テレビ朝日の木曜ドラマ「ハゲタカ」(夜9時〜)は、先週放送の第6話で、電機メーカー「あけぼの」の買収劇を描く第2部が完結した。


ついに総理大臣まで登場


何としてでもあけぼのを手に入れたいPCメーカー「ファインTD」社長の滝本(高嶋政伸)は、あけぼのの会長・新見(竜雷太)を取り込む。これに対し、主人公・鷲津政彦(綾野剛)率いるサムライファンドは、あけぼのに対するTOB(株式公開買い付け)を発表していた。

第6話の冒頭では、いきなり滝本が鷲津に土下座するシーンから始まった。早くも敗北宣言かと思えば、あけぼのを譲ってほしいという泣き落とし作戦であった。これが効かないとなると、今度は屏風の裏に隠していた札束の山を見せて、現ナマ攻勢に出るが、鷲津はそれが罠だと見抜く(案の定、隠しカメラで盗撮されていた)。やけになった滝本は、札びらをばら撒く乱心ぶり。高嶋政伸のエキセントリックな演技がここぞとばかりに繰り広げられる。「滝本社長、愉快な余興をありがとうございました」と、視聴者の気持ちを鷲津が代弁してくれた。

このあと、滝本はマスコミを使って大がかりな鷲津バッシングを展開する。これに対抗すべくテレビ番組に出演した鷲津は、テレ朝の大下容子アナ(本人)のインタビューに対し、ファインのバックにはアメリカの軍産ファンドの「プラザ・グループ」がついていることを暴露。世間は騒然となる。

鷲津の暴露をきっかけに、プラザは表立ってあけぼのにTOBを仕掛ける。圧倒的な資金力を前に、鷲津たちは苦戦。だが、彼は切り札を用意していた。それは、FBI(アメリカ連邦捜査局)がプラザに対し何かを察知して動いているとの情報だ。鷲津は部下たちにその裏を取るよう命じる。

このころ、あけぼの社内では、プラザの狙うレーダー開発部門の社員たちが集まり、新見を問いただしていた。そこで、会長を信じているという社員らの言葉に心を動かされた新見は、その座を退き、いったんは解任した諸星(筒井道隆)を社長に復帰すると表明する。

鷲津はさらなる手を打つべく、日本ルネッサンス機構の飯島(小林薫)と会った。同機構には、あけぼののレーダー部門の売却先として打診していたが、飯島からは結局断られる。ただし、それは鷲津も織り込み済み。このときの本題は、首相の望月(角野卓造)に会わせてほしいというものだった。

訝しみながらも飯島は、鷲津を望月に会わせる。そこで鷲津は、日本政府からプラザに牽制をかけてほしいと切り出した。しかし、望月はなかなか承知しない。それが、鷲津から事前に入手していたヤミ献金リストをちらつかされるや、一転して要望を受け入れる。三葉銀行時代、銀行のためなら汚れ仕事もいとわなかった飯島があきれるほど、やり方がいちいちエグい。

こうして政府を動かしたとはいえ、まだまだ油断はできない。鷲津たちは、あけぼの株を、一株につきプラザの示した額より1円上乗せして買い集める。それでもプラザがさらに額をつり上げれば敗北は必至だ。

鷲津はここで滝本のもとに乗り込み、ファインが取得したあけぼの株を買い取らせてほしいと申し出る。何を言い出すのかと不快感をあらわにする滝本に、鷲津はテレビをつけるよう告げた。すると、ちょうどFBIがプラザの捜査に乗り出したとの速報が伝えられているところだった。

勝利を収めた鷲津は、滝本に「あなたは貪欲で優秀な経営者だ。その姿勢を貫けば、100年後もファインは生きている。そのころにはファインも老舗と呼ばれる企業となっているでしょう」となぐさめとも励ましともつかない言葉を残し、いつものごとく「では!」と立ち去るのであった。

