だ。気に食わないなら力でねじ伏せるしかない。自分の走りを見せるしかない」

超正論。ブチ切れていた茂木も黙るしかない。「お前が納得できる状況は、自分の走りで作れ」という言葉は、ナポレオンの名言「状況? 何が状況だ。俺が状況を作るのだ」に通じるものがある。今週も音尾琢磨には名場面が用意されていたのであった。

今週の「♪エビデ〜」タイムは、紙!


ヤキが回った宮沢は、大地との関係もギクシャクしてしまう。社員の前で息子を大声で罵り、言い返されると椅子をバンバン叩く小物っぷりよ。そこへ現れるのが、こはぜ屋に肩入れするあまり左遷されてしまった銀行マン・坂本ちゃん(風間俊介)だ。「ここらが潮時かな」と弱気な宮沢に、坂本は厳しい口調で問う。

「先ほどから話を聞いていると、一番大事なことが抜け落ちている気がします」
「何だよ、大事なことって」
「社長のお気持ちです。宮沢さん、あなたはどうしたいんですか?」

悪いことが重なれば、誰だって状況に流されてしまいがちになる。状況のせいにして、自分の気持ちを殺してしまうこともある。だが、状況は自分で作らなければならないのだ。やるか、やらないか。そもそも、この状況を作り出したのは、宮沢の「やる」という決断だったはずだ。

今週の「♪エビデ〜」タイムは意外なところに現れた。こはぜ屋に見切りをつけて就職活動をしていると思っていた大地だが、実は面接を蹴って織物メーカーを回っていたのだ。大地が作ったリストは書き込みだらけ。それだけ回ったということである。ここで「♪エビデ〜」が流れる。これまでに比べても、一番地味なシーンだったかもしれない。だがそれがいい。息子は「やる」と決めたのだ。それに奮い立たない父親はいない。

音楽に合わせて、懸命に働き続けるこはぜ屋の人々と、雨の中で走り続ける茂木の姿が映し出される。彼らも「やる」と決めた人たちだ。「望むように生きて輝く未来を」という歌詞ともよくマッチしていた。決断した宮沢は、社員を集めて頭を下げる。

「悔いの残らない、諦め方をしたいと思う。だから、もう少しだけ、悪あがきさせてくれ!」

そしてついに松岡修造登場!


銀行に見切りをつけて、ベンチャーキャピタルへの転職を明かした坂本ちゃん。視聴者は「オッ」と思ったはずだが、結果はダメ。だが、最後の最後で宮沢に「会社を売りませんか?」と提案してきた。

溜めに溜めて最後に登場するのが、世界的アウトドア企業のFelixの社長、御園丈治(松岡修造)! 彼らは「シルクレイ」に目をつけて飯山に接触していた。だが、飯山に断られたため、こはぜ屋ごと買収しようとしているのだ。Felixはアトランティスにも比肩する資本を持つ巨大企業。その社長である御園は、いわばジョーカー的存在である。

クールな切れ者っぷりを漂わせながら空港に降り立つ御園。はたして本格的な演技が初めての松岡修造にこんな大役を任せていいの? 終盤戦ですごいギャンブルに出たぞ、『陸王』。ちなみに松岡本人は人気ドラマで重要な役柄を演じることについて「テニスで言えば初心者がグランドスラムに出場するようなもの」と表現しているが、それって絶対負けるじゃん!

こはぜ屋も修造も大丈夫か? 運命の第8話は今夜9時から。
(大山くまお)