いい会社とは「カリスマ経営者に頼らない会社」


第2部は、高嶋政伸の怪演もあって、ますます劇画チックな展開となった。演出過剰なきらいも感じるが、鷲津役の綾野剛が眉間にしわを寄せ、低い声で話すのを見ていると、思わず真似したくなってしまうのは、私がドラマにハマっている証拠だ。

第6話では、あけぼの買収の先行きに不安を覚えた鷲津が日光に赴き、日光みやびホテルの社長・松平貴子(沢尻エリカ)とかつて一緒にイヌワシを見た場所で再会する場面があった。前回、みやびホテルが危機に陥ると、鷲津は貴子に協力を申し出ていたが、このとき彼女はそれをきっぱりと断り、自分の手でどうにかすると伝える。草原のなかで、距離を置いて屹然と立ち尽くす二人の姿は、互いに信じ合いながらも自立する人間関係をうかがわせ、まぶしかった。このあと貴子は、外資系のクラウンホテルの傘下に入ることを決断する。

ラストでは、今回の一件であけぼのの再生担当執行役員として奔走した芝野(渡部篤郎)が、「本当にいい会社っていうのは、経営者や上層部にだけ都合のいい会社じゃないってことさ。そして強いカリスマ性のある経営者の存在に頼らない会社だ」と、娘のあずさ(是永瞳)に語るシーンがあった。そのセリフに呼応するように、みやびホテルでは、親会社となったクラウンホテルの担当者(堀部圭亮)に対し、貴子以下、社員一同がそろって、自分たちの手でホテルをよりよくすると決意を表していたのが印象的だった。

ドラマ「ハゲタカ」と現実のできごととの関係は?


今回はまた、鷲津がついに総理大臣まで引っ張り出し、国を巻き込んでの壮大な展開となった。そこで気になったのが、現実のできごとや実在の人物・団体との関係である。

もちろんドラマも原作小説も完全なフィクションだが、原作では、発表当時の首相である小泉純一郎など、実在の政治家をモデルにしたと思しき人物が何人か出てくる。作中のできごとも、当時社会をにぎわせた、IT企業による放送局の株式取得攻防など、リアルタイムの事件を反映していることは間違いない。

これに対し、ドラマ版では、そうした現実と対応する設定や描写はほとんどない。そもそも原作小説『ハゲタカ』と『ハゲタカII』が描くのは、1997年から2006年までの9年間。それがドラマでは2018年までと、スパンが2倍以上も引き延ばされている。そうなると原作で現実と対応した部分を反映するには、どうしても無理が出てくる。それもあって、極力、現実を想起させる描写を避けたのではないか(もちろん、現実の人物や団体をモデルにすると何かと問題が生じがち、というのが一番の理由なのだろうが)。

なお、第2部の時代設定は2010年と、現実には民主党政権の時期が舞台となったが、ドラマに出てきた望月首相は、実際にこのころ首相を務めた鳩山由紀夫にも菅直人にもまるで似ていなかった。むしろ、望月の所属する与党が三葉銀行に古くから隠し口座を持っていたというあたり、自民党の政治家寄りの印象を受けた。

今回のドラマは、あくまで現実とも、原作とも違う日本を舞台にしている。それでいて、ドラマ全体に漂う空気感にはリアリティがある。それは結局、現実の日本が、原作の刊行から10年が経ったいまも停滞を続けているということの証しなのだろう。

ドラマは今夜放送の第7話より、いよいよ2018年に舞台を移して最終章に突入する。鷲津は、芝野は、貴子は、一体どんな運命をたどるのだろうか。
(近藤正高)

「ハゲタカ」
原作:真山仁『ハゲタカ』、『ハゲタカII』(講談社文庫)
脚本:古家和尚
監督:和泉聖治ほか
音楽:富貴晴美
主題歌:Mr.Children「SINGLES」
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中川慎子(テレビ朝日) 下山潤(ジャンゴフィルム)
※各話、放送後にテレ朝動画にて期間限定で無料配信中
※auビデオパスでは第1話〜最新話まで見放